決算で見えた米国株の底堅さ
AIは「投資」から「収益化」へ
前回の取材から約1カ月が経ちました。現在の米国市場をどのように見ていますか。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
ヴァイス・プレジデント セクター・スペシャリスト
山口 美帆氏2025年入社。機関投資家及びリテール向け営業活動を支援するセクター・スペシャリストチームの主要メンバーとして、投資、マーケティング、プロダクト、ガバナンス各チームと連携しながら、セクター戦略の国内におけるプレゼンス及びポジショニングの強化に取り組む。
この1カ月は決算シーズンと重なり、企業の決算内容が相場にかなり反映された期間でした。ただ、私たちのセクターに対する見通し自体に大きな変化はありません。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
ヴァイス・プレジデント セクター・スペシャリスト
山口 美帆氏2025年入社。機関投資家及びリテール向け営業活動を支援するセクター・スペシャリストチームの主要メンバーとして、投資、マーケティング、プロダクト、ガバナンス各チームと連携しながら、セクター戦略の国内におけるプレゼンス及びポジショニングの強化に取り組む。
市場全体を見ても、企業業績はおおむね底堅さを維持しています。米国株が過去最高値に迫る水準にある中で、EPS(1株当たり純利益)は株価を上回るペースで拡大しました。単にバリュエーションが拡大して株価が上がっているだけではなく、利益成長が株価を支える構図が確認できたと思います。
前回はAI関連投資の広がりについて伺いました。AIを見る投資家の視点に変化はありますか。
「情報技術」セクターの決算は今回も非常に強い内容でしたが、AIに対する投資家の視点は変わり始めています。これまでは「AIにどれだけ投資するのか」という点に注目が集まっていましたが、現在は「AIによってどれだけ収益を生み出せるのか」に重点が移りつつあります。今後は、AIへの投資を実際の売上や利益、キャッシュフローにつなげられる企業と、そうでない企業との間で、株価の動きにもかなり差が出てくるのではないでしょうか。
今回の決算を見ると、AIへの投資は収益として数字にも反映され始めています。そのため、半導体の「スーパーサイクル」(持続的な好況)に対する強気な見方はまだ続くと予想しています。
その一方で、AI関連にはすでにかなりの資金が流入しています。何らかのきっかけで急速に資金が引き揚げられれば、大きな調整につながるリスクも考えておかなければなりません。そのため、AI関連だけに集中するのではなく、異なるセクターにも資金を分散する考え方が重要です。実際、お客様からもディフェンシブセクターなど、市場との相関性が比較的低いところも組み入れたいとの声が増えています。
中間選挙後は市場に追い風か
結果以上に「政策の行方」を見る
11月には米中間選挙があります。現時点でどのような展開を想定していますか。
下院は民主党が優勢で、上院は接戦になるという見方です。そのため、選挙後は上下両院で多数派が異なる「ねじれ議会」になる可能性を想定しています。ただ、現段階で選挙結果を見通すのは難しく、今後の情勢を見ながらアップデートしていく必要があります。
投資家が注目しているのは、選挙結果を受けての政策です。中小企業政策や税制、規制などについて、民主党が勢力を伸ばした場合にどのような政策を打ち出してくるのか。市場はその動きを敏感に見ていくことになるでしょう。
民主党が上下両院で多数派を獲得する確率は上昇傾向にある一方、直近ではねじれ議会となる可能性も再び高まっている
中間選挙は株式市場にとってプラスになるのでしょうか。
過去の傾向を見ると、中間選挙後は選挙を巡る不確実性が後退するため、株式市場にとってプラスに働いてきました。第4四半期に加え、翌年の第1、第2四半期も、株価はおおむね良好なパフォーマンスを示す傾向があります。選挙という大きな不確定要因が一つ解消されることで、投資家が市場に戻ってくる。歴史的には、そうした動きが中間選挙後に見られます。
