SDVを支えるアナログ・デバイセズのAutomotive Solution Vol.4 ディスプレイECUの小型化を実現 ディスプレイを効率的に接続する伝送技術GMSL™のデイジーチェーン機能

ECUの小型化が図れるデイジーチェーン
複数ディスプレイ・パネルを効率的に接続

 アナログ・デバイセズでは、カメラやディスプレイ・パネルの高精細化を進めたいというOEMのニーズに応えて、ビットレートをGMSL2の2倍に相当する12Gbpsに高めた第3世代品「GMSL3」も提供中だ。

 GMSL3の特長のうち、ここではディスプレイ・パネルのデイジーチェーン接続機能について紹介しよう。

 これまでのGMSL2は、ポイント・ツー・ポイント接続のみに対応していた。例えばディスプレイECUから複数のディスプレイ・パネルに映像信号を送る場合、図1上のようにすべてを1対1で接続する必要があった。

 一方、GMSL3なら、図1下のようにディスプレイ同士を最大4枚までデイジーチェーンで接続できる。

図1
図1
GMSL2までのポイント・ツー・ポイント接続(上)と、GMSL3でサポートされたデイジーチェーン接続(下)の比較

 デイジーチェーン接続のメリットは、ECUの小型化が図れることだ。ディスプレイ・パネルが3枚の場合、ポイント・ツー・ポイント接続では、ECU側に3個のGMSLシリアライザと3個のコネクタが必要で、とくにコネクタは基板サイズと筐体サイズの両方の大型化を招く。デイジーチェーン接続ならそれぞれ1個で構成できる。

 「OEMやサプライヤのお客様にとって、ECUの小型化は優先度の高い課題の一つであると認識しています。デイジーチェーン接続はそうしたニーズに応える機能です」と江口氏は述べる。

 ケーブル長も短くできる。3枚のディスプレイ・パネルとECUとが離れている場合、ポイント・ツー・ポイント接続では3本の長いケーブルが必要になる。デイジーチェーン接続なら、パネル同士が近接していれば長めのケーブルは1本のみ、残りの2本は短いケーブルで済む。

 技術的には、ビデオ・インターフェースの業界標準団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)がDisplayPort用に定めたMST(マルチストリーム・トランスポート)を採用し、1本のGMSLリンクで最大4ストリームの伝送を実現している。

ディスプレイ周りの設計の自由度を向上
フルHDから4Kまで幅広く伝送が可能

 デイジーチェーン接続のデモを図2に示す。図1と同様に、3枚のディスプレイ・パネルで構成した例である。左はインストルメント・クラスタでWUXGA(1920×1200×60fps)、中央はパッセンジャー向けディスプレイで同じくWUXGA、右はセンター・インフォテインメントで4K(3840×2160×30fps)を想定した。

図2
図2
2台のフルHDディスプレイと1台の4Kディスプレイを接続したデモシステム

 すべての信号を非圧縮で伝送しようとすると、左3.65Gbps+中央3.65Gbps+右7.13Gbps=計14.43Gbpsとなって、GMSL3の最大ビットレート12Gbpsを超えてしまう。そこで右のパネルに対してのみVESAが定める圧縮技術のDSC(ディスプレイ・ストリーム・コンプレッション)を適用し、トータルで12Gbpsに収まるように工夫している。

 「レイテンシが極めて小さいDSCを内蔵していることもGMSL3の特長の一つです。DSCを使わない場合に比べてFHD映像伝送の場合60μsほどのビデオデータのレイテンシが生じますが、許容範囲と考えています」と江口氏は補足する。

 なお、図2のデモシステムにおいて、左と中央のパネルに対しては1つのフレームで2つの画面を送るSuperframe技術を使用。3840×1200の横長映像を半分に分割し、左右それぞれを1920×1200で表示する使い方だ。

 江口氏は次のように述べる。「コネクタを減らしたい、あるいはハーネスを短くしたいといったお客様の課題やニーズに対して、アナログ・デバイセズはデイジーチェーンによる接続を提案します。最大4本のビデオ・ストリームを単一のケーブルで伝送するには広帯域かつ堅牢なテクノロジーが必要で、伝送レートが最大12Gbpsと高いGMSL3だからこそ実現できるとも言えます。選択肢の一つとしてご検討ください」。

 今後、車室内の快適性や娯楽性を高めるために、クルマに搭載されるディスプレイ・パネルの枚数はさらに増え、高精細化も進んでいくことは確実だ。また、左右のAピラーの間をフルに使ったピラー・ツー・ピラー・ディスプレイも登場している。

 実装の自由度を高められるGMSL3は、そうしたトレンドに応えるテクノロジーと言えるだろう。