
アクティブな音場制御やノイズ抑制を通じて “キャビン・エクスペリエンス”を高めるために、アナログ・デバイセズはさまざまなソリューションを提供中だ。
オーディオ信号処理を得意とする「SHARC®オーディオ・プロセッサ」、アプリケーション開発を効率化するソフトウエア・ライブラリやエコシステム、オーディオ信号を軽量かつ低コストな非シールド・ツイストペア・ケーブルで伝送する車載用オーディオ・バス「A²B™(Automotive Audio Bus)」が主なソリューションである。また、マイクでは拾えない車体の振動を検知するMEMS加速度センサーもラインアップする。
最初のSHARCオーディオ・プロセッサはいわゆるDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)であり、カー・オーディオの音場設計や音質補正などの用途で、数多くのクルマに搭載されてきた実績を誇る。
現在の主力製品が第6世代品だ。製造プロセスの微細化(28nm)により、消費電力を抑えながら性能を高めている。また、第5世代のSHARCオーディオ・プロセッサとArm Cortex-A5プロセッサ・コアとを統合した「SHARC+®」ファミリもラインアップしている。
いずれの製品も高度なオーディオ信号処理に求められるデジタル・フィルタ(FIR/IIR)や高速フーリエ変換(FFT)アクセラレータを内蔵しているほか、データと命令を分離したアーキテクチャを採用し、高いスループットと低遅延(確定遅延)を実現している。
ノイズ・キャンセリング、3Dサラウンドやパーソナル・オーディオ・ゾーン、音声インターフェースやインカー・コミュニケーションの他、エンジン車においてはスポーティさを高めるエンジン音増強などのアプリケーションでの活用に最適と言えるだろう。
また、マイクを使ったアプリケーションの開発を効率化するソフトウエア・ポートフォリオが「ADI LISTN™」だ。発話の中から暗騒音を除去するアルゴリズムや、マイクとスピーカー間で発生するエコーを除去するアルゴリズム、ノイズ・キャンセリング用アルゴリズムなどが用意される。
「SigmaStudio®」はSHARCオーディオ・プロセッサと後述するA²Bトランシーバを対象にした開発ツールだ。オーディオ処理ブロックを画面上で接続するだけで開発やチューニングが行える。さらに、Eclipseベースの統合開発環境「CrossCore® Embedded Studio」も用意される。
さらにアナログ・デバイセズは、オーディオ信号処理を専門とするサードパーティとのパートナーシップを通じたエコシステムの構築と強化に取り組んでいる。半導体デバイスの供給にとどまらず、ソフトウエア、開発環境、およびエコシステムを通じて、自動車メーカー(OEM)やサプライヤの開発をバックアップする考えだ。
最後に紹介するA²Bは、オーディオ信号(正確にはI²Sシリアル・オーディオ信号)を、軽量かつ低コストで、取り回しも容易な非シールド・ツイストペア・ケーブルを使って伝送するテクノロジーだ。1本のケーブルで、最大2.5Wの電力供給とI²Cの制御コマンドやステータスのやりとりもできる。
「当社の試算では、従来の重くて太いハイエンド・オーディオ用のアナログ・ケーブルに比べて、単位長さ当たりのケーブル・コストと重量を大幅に低減できると考えています」と谷島氏はメリットを説明する。
A²Bは遅延がおよそ50μsと小さく、かつ、確定しているため、位相を厳密に制御する必要があるノイズ・キャンセリングなどのアプリケーションにも最適だ。
2016年の登場以来、すでに1億ノードを超えるA²Bが市販車に搭載されている。
谷島氏は「クルマの電動化や電子化を背景に、車室内に求められる快適性の基準も変化しています。SHARCやA²Bをはじめとするアナログ・デバイセズのソリューションはそうした進化に即したものであり、それらが搭載された新たなクルマの登場を楽しみにしています」と語る。
静粛性や快適性を含むキャビン・エクスペリエンスの向上がクルマの新たな価値として提唱されている。アナログ・デバイセズは、音の制御を通じて、未来のクルマのニーズに応えていく。