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第2回ニューロインクルージョン委員会報告

「当たり前の再設計」をニューロダイバーシティ推進で

第2回ニューロインクルージョン委員会報告 「当たり前の再設計」をニューロダイバーシティ推進で

ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラムのパートナー企業と外部有識者からなるニューロインクルージョン委員会は、9月12日に第2回目の委員会を開催した。今回は、石戸奈々子氏から「ニューロダイバーシティプロジェクト」についての説明が行われた。

 ニューロインクルージョン委員会は、ニューロダイバーシティ(神経多様性)を互いに尊重し、この違いに由来する強みを活かし合える職場づくりに貢献する指標の検討を目的として組成された。2025年9月18日に開催された第2回委員会は、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授でニューロダイバーシティプロジェクトを主導する石戸奈々子氏より、同プロジェクトの概要が説明された。

 石戸氏は、自身を「活動家」と表現し、これまでに手掛けたエドテック分野での社会運動の内容をまず自己紹介として説明。

 石戸氏は、テクノロジーの力で教育の在り方を思考・創造型なものに変革することを目指した取り組みを2002年から開始。公教育以外の活動として各地でワークショップを開催し、8年間で約50万人の小中学生を巻き込んだ。その後、学校教育のデジタル化に向け、様々なステークホルダーを巻き込み、プログラミング教育必修化やデジタル教科書等に関する法制度の整備、1人1台の情報末端で学ぶ環境の整備の実現に尽力した活動の内容を説明した。

「ニューロダイバーシティとは当たり前を疑うこと」

 このような活動のバックグラウンドを持つ石戸氏だが、増え続ける不登校、子どものウェルビーイングの低下、メンタルヘルスの課題を抱える子どもの急増を受け、子どもたちが抱える生きづらさの背景には、ニューロダイバーシティ(神経多様性)への理解が足りないことがあり、この理解を広めることが必須であると考えるに至ったという。同時に、それは子どもだけではなく大人にも共通するものであるともいう。そこで、2023年に「ニューロダイバーシティプロジェクト」を開始。これまでの経験を基に主にテクノロジー系の研究者を集め、個人と環境へのアプローチを介して超多様社会の実現を目指すプロジェクトとした。

 石戸氏は、ニューロダイバーシティの説明が難しいため、大きく4つのペルソナに分けて説明することが多いとし、それを(1)超天才タイプ、(2)発達の凸凹があり就労・就学困難、(3)重度な障害、(4)ニューロマジョリティ(神経学的多数派)と説明した。

 (1)超天才タイプに関しては、出る杭を打つ日本の社会で能力がつぶされることが多いため、その能力いかに活かすかが課題と指摘。(2)発達の凸凹があり就労・就学困難なケースに関しては、能力を有する特定の分野で力を発揮してもらう環境整備が課題であるとし、シリコンバレーでニューロダイバーシティが注目された背景にも、このような人材の活躍推進という狙いがあっただろうと指摘した。(3)重度な障害に対しては福祉支援のより一層の充実が必要だが、(1)と(2)に当てはまる人材が活躍できる社会の実現により(3)に対する福祉を充実できるという見方を示した。なお、ニューロダイバーシティプロジェクトでは、これら全てを対象と考えているとも説明した。そして、多様な特性の方々にとって快適な個別最適化された環境を整備することが、(4)のニューロマジョリティの方々にとっても、より生きやすい、ウェルビーイングな社会の実現につながるとの考えを示した。

 「選択肢が多ければ困りごとを抱える人は減る。ニューロダイバーシティとは『当たり前を疑う』ことであり『当たり前の再設計』」とも強調した。ニューロダイバーシティプロジェクトでは、「理解促進」「技術開発」「環境整備」の3つの柱をかかげている。

