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第3回ニューロインクルージョン委員会報告、経産省ヒアリング

「どうやったら選ばれる会社になるか」の重要性が高まっている

第3回ニューロインクルージョン委員会報告、経産省ヒアリング 「どうやったら選ばれる会社になるか」の重要性が高まっている

ニューロダイバーシティ&インクルージョンフォーラムのパートナー企業と外部有識者からなるニューロインクルージョン委員会は、11月11日に第3回目の委員会を開催した。今回は、経済産業政策局経済社会政策室室長補佐の遠藤佐知子氏から、国が推進するダイバーシティ経営についての説明が行われた。

 ニューロインクルージョン委員会は、ニューロダイバーシティ(神経多様性)を互いに尊重し、この違いに由来する強みを活かし合える職場づくりに貢献する指標の検討を目的として組成された。2025年11月11日に開催された第3回委員会は、経済産業政策局経済社会政策室 室長補佐の遠藤佐知子氏より、国によるダイバーシティ経営の推進施策が説明された。

 まず遠藤氏は、国がダイバーシティ経営を推進する背景として、企業の経営者を対象にした調査結果を呈示(図1)。経営者は最重要課題を「人材の強化」ととらえており、その理由としては国際競争力の強化から人材定着などまで幅はあるものの、自律的なキャリア形成を進める人材が増える中、「どうやったら選ばれる会社になるか」の重要性が増し、人材マネジメントの難易度が上がっているとした。

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図1 経営者が考える経営課題

 そのような中で、多様な人材を受け入れることは、従業員の満足度を上げ、職場環境も改善しやすく、生産性向上やイノベーションにもつながり、さらには外部の評価も得やすくなるという直接的・間接的な効果があるとした。逆に、同質性の高さによるリスクが昨今顕在化していることから、ダイバーシティ経営はリスクマネジメントの効果もあるとの考えを示した。ただし、多様性を高めればよいというわけではなく、自分らしさを発揮しつつ、職場への帰属意識の高い状態(包摂:インクルージョン)が重要である点も指摘した。

 また、ダイバーシティ経営を進めることが生産性を高め、イノベーションにつながることを示す国内外のエビデンスがあることから、経済産業省としてダイバーシティ経営を推進するため、なでしこ銘柄や女性起業家支援ネットワークの構築、女性リーダー育成研修などの女性活躍推進だけでなく、ニューロダイバーシティを産業界が取り入れる意義や方法論を示したレポート(経産省の関連サイト)の公開、外国人材の活躍に向けた取り組みなどを行ってきていると説明した。

ニューロダイバーシティに取り組むための5つのステップ

 経産省は、ニューロダイバーシティに取り組むための方法論として、(1)取組開始の社内合意、(2)体制・計画づくり、(3)採用、(4)受入れ、(5)定着・キャリア開発の5つのステップを整理していることを紹介。また、2025年4月には、8社へのヒアリングを実施した事例集も公開しており、これら8社では、人材獲得から組織風土の醸成まで幅広い成果を実感していると紹介した(図2)。

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図2 国内企業の実践事例集

 遠藤氏の発表の後、委員から以下のような質問や感想が述べられ、踏み込んだ議論が展開された。

大野氏:オムロンの事例を紹介されているが、オムロンは今、周囲の企業も巻き込んで、「ニューロダイバーシティ京都地域連携プロジェクト」を展開している。このように周囲への影響は大きく、経産省の取り組みがどう広がっているのか、現状を教えてほしい。

遠藤氏:企業の方とお話する中で、ニューロダイバーシティに興味を持っている企業が多いと感じています。また、実際に取り組んでいる企業の生の声を聞きたいという要望も受けているので、事例に加えて生の声を届けていくことも重要と考え、現在、進めているところだ。

大野氏:ニューロダイバーシティと言った際、前回の委員会で石戸先生が4つの代表的なペルソナを示してくれたが([1]超天才タイプ、[2]発達の凸凹があり就労就学で困難、[3]重度な障害、[4]ニューロマジョリティ:神経学的多数派)、企業がニューロダイバーシティと聞いて想像しやすいのは、「(1)超天才タイプ」ではないか。そのような方は相対的に非常に少ないので、期待外れになりやすいと感じている。一方、「(2)発達の凸凹があり就労就学で困難」な方はたくさんいて、そのような人をダイバーシティとして包摂することによるメリットを理解してもらうことが重要ではないかと感じている。

遠藤氏:事例集に上げた企業側が、4つのペルソナのうちどのペルソナにフォーカスしているかは異なるように感じている。我々もその点、きちんと認識して施策を打っていく必要がありそうだ。

石戸氏:今日のお話で、経産省は事例収集や調査報告、啓発イベントなどを多くやられている印象を受けた。今後、ダイバーシティ経営をどういう方向性に持っていこうとしているのか、どのような施策を考えているのか、もう少し教えてもらいたい。

遠藤氏:「人材の強化」に課題意識を持っている経営者が多いので、人材への投資をいかに促していくか、ニューロダイバーシティも含めてダイバーシティ経営を人的資本経営に組み込んで広げていくということだと思っている。

石戸氏:ダイバーシティ経営と障害者雇用は制度的なジレンマを抱えていると感じている。その点を経産省はどう捉えているのか。また、障害者雇用を推進する厚労省との連携はどう進めるのか、この2点も教えていただきたい。

