顧客への提供価値を最大化する
バリューストリームマッピング
バリューストリームマッピングとは、その名の通り、顧客に価値(バリュー)を提供するために連携する「業務から業務へ」の“流れ”(ストリーム)を、エンドツーエンドでマッピングするものだ。
注文を受けてから製品・サービスを提供するまでの業務プロセスの連続を、“一筋の流れ”として考える。川を思い浮かべれば分かるように、どこかに大きな石や倒木があると、流れがせき止められ、滞ってしまう。
「同じようにバリューストリームも、全体の流れを形成するプロセスのどこかに問題があると、流れが悪くなってしまいます。お客様に製品・サービスを提供するまでのリードタイムが長くなったり、業務間の情報の行き違いによって、ご満足いただけない製品・サービスを提供してしまったりするのです。バリューストリームマッピングとは、そうした円滑な流れを遮るポイントをマッピングによって発見し、修正を加えていく管理手法です」と藤岡氏は説明する。
海外のグローバル企業の多くは、20年近く前からこの手法を取り入れ、顧客に提供する価値を最大化させている。そのため、海外で生まれた管理手法だと思われがちだが、意外にもその原点は、日本企業が生み出したものだという。
「日本の大手自動車メーカーが、“人と物と情報の流れ”を整流化して、無駄をなくすことによって価値を最大化する手法を採用していることは、海外でもよく知られています。じつは、この手法こそがバリューストリームマッピングの原型なのです。例えば日本の自動車メーカーの場合、必要な部品を、必要なタイミングで確保するため、リードタイムを遅らせる原因となるポイントの洗い出しと改善を行ったりしていますが、時間短縮以外にも、あらゆる改善活動に利用できる管理手法です」
バリューストリームマッピングは、サービスの改善によって受益者への提供価値を高めるための手法なので、顧客向けだけでなく、社内の従業員向けサービスにも適用できる。
「例えば、人事関連のサービスが、従業員に満足してもらえる状態で提供されているかどうかを見るためにも利用できます。育休などの申請を行っても、なかなか回答が得られないといった課題が発生したとき、どの業務プロセスがボトルネックになっているのかを特定し、改善を図れるわけです」と藤岡氏は語る。
デジタルソリューションを使えば
管理がもっと容易になる
藤岡氏は米国のグローバル企業で長年ビジネスに携わり、その経験を基に、現在はServiceNow Japanでシニア・アドバイザリー・ソリューションコンサルタントを務めている。バリューストリームマッピングについても、15年ほど前から米国の企業で経験を積んできた。
「流れを形成するすべての業務プロセスをマッピングし、特定し、合意するので、各プロセスの責任者をいかに巻き込めるかが成功のカギを握ります」
バリューストリームマッピングでは、まず、現状のプロセスの流れ(as is)を上空から全体を俯瞰したような大きな流れとして描き出し、それを「あるべき姿」(to be)に描き直していく。その全体像に沿って、改善の効果の最も高そうなプロセスを特定、合意をした上で、個々のプロセスに改善を加えていくのだ。そのため、バリューストリームの分析自体には多くの時間を要さない代わりに、ストリームを形成する各プロセスの責任者全員の参加が重要なのである。
ただし、「コンサルタントは、バリューストリームマッピングを描き出し、各部門が『やるべきこと』を洗い出すところまでは手伝ってくれますが、実行と進捗管理については、企業が自分たちでやらなければならないケースが多いようです。それをしっかりやれるかどうかも、成否に大きく影響します」と藤岡氏は語る。
この手法は市場の変化に取り残されないように継続的に改善を繰り返し、変化を続ける『あるべき姿』に近づけ続けることで真価を発揮するものだが、そのためにはバリューストリーム全体の現状と『あるべき姿』をいつでも俯瞰して見ることができることと、改善の効果を記録し、次の計画が立てられるように管理できることが必要になってくる。
今から15年ほど前、藤岡氏が米国でバリューストリームマッピングに初めて携わったときには、大きな模造紙にペンでマップを描き、そこに各部門の担当者が実行や進捗の状況を書き込むのが一般的であった。
しかし、「このやり方は最初にマッピングをするときには良いかもしれませんが、その後の管理が煩雑な上、今のオフィス環境ではあまり現実的ではありません。効率化を求めてデジタルを活用する動きが進んだのは自然な流れです」と藤岡氏。
顧客により良い価値を提供するためのデジタル化。それはまさにDXである。
最新のデジタル技術を使ってバリューストリームマッピングを実践すれば、多くの日本企業がたどり着いていない「DXの成功」に近づけそうだ。
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