 理解促進では、一人ひとり異なる見方や感じ方をすることへの理解を促し、その違いをイノベーションの源泉とすることを目指す。

 技術開発では、個を拡張し一人ひとりの力の発揮を促す新たな技術の開発を目指す。例えば、視力検査のような「触力検査」があれば、感覚過敏への周囲の理解が深まり、過敏度に合わせた合理的配慮を提供しやすくなるため、そのための技術開発も進めているという。また、環境整備として環境や社会的制度、ルール・慣習の再設計も進める必要があるとし、研修事業も展開し始めているという。

 この3つの柱の下、ニューロダイバーシティプロジェクトでは、「みんなの脳世界」展と題した体験型展示を2023年から開催している。3回目となる今年は展示数が70以上になる予想だという(関連サイト)。

 さらに、2024年から「ニューロダイバーシティアワード」を開催し、顕著な功績を挙げている研究、テクノロジー、プロダクト、ソーシャルアクションなどにアワードを授与していることも説明した。昨年の第1回ニューロダイバーシティアワードでは、世界7カ国から177の応募があり、国内外計12の応募者が受賞した。

 石戸氏の発表の後、委員から以下のような質問や感想が述べられ、踏み込んだ議論が展開された。

木島氏:デジタル教育という新たな道を切り開くことができたのは、「当たり前を疑う」というニューロダイバーシティ推進とも共通するパラダイムシフトを生じさせたためと受け止めた。とはいえ、社会を動かす立場の方々は当たり前を疑うことが少なく、反対の立場を取りやすいのではないか。反対派の理解を得た要因としては何が大きかったか?

石戸氏:多くの反対意見がある中で、様々なアプローチを試みてきた。プログラミング教育の必修化は、産業界におけるIT人材不足という課題を背景に経済界の後押しがあったことも大きい。しかし、社会全体に根強い「変化への抵抗感」があったのも事実。実際に大きな転換点となったのは、コロナ禍による社会的インパクトだった。

大野氏:いろいろ聞きたいことはあるが、石戸先生が最後までやり通せた要因を教えてほしい。

石戸氏:新しい社会を多くの方々とともにつくっていくことは楽しい。私自身は楽しんで取り組んでいる。いまのニューロダイバーシティプロジェクトでは、キュレーションのような役割を果たしている。先端技術や研究のニューロダイバーシティ文脈における社会実装方法を考えているため、様々な新しい知見に日々出会えて刺激的。「楽しそうだから、ワクワクするから参加する」という協力者も多いように思う。

大野氏:「ワクワクする」というのは大事なキーワードだと思う。ニューロダイバーシティを社会に広げるためには、このワクワクを大切にする仕組みが大切と感じた。例えば、インセンティブを付ける、好事例に光を当てるなどが考えられそうだ。

石塚氏:弊社は米国の大学資金を運用しており、日本社会をどうすればよくできるかをいつも考えている。第1回目の話にも通じるが、キュレーションは大事と感じた。

高山氏:刺激的な話で感動した。私はADHD当事者として当事者支援をしているが、能力が高いにもかかわらず環境に恵まれずメンタルヘルス不調となる人がとても多い。これは日本社会にとって大きな損失だ。無理なく力を発揮してもらい、社会貢献できる、そんな仕組みが必要だろう。

 最後に、次回以降の議題について議論された。第3回委員会は、ニューロダイバーシティ推進を掲げる経済産業省にヒアリングを依頼することになった。

【ニューロインクルージョン委員会委員】
Kaien法人ソリューション事業部 ゼネラルマネージャー/シニアディレクター 大野順平氏
PwCコンサルティングシニアマネージャー 吉田 亜希子氏
野村総合研究所ヘルスケア・サービス産業コンサルティング部シニアコンサルタント 木島百合香氏
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 石戸奈々子氏
一般社団法人ニューロダイバーシティ協会代表 市田悠貴氏(欠席)
いちごアセットマネジメント副社長 石塚愛氏
NPO法人えじそんくらぶ代表 高山恵子氏
<事務局>
日経BP

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