アナログ・デバイセズ 60周年企画 Vol.3 ロボット関連のエコシステム拡大へ 次世代ロボット開発の貢献へ 半導体メーカーの新たな挑戦

顧客が使いやすいモジュール提供を強化

 ロボット分野を対象にしたアナログ・デバイセズの主要テクノロジーは次のとおりである。

  • プレシジョン・アナログ:高精度な制御や計測を実現する計装アンプ、およびA/DやD/Aコンバータなど
  • センシング:高精度な位置推定や姿勢制御に欠かせない加速度センサーや角速度センサー、物体を検知するToF(測距)センサーやミリ波センサーなど
  • アイソレーション:低圧領域と高圧領域を安全かつ高信頼に絶縁するアイソレータなど
  • インダストリアル・コネクティビティ:産業用のEthernet TSN(Time Sensitive Networking)、シリアルバスで映像を伝送するGMSL™(Gigabit Multimedia Serial Link)、工場向け60GHzワイヤレス・リンクなど
  • セキュア・プロセッシング:認証やルート・オブ・トラストに対応した暗号コプロセッサなど
  • パワー(電源):業界をけん引する高効率性能や低EMI(電磁ノイズ)性能を誇るDC/DCコンバータや、モバイル・ロボット向けバッテリ・マネジメント・システムなど

 これらのテクノロジーを組み合わせながら、EMIの多い環境でも堅牢な接続を実現する「コネクティビティ」、カメラやレーダーを活用した「パーセプション(認知)」、モーターなどの異常をAIで検知する「インテリジェンス」、効率的なバッテリ制御を実現する「パワー・マネジメント」、自己位置や姿勢を高精度に推定する「ローカライゼーション」、モーターを効率的に駆動する「モーション」などの各機能を実装した小型モジュールや基板などの開発と提案を進めている(図1)。

図1
アナログ・デバイセズが提案するモジュラー・アプローチ。コネクティビティ、パーセプション、インテリジェンス、パワー・マネジメント、ローカライゼーション、およびモーションの各領域でモジュールや基板などの提供を増やし、ロボットメーカーや建機・農機メーカーのアプリケーション実装を加速する。

 このうちモーションに関しては、2022年に買収した旧Trinamicのモータードライブ・ソリューションを提案する。ブラシレスDCモーターおよびステッピングモーターを高性能に制御できるのが特長であり、アナログ・デバイセズがモジュラー実装の検証用に開発したモバイル・ロボットにも搭載されている。

 「ロボットや建機、農機の開発においても効率性が求められる中、開発エンジニアの確保も難しくなっています。お客様の開発負担を減らしてタイム・トゥ・マーケットに少しでも貢献するために、より使いやすいプロダクショングレードのモジュールや基板での提供に努めていきます」と須藤氏は説明する。

 従来からある評価ボードやリファレンス・デザインではなく、よりアプリケーションに近い形での提案を通じて、ロボットメーカーや建機・農機メーカーの課題にアプローチしていく狙いだ。

エコシステムを通じた価値提供を推進

 アナログ・デバイセズはエコシステム・パートナーとの取り組みも強化している。既に自動運転ソフトウエアの開発を手掛けるティアフォーや、電波センシング技術を持つサクラテックから成果が生まれている(図2)。須藤氏は「餅は餅屋の考え方で、特定の技術領域を得意とするパートナー企業と一丸となって、お客様が使いやすいソリューションを増やしていきます」と述べる。

エコシステム構築の推進でビジネスをさらに拡大

サクラテック
サクラテック
79GHzミリ波レーダーセンサーユニット  miRadar® 12e
高性能MMICを採用
カードサイズで障害物を検知
アナログ・デバイセズのMMIC(モノリシック・マイクロ波集積回路)で構成した79GHz帯のレーダーユニット。MIMOアンテナを内蔵しており、アンテナ・パターンのカスタマイズにも対応。91mm×55mm×厚さ10mm(USB Type-C版)とコンパクトながら、およそ100m先までの物体の検知が可能で、ロボット、AMR、ドローンなどの障害物検知や衝突防止に適する。
ティアフォー
ティアフォー
GMSL2™-10GbE変換モジュール
GMSL2を10GbEに変換
自動運転以外のロボティクス分野の開発を支援
映像信号をシリアルで伝送するアナログ・デバイセズのGMSL2を、汎用的な10Gbit Ethernetに変換するモジュール。GMSL2で映像を出力するティアフォーのハイダイナミックレンジ車載カメラ「C1/C2カメラ」などを、GMSL2インターフェースを持たないシステムでも活用可能にし、ロボットや建機、農機などの開発を支援する。

 また、インダストリアル分野でグローバル・パートナー企業との協業を加速するためにアイルランドにあるリムリック工場に隣接したコラボレーション拠点「ADI Catalyst™」をベースに、医薬品やヘルスケア製品の製造を手掛ける業界大手のジョンソン・エンド・ジョンソン他とロボット関連技術の開発を進めている。

 以上、アナログ・デバイセズの取り組みの一端を紹介した。ロボットの活用は、製造、農業、建築・土木の他、物流、医療、介護など、各種業界でさらに進むことは確実だ。「高い技術力を持つ日本のロボットメーカーや建機・農機メーカーのお客様の課題に寄り添っていきたいと考えています」と須藤氏は展望する。

 インテリジェント性を高めたロボットやヒューマノイド型ロボットをはじめとする次世代ロボット開発の強力な味方になってくれるだろう。