プレシジョン・シグナルチェーンの中核となるのがアンプである。「アンプは単体以外にも、ADCやDACを含むさまざまなデバイスに組み込まれるなど、いわばアナログ回路の基盤的な存在であり、当社の発展を支えてきました」とGoggin氏は説明する。
アナログ・デバイセズは、単体のデバイスとして、高電圧デュアル電源(レールtoレール)、低電圧(同)、ゼロドリフト、低バイアス電流、超低バイアス電流などの特性を持った多種多様なオペアンプを展開している他、差動アンプ、ADC・ドライバ、計装アンプ、RFアンプなどもラインアップする。センサーなど前段回路の出力特性、求められる低ノイズ性能や歪み性能、出力電圧範囲、ドリフト、オフセット、入力バイアス電流などに応じて選択が可能だ。
また、外付けまたは内蔵の高精度な基準電圧源(リファレンス)や、ノイズの少ない安定した電源もアナログ・デバイセズが強みとする領域であり、プレシジョン・シグナルチェーンの実現に寄与する。
アナログ情報とデジタル情報を変換するADCおよびDACについても豊富なポートフォリオを揃えている。最初に、高分解能化、小型化、高速化、多チャンネル化で進化するSAR(逐次比較)型のADCを取り上げていこう(図2)。
「AD4630-24」はSAR型でありながらΔΣ型に匹敵する分解能24ビットのADCだ。サンプリングは2MSPS(毎秒メガサンプル)で、INL(積分非直線性誤差)は1ppm未満と小さい。「AD4696」はチップスケールのコンパクトなADCである。「ADAQ23876」は40MSPSの高速20ビットADCモジュールだ。高精度抵抗を封止するパッケージング技術iPassives®が採用されている。最後の「AD4858」は16チャネル同時サンプリングが可能な最高20ビットのADCである。入力インピーダンスが高いため、前段アンプの要件を緩和できる。
一方、デジタルオーディオ、モーター駆動、通信、信号処理などに使われるDACに関しても、高精度化、高電圧化、電流出力、低電圧駆動、アプリケーション特化型など、さまざまな観点でのエンハンスに取り組んでいる。
例えば「AD3551R」(1ch)および「AD3552R」(2ch)は、低ノイズかつ低グリッチを特長とする33MUPS(毎秒メガアップデート)の高速DACだ。「AD5778R」は最大300mAの電流出力が可能な16ビットDACである。電流バイアス供給やソレノイド駆動など、電流出力ならではのアプリケーションに適している。この他、最高200Vまたは±100Vの出力に対応したDAC製品や、最高±16.5Vのバイポーラ電圧で動作する20ビットDAC「AD5791」、2mm×2mmサイズの低電圧DACファミリ、4mA~20mA出力でHART対応の「AD5421」などを提供している。
顧客サポートの強化も進めている。回路シミュレーションツール「LTspice®」、回路ブロックをグラフィカルに配置しながらシグナルチェーンを設計できるブラウザツール「ADI Precision Studio」、インピーダンス・アナライザ「EVAL-ADMX2001」などがその例だ。
加えて、顧客の開発を加速するために、デバイス単体のみならず、特定用途向けの基盤やモジュールといったソリューションの拡充も図っている。
「デジタル回路の性能向上やAI技術の急速な進化を一因に、さまざまな機器やシステムの高度化や自律化が進んでいます。お客様の信頼に応えながら、プレシジョン・シグナルチェーンのさらなるイノベーションを進めていきます」とGoggin氏は展望する。
アナログ・デバイセズは、強みとするプレシジョン・シグナルチェーンを通じて、インテリジェント・エッジのさらなる高度化を目指していく。