実際、市場から資金そのものがなくなっているわけではありません。今は不透明感が強いため、投資家がどこへ資金を振り向ければよいのか判断しにくい状況です。中間選挙を通過することは、その状況を変えるきっかけになる可能性があります。
ただし、今回は過去の中間選挙とは異なる部分もあります。近年は関税や対中政策、AI規制、外交など、議会だけで方向性が決まらず、政権の判断によって動くテーマも多いためです。2027年にかけては予算交渉や債務上限問題が再び注目される可能性もありますので、結果そのものより、選挙後に政府がどの方向へ動くのかを見極めることが重要だと考えています。
中間選挙をセクター投資という視点から見ると、どこに注目すべきですか。
中間選挙では、民主党、共和党のどちらも取り上げる政策テーマにはある程度共通する傾向があります。その中で私たちが注目しているのが、金融、ヘルスケア、情報技術、公益事業の4セクターです。
最近、特に注目しているのが「金融」セクターです。今回の決算では、主要銀行の投資銀行業務が堅調だった他、株式トレーディングや資本市場も活発化しました。M&AやIPO案件の増加も追い風となっており、金融を取り巻く環境は改善しています。インフレ指標が落ち着いてくる局面では、イールドカーブ(利回り曲線)の改善や貸し出し環境の正常化もプラスに働くと考えています。
「ヘルスケア」セクターはメディケイドをはじめとする医療制度や薬価などが選挙のたびに議論されやすく、政治との関係が非常に深いセクターです。もう一つの理由はバリュエーションです。現在の水準はかなり低く、相対的に見ても魅力があります。
さらに、この分野には特有のサイクルがあります。ここ3年ほどはS&P500を下回るパフォーマンスが続いてきましたが、過去にもイノベーションを背景にポジティブなトレンドへ転じた局面がありました。今回も、イノベーションというテーマが再び注目されており、6月、7月にはS&P500を上回る動きも見られています。
AIも重要です。AI向けデータセンターへの投資が進めば、「情報技術」セクターだけでなく、建設や電力設備などにも恩恵が広がります。防衛関連も含め、複数の政策テーマの影響を受けるセクターには注目してよいと思います。
「公益事業」セクターは少し複雑です。AI向けの電力需要拡大は長期的な追い風ですが、短期的には電力料金に注意が必要です。インフレが続く中で料金の引き上げが政治的なテーマになれば、公益事業にはネガティブに働く可能性があります。
ですから、選挙結果だけを見て投資先を判断するのではなく、その後の政策が各セクターにどう影響するのか、さらに企業業績がどう推移するのか。この2つを組み合わせて見ることが大切です。
選挙だから「入れ替える」必要はない
成長・金利・景気から投資先を考える
地政学情勢や関税、自然災害など、選挙以外にも突発的なリスクがあります。どのように備えればよいか、教えてください。
「情報技術」セクターのように上昇が続いて過熱感のあるセクターは、何らかのリスクが生じた際に調整が入りやすい傾向があります。ただ、現在は情報技術だけが市場をけん引している状況ではなくなりつつあります。
実際、ここ数週間から1カ月ほどを見ると、これまであまり保有されていなかった「ヘルスケア」や「公益事業」に加え、「素材」や「資本財」にも資金が向かい始めています。行き過ぎ感のあるセクターから、その他のセクターへ資金を分散する動きが少しずつ出てきているのです。
選挙に向けて企業や市場が政策テーマをどこまで織り込んでいるのかを見ることも大事です。必ずしも選挙前に動く必要はなく、中間選挙の結果や政策の方向性がある程度明確になってから、その後の市場の動きを見るという考え方もあります。
日本の個人投資家は、中間選挙をどのように自身の投資へ生かせばよいでしょうか。
まずお伝えしたいのは、今回の中間選挙を理由にポートフォリオを大きく変える必要はないということです。
コアとしてインデックスを保有しているのであれば、そこはそのまま持ち続け、セクターETFをサテライトとして活用する考え方でよいと思います。中間選挙に備えて何もかも入れ替えるのではなく、自分が注目しているテーマや投資したいセクターをいくつか選び、その動きを追いながら選挙を見ていくことが大切です。
