当社は社員250名が複数拠点で働いており、コロナ禍を機にハイブリッドワークとフリーアドレスが定着。この働き方に合わせた災害時の初動対応体制を構築しました。
社内体制の構築にあたってはまず管理部門の2名が防災士の資格を取得し、専門的な知識を持ってBCPの見直しに取り組みました。防災士研修で得た知見や東京都の事業所防災リーダー関連の情報も、社内周知の材料として継続的に活用しています。その見直しで浮き彫りになったのが「発災直後に誰がどこにいるか分からない」という課題。これには、コロナ禍以降の働き方の変化に合わせて採用した独自の座席管理システム(座席予約・チェックイン)を活用。座席マップで出社者や在宅勤務者が確認できるため、有事の所在確認もできる仕組みです。
当社の災害対策は、余震や火災、混雑で二次災害リスクが高まるため原則は職場待機です。帰宅の可否は交通・火災・インフラ情報を確認してから判断しています。また、安否確認と共に被災後の出社可否確認も行っており、社員250名、常駐パートナー約100名、計約350名を対象に最寄り拠点への移動可否や所要時間まで確認できる仕組みになっています。自社だけでなくパートナー企業も含めた確認のため、個人情報に配慮したルールを作成しました。
職場待機のための備蓄は3日分を基本に、水・食料・簡易トイレは出社想定数だけでなく、来訪者も想定して1割増しで準備。初日の混乱を想定し、1日分のセットをすぐに配布できる運用にしています。断水前に簡易トイレへ切り替える判断なども災害時避難ガイドブックに落とし込みました。また、折り畳み式ヘルメットは見直しを機にデスク下に常設へと変更し、防災訓練で「机の下に一時避難して装着」までを徹底したことで着用率が劇的に向上しています。
防災訓練にあたっては被災シナリオとタイムラインを作成し、被災0〜15分、1時間、3時間で誰が判断し、何を共有するかといった細かい初動対応をマニュアルで周知。さらにマニュアルを短い動画にまとめて社内ポータルに掲載し、新入・中途入社社員の導入教育にも使用。入社後すぐに情報を共有できるようにするなど、組織全体の防災意識向上のための取り組みを継続して行っています。
八丈島で宿泊業を営む当ホテルが、防災対策を本格的に見直すきっかけとなったのは、2019年の台風被害でした。停電や断水、物流の停止が同時に起こり、復旧まで期間を要したことから、災害発生後に外部支援を待つ前提ではなく、宿泊客やスタッフ、地域の安全を守るために、防災体制を切り替える判断をしました。
具体的には、東京都や財団の補助事業を活用し、高齢者や要配慮者の避難生活を想定したバリアフリー化を推進。同時に、災害による停電や断水に備え、電力発電や蓄電池、井戸水を温水化する太陽熱システムを整備。平時のホテル運営に組み込むことで、災害時にも無理なく機能する体制としました。現在は八丈町と災害時協定を結び、二次避難所としての役割も担っています。
大型台風の際には、当ホテルは早期離島勧告や新規予約の制限を行い、宿泊客の滞在をゼロにすることを優先。一方で、移動困難な宿泊客や島内の要避難者の受け皿となる体制を整えています。
安否確認や情報共有については、日常業務で使用しているツールをそのまま活用。業務連絡アプリのアンケート機能を用い、本人や家族の安否、出社可否などを即時に把握できる仕組みとしました。昨年、台風による停電が発生した際には、ドローンで撮影した建物や周辺道路の状況をスタッフ間で共有し、移動や復旧作業の判断に役立てました。
備蓄は5日分を目安に、水・食料・簡易トイレを分散保管しています。電力については、太陽光発電と蓄電池に加え、電気自動車を非常用電源として活用できる仕組み(V2B)を導入しました。平時はカーシェアとして運用し、有事には「動く蓄電池」となります。年1回は商用電源を遮断した訓練を行い、切り替え手順や給電の優先順位を確認しています。
今後の課題は通信手段の確保です。基地局が停電で停止した経験を踏まえ、衛星通信の導入も検討しています。