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重要な経営資源をどう管理する? 常に進化を続けるDeNAのアイデンティティ

慎重なPoCを行った上で
一気に移行を進める

 一般に使い慣れたシステムを別のソリューションに置き換えると、ユーザーに操作上の戸惑いや負担をかけることになりやすい。しかも、DeNAが自社で開発したIT資産管理システムには、費用の配賦をはじめとするいくつもの独自の機能が作り込まれている。それが忠実に再現されないと、業務プロセスそのものを大きく変更しなければならない恐れもある。

 これらの問題を生じさせることなく、スムーズに移行できるソリューションであることが、SAMを選定した大きな決め手であった。

 こうしてDeNAは、21年4月にSAMの導入契約を結んだ。ただし、すべてのIT資産管理をSAMに置き換えるのではなく、ひとまず種類が増えて困難になっていたSaaS及びソフトウェアライセンスの管理に限定して、従来のシステムからSAMに移行することにした。

 「いきなりすべての管理を置き換えると、配賦などの機能がうまく働かず、業務に混乱を来す恐れがあります。そこで、ひとまずスモールスタートさせ、様子を見ながら少しずつ管理するソフトウェアの種類を広げていくことにしたのです」(金子氏)

 最初にSAMで管理をしたのは、新規導入したモバイル用のVPNライセンスである。このころ、新型コロナウイルス感染症の拡大とともに社内でリモートワークの動きが広がり、サービスの検証用途などでモバイルでもVPNを利用する社内ユーザーが増えていた。そこで、このVPNライセンスの管理を手始めとして、まずは新規に導入するライセンスの管理にSAMを利用することにした。

 岩﨑氏は、「すでに導入済みのライセンスについて、検証が済んでいないSAMに管理を置き換えると混乱が起こりかねないので、まずは一部のライセンス管理から試すことにしました。21年末までに新規導入した5種類のライセンスでPoC(概念実証)を行い、従来のIT資産管理システムと同じように他のシステムとの連携や費用の配賦などができることを確認できたので、22年度からは、アクティブに稼働しているライセンスの管理をSAMに切り替えていく予定です」と説明する。

 DeNAでは現在、全社・全グループで約900種類のSaaSおよびソフトウェアを管理している。そのうちアクティブに稼働している約300種類の管理を、22年4月から6月にかけて一気にSAMに切り替えていく計画だ。

 このように、慎重にPoCを行って、システムを移行しても業務に支障を来さないかどうかを入念に確かめ、問題がないことを確認できたら一気に移行を行うのは、「当社のシステム移行作業の“勝ちパターン”です」と金子氏は語る。

管理画面イメージ
DeNAがSAMを基盤として開発したソフトウェアライセンスの管理画面。製品ごとにユーザー資格を付与した従業員のメールアドレス、更新日、ライセンスIDなどが一覧表示される。

業務の品質を落とすことなく
効率を上げる

 本格移行に向けてのPoCに携わった岩﨑氏は、SAMの長所について、「IT資産管理に必要な機能がほとんど網羅されており、どれを当てはめれば従来のIT資産管理システムと同じ機能を再現できるのかということもイメージしやすい点が魅力的だと感じました。既存のIT資産管理システムにあって、SAMにはない機能もありましたが、ServiceNowの担当者の協力もあり、スムーズに機能を追加することができました」と振り返る。

 SAMはUI(ユーザーインターフェイス)の設計に関する自由度も高く、ユーザーごとの要求に応じて、入力画面のデザインや入力項目を柔軟に変更できるのも大きなメリットである。「購買担当やライセンス管理担当など、ユーザーによって使い勝手の良い画面デザインや入力項目の優先順位は異なるものですが、それぞれの要求に合わせてカスタマイズすることができます。詳細な画面設計をして、複雑なコーディングをする手間がなく、スピーディに要求通りの画面を作れるのが便利だと思いました」(岩﨑氏)。

 

 また、SAMを試験的に導入した際、従業員から「どこがどう良くなったのか分からない」という声があったという。しかし、金子氏はそれを聞いて今回のプロジェクトは成功すると確信した。

 「『どこがどう良くなったのか分からない』ということは、今までのシステムと比べて、操作性を落とすことなく使えているということです。自社で開発した既存のシステムをSaaSに置き換えたのに、『使いにくい』というクレームが来ないというのは、すごいことですね」(金子氏)

 SaaSの管理がSAMに全面移行するのはこれからだが、金子氏は「従来のIT資産管理システムに比べて、機能追加のリクエストに柔軟に対応できるようになることに加え、業務効率の改善にも結びつくのではないでしょうか」と期待している。

金子氏

 例えば、DeNAでは毎年1回、冬に全社・全グループのIT資産の棚卸しを行っている。従来はIT資産管理システムに入っている資産データを部門ごとに抽出し、それぞれの部門にメールなどで送って確認してもらっていた。

 SAMを使えばデータを抽出してスプレッドシートにコピーする作業がなくなり、部門ごとの資産データに直接アクセスできるURLを送るだけで済むようになる。

 「これまでは、送り返されたスプレッドシートに沿ってシステムに入力する手間がありましたが、SAMなら、各部門の担当者にURLのリンク先から直接入力してもらうことができます。管理の品質を落とすことなく、従来のIT資産管理システムよりも業務の効率を上げられるのではないかと期待しています」と金子氏は語る。

 今後は、SaaSだけに限らず、それ以外のIT資産についてもSAMで管理できるかどうかを検討していきたいと同社は考えている。

 金子氏は、DeNAにおけるIT資産管理について、「社長の岡村や会長の南場も、経営の根幹に関わる重要事項であることは十分に認識しています。しかし、経営層は他にも考えなければならないことが山ほどあるので、IT資産管理においては我々システム本部に任せてくれていますし、日々コミュニケーションも取っています。IT資産管理は重要ですが、経営層の関わり方としては、現場にどれだけ任せられるか、そして、何かあったときにはいつでも現場に状況を確認できる体制を整えているかが重要ではないでしょうか」と語る。

 DXの推進や働き方の変化とともに企業が利用するIT資産が急増する中、DeNAの経営層によるIT資産管理のスタンスは、大いに参考にしたいところだ。

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