例えば成長というテーマなら、「ヘルスケア」や「資本財」セクターに注目できます。一方、今後は金利も改めて重要になります。金利が上昇すれば「不動産」や「公益事業」セクターには逆風になりますが、「金融」セクターはイールドカーブがスティープ化(急カーブ化)すればプラスに働く可能性があります。景気の底堅さという観点でも、金融は引き続き注目しておきたいセクターです。
このように、「成長」「金利」「景気」といった自分なりのキーワードをいくつか決め、それぞれがどのセクターに影響するのかを考えながら投資先を選んでいくと、中間選挙のニュースも自分の投資と結び付けて見やすくなると思います。
今後の米国市場を見ていく上で、日経ビジネス読者に伝えたいメッセージをお願いします。
単に「米国株が上がるのか、下がるのか」という見方だけではなく、市場の中でどのような利益成長のテーマが広がっているのかを見ることが、これまで以上に鍵を握ります。セクターETFは、そうした自分なりの市場の見方を、より具体的にポートフォリオへ反映するためのツールとして活用できます。
自分が興味を持っている分野や、仕事を通じてよく知っている業界など、身近なところからセクター投資を考えてみるのが一番入りやすいのではないでしょうか。
* グローバルの運用資産残高には、約2兆2,039.8億ドルのETFの運用資産残高が 含まれ、このうち約1,568.1億ドル(2026年6月30日時点)はステート・ストリー ト・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ,LLC(SSGA FD)が営業を行なっているSPDR商品に係る金資産の残高です。SSGA FDはステー ト・ストリート・インベストメント・マネジメントの関連会社です。運用資産額 は監査前の数値です。
当広告は情報提供のみを目的として作成したものであり、金融商品取引法およびその他日本の法律に基づく開示資料ではありません。お申込みに当たっては、必ず上場有価証券等書面や交付目論見書またはその他の開示資料の内容をご確認の上、ご自身でご判断ください。購入のお申込みや売買手数料等につきましては、当該ETFを取扱いの金融商品取引業者(証券会社等)までお問い合わせ下さい。
ETFに係るリスク
ETFは、値動きのある有価証券等を主な投資対象としますので、連動対象である株価指数等の変動、組入有価証券等の価格の下落、組入有価証券の発行会社の倒産や財務状況等の悪化、その他の市場要因等の影響等により、市場取引価格または基準価額が値下がりし、それにより損失が生じることがあります。 また組入有価証券は為替相場の影響を受けるものもあるため、為替の変動により基準価額が下落することがあります。したがって、投資家の皆様の投資元金が保証されているものではありません。
※ETFのリスクは上記に限定されません。
ETFに係る費用
市場を通してETFに投資する投資家の皆様には以下の費用をご負担いただきます
・売買手数料(お申込み時にご負担いただきます)
ETFの市場売買には、取扱い第一種金融商品取引業者(証券会社)が独自に定める売買委託手数料がかかり、約定金額とは別にご負担いただきます。(取扱会社毎に手数料率が異なりますので、その上限額を表示することができません。)
・保有時の費用
ETFの保有期間中は運用管理費用等を間接的にご負担いただきます。保有時の費用の率(総経費率)は個別のETF毎によって異なり、また運用状況や保有期間等に応じて異なることからその上限額を示すことはできません。
個別のETFの情報についてはウェブサイトの各ファンドページにてご確認いただけます。
ご注意事項
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社は、ETFについて、直接、投資家の皆様のお申込みを承っておりません。
ETFの投資にあたっては、取扱い第一種金融商品取引業者(証券会社)に口座を開設になり、お申込みください。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号
加入協会:一般社団法人資産運用業協会、日本証券業協会