日経ビジネス電子版Special

会社の「知識」を埋もれさせずに生かす JBSのナレッジ・マネジメントで見えたカスタマーサポートの新しい姿

KCSに準拠した基盤で
ナレッジのヒット率が向上

織田 氏

 カスタマーサポートのサービス品質を上げるには、迅速に対応するだけでなく、問い合わせを受けた内容に的確な答えを返せるようにすることが必要である。そのためには、過去の問い合わせ対応によって蓄積されたナレッジの整理と共有が欠かせない。JBSのサービス&サポート本部がServiceNowのCSMを選定したのは、このナレッジ・マネジメントのための機能が備わっていることも大きな理由であった。

 「複数のソリューションを検討しましたが、ITサービスマネジメント(ITSM)のベストプラクティスであるITIL(*1)と、ナレッジ・マネジメントのベストプラクティスであるKCS(*2)の2つに準拠しているのはServiceNowだけでした。ServiceNowのCSMを導入すれば、効率よく成果の高いITサービスマネジメントだけでなく、回答の質を高めるためのナレッジベースの構築も同時に実現できると考えたのです」と織田氏は振り返る。

 織田氏がその効果を実感したのは、ある企業からの「チャットボットの運用成果を上げたい」という相談がきっかけだった。

 その企業は、別のベンダーに依頼してカスタマーサポート用のチャットボットを構築したが、問い合わせに対する回答のヒット率が非常に低く、困り果てていた。織田氏は「ヒット率を上げるため、JBSが蓄積しているナレッジベースを提供してもらえないか」という相談を受け、実際に提供したが、それだけでは改善されなかったという。

 このとき、「チャットボットを狙い通りに運用するには、そもそも回答の元となるナレッジベースがしっかり整理されていること」に加え「信頼性の高いフレームワークに基づいて運用を回すことが重要」という原点にたどり着いた。この経験を生かし、以後はKCSに沿ったナレッジ・マネジメントの実践を提案するようにし、見事受注につなぐことができた。

 「JBSでは数名のスタッフがKCSの資格を取得しており、そのフレームワークに基づいてベストプラクティスのナレッジ・マネジメントをServiceNowで実践したところ、ナレッジ検索のヒット率はかなり改善されました。それに伴って、サポートセンターへの問い合わせが、質問のカテゴリごとに30~80%削減されるという効果が表れています」と織田氏は語る。

(*1)ITIL  ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめたガイドライン。「Information Technology Infrastructure Library」の略。
(*2)KCS  Consortium for Service Innovation(サービス革新コンソーシアム)が開発したナレッジ・マネジメントのベストプラクティス。「Knowledge-Centered Service」の略。

より多くのお客様に
品質の高いサービスを提供していく

 この取り組みがスムーズに実現したのは、ServiceNowのCSMがKCSに準拠したフレームワークを備えているからであった。

 「例えばServiceNowのCSMには、『利用者がナレッジをどのように捉えているか?』といった傾向を数値化できる機能があります。そうした評価に基づいてナレッジの修正や追加・削除を行えば、ナレッジ記事の充実やヒット率の上昇を促すことができるのです。これはKCSの考え方に沿った改善活動であり、ServiceNowのCSMはその取り組みをしっかりサポートしてくれます」(織田氏)

 JBSのカスタマーサポートセンターは、現在もKCSに沿ったナレッジ・マネジメントを継続的に推進しており、これによって問い合わせに対し、適切かつスピーディに回答する体制づくりを進めている。

 「カスタマーサポートの仕事は『サポート範囲を超えても極力ベストエフォートで対応しようとする』という点がどうしても属人化しやすく、担当者によって問い合わせに対する答えにばらつきが出てしまいがちです。KCSに沿ったナレッジ・マネジメントの実践と属人化排除の運用を心がけることによって、対応のクオリティは平準化され、サービスへの信頼が一層高まります」と織田氏は語る。

 このほか織田氏は、KCSに沿ったナレッジ・マネジメントの実践によって、カスタマーサポート担当者の業務効率が改善したことも評価している。

 「KCSには、お客様からの問い合わせ内容のナレッジがなければ、すぐに作成・編集するというルールがあります。従来は受付時間の終了後にまとめてナレッジを作成していたので、どうしても残業が多くなりがちでしたが、ルールに沿ってやり方を変えたおかげで早く退社できるようになりました」(織田氏)

 また、先ほども述べたようにKCSではユーザーの利用状況を評価しながらナレッジの修正や追加・削除を行うが、ServiceNowのCSMなら、その作業も容易だという。

 「以前は、複数のツールにナレッジがばらばらに存在していただけでなく、どのナレッジがいつ、どのように修正や追加・削除されたのかを管理するのが大変でした。その点、ServiceNowのCSMは、すべてのナレッジに管理番号が付与されるので、管理の手間が大幅に省けます。ナレッジベースの精度が上がると同時に、省力化も実現できました」と織田氏は語る。

岡本 氏

 ServiceNowのCSMで実現したナレッジ・マネジメントによって、属人化が解消され、業務の効率化にもつながった。これにより、従来のカスタマーサポートとは一線を画す新しいカスタマーサポートとして、新たなビジネスが創出されるだろう。

 JBSは、今後もより多くの企業に品質の高いIT関連サービスを提供していく方針だ。岡本氏は「そのための基盤として、『ドメイン・セパレーション』というServiceNow独自の技術を利用し、数多くのお客様に、それぞれにカスタマイズされたサービスを、セキュアな状態で提供できる環境整備を進めています。また、ServiceNowのチャットボットについては、これから進む自然言語理解(NLU)への対応によって、まだまだサービスの質が向上すると期待しています。これからもJBSのサービス展開にぜひご期待ください」と語った。

CSMダッシュボード
ServiceNowのCSMのダッシュボード。顧客別の問い合わせ件数やインシデント件数、ナレッジ検索などを一覧表示できる。この画面のスクリーンショットをパワーポイントに貼り付けることで、レポート作成にかかる工数を約40%削減した。