遠藤氏:障害者雇用は法律遵守の観点があるが、障害者手帳の有無にかかわらずニューロダイバージェント(神経学的少数派)が働きやすく能力を発揮できる職場環境を作っていくことによる効果はあり、障害者雇用もダイバーシティ経営の一環であるという位置づけで考えている。ただ、企業が法律対応と考えてやってしまうとダイバーシティ経営からは離れてしまうので、そこを近づけていく努力が必要と考えている。また、厚労省との連携に関しては、障害者施策については様々な法律の執行において関係省庁と連携して進められているところではあるが、障害者施策を企業の競争力強化にどうつなげるかという観点については、経産省で担当している。

市田氏:ニューロダイバーシティには様々なステークホルダーが関わると思うが、経産省が意思決定する際、どのようなステークホルダーが関与しているのか。

木島氏:経産省の2021年、2022年の事業を弊社が受託したもので、私から答えたい。文献調査をして仮説を立て、その仮説を検証するためにヒアリングをしていくのが一般的だが、ニューロダイバーシティ推進の主体として当時想定したのは企業であったため、情報の収集元は企業が多かった。また、就労移行支援所からも情報を得ていた。

事務局:国際的にも、「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)」というキャッチコピーの下、当事者の声を大切にするのが基本になっている。日本だと支援者が代弁しがちだが、やはり、どう支援されたいか、どう働きたいかという当事者の声を大事にしてほしいという意味合いの質問と受け止めたい。

木島氏:先ほどのペルソナでいう超天才タイプ以外だけでなく、他のタイプの包摂を進めることで企業の生産性やイノベーションが高まると言われているにもかかわらず、企業の関心が低いままという印象を持っている。経産省として今後取り組みたい、もしくは取り組みたいけれどもできないと思っていることなどはあるか。

遠藤氏:例えば、女性の管理職比率を有価証券報告書の開示項目に加えるなど、施策としてもダイバーシティ経営が進むように様々な手が打たれている。ただ、開示項目に入ったからやる、というのではなく、経営判断としてダイバーシティ経営を進める、という形にならないと本当の意味では進まないのではないかとも感じている。

石塚氏:有価証券報告書の開示の話が出たのでお伺いしたい。現在、障害者雇用率は開示義務がないが、私は少なくともこれは開示すべきだと思っている。また、現在、コーポレートガバナンスコードの改定作業が進められており、スリム化の方向にあるとは聞いているが、多様性の定義をもう少し広げて開示してもらう方向にならないかと思うが、どうか。

遠藤氏:企業側が開示で疲弊しているということでスリム化の方向性が出ていると承知している。

石塚氏:経営層が優先するのは、どうしても短期的な視点の話になりやすく、そうなるとダイバーシティを高めるということの優先順位が落ちてしまうと感じている。経営者が2世代くらい変われば、会社も変わってくるかもしれないが、それを待つのではなく、もっと加速させていけないかと思っている。そのために、経産省が業界団体を介して動かしていくというのもあるのではないか。

遠藤氏:例えば、経済産業省関連の入札の際に、くるみん・えるぼしの認定がプラスで評価されるように、取り組んでいる企業がプラスで評価され、取り組んでいない企業は相対的に評価が低くなるといった仕組みをいろいろなところに作っていくというのは実効的な取り組みであるかと思う。

吉田氏:ニューロダイバーシティに限らず、ウェルビーイングなど様々なテーマで、総論賛成各論反対でなかなか進まない理由として、理想論だけで具体的効果を実感できず、投資意義が見出せないという声をよく聞く。なぜ、ニューロダイバーシティを含めDEIが必要なのかを、各社が納得感を持てるロジックで語ることが肝だと思っている。それを経営者の目線、組織長の目線、社員の目線にブレイクダウンして、具体的にどんな場面でどんないいことがあるかを言語化して地道にコミュニケーションする、日常的な実感として沸かせるようにボトムでのインクルーシブ行動を促す仕掛けをセットでやる、などがポイントかと思う。究極的には、ニューロダイバーシティや女性活躍は整理のための枕詞にすぎず、本質的には個人個人が安心して働きやすくなることで、誰が得する・損するという二項対立の世界ではなくなることが目指す状態だと思う。ニューロダイバーシティ推進の方法論については、少し実務的なサポートの観点に絞られている印象があり、攻めの観点や、当事者の周辺にいる管理職や同僚へのケア、当事者以外の職場の風土や全社員の理解などの取り組みにも広げて全体像が表現されているとなおよいかと思う。

 最後に、次回以降の議題について議論された。第4回委員会は、機関投資家を招き、投資家の視点でニューロダイバーシティ推進をどう見ているかをヒアリングすることとなった。

【ニューロインクルージョン委員会委員】
Kaien法人ソリューション事業部ゼネラルマネージャー/シニアディレクター 大野順平氏
PwCコンサルティングシニアマネージャー 吉田 亜希子氏
野村総合研究所ヘルスケア・サービス産業コンサルティング部シニアコンサルタント 木島百合香氏
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 石戸奈々子氏
一般社団法人ニューロダイバーシティ協会代表 市田悠貴氏
いちごアセットマネジメント副社長 石塚愛氏
NPO法人えじそんくらぶ代表 高山恵子氏(欠席)
<事務局>
日経BP

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