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通信サービスの遠隔保守業務を「自動化」/NTTドコモが実践するゼロタッチオペレーション

既存業務の見直しを進め
赤字想定だったプロジェクトを黒字化

株式会社NTTドコモ
ネットワーク本部
サービス運営部
国際サービス 国際サービス技術担当
永黒 友貴
2016年、NTTドコモ入社。仮想化NWの計画・建設業務およびNW設計の自動化業務に従事。現在は、サービス運営部国際サービス技術担当として、「ゼロタッチオペレーション」では技術的なハンドリングを推進。

 永黒氏はServiceNowを選定した理由について、「ITIL(ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス)に準拠していること。ウェブポータルや、自動化・可視化の機能が備わったデジタルワークフロー、インスタンス間連携など、使いたい機能が標準装備されていること。SlackやUiPathなどと連携できる豊富なAPIが標準装備されていることなどを高く評価しました」と語る。

 ServiceNowはノーコード・ローコード開発に対応しており、ちょっとした機能のカスタマイズであれば内製化できる点も魅力に感じたという。「サービスや業務の改善をスピードアップするため、カスタマイズは極力社内でやるというのが会社の方針なので、それにかなったソリューションであることも評価しました」(永黒氏)。

 さらに、NTTグループ内や、海外の通信事業者で豊富な導入実績があることも、決め手の一つとなったようだ。

 こうして国際ローミングサービスの保守業務を「ゼロタッチオペレーション」にするプロジェクトはスタートしたが、「PoCを経て本稼働に漕ぎ着けるまでには、様々な苦労がありました」と岡見氏は振り返る。

 まず、「ゼロタッチオペレーション」の対象業務を、すべて洗い出す作業だけでもひと苦労であった。抽出後の対象業務が300項目にも及ぶことが判明した後は、それをいかに減らすかに頭を悩ませた。

 「既存業務をすべてそのまま『自動化』すると、予算の4倍もかかって大赤字となってしまうことが分かりました。そこで、開発ボリュームを少しでも減らすため、業務の見直しや削減ができないかどうか、数多くの関連部署や協力会社と折衝を重ねることになったのです」(岡見氏)

 社内だけで20組織、社外も含めると40組織との間で何度も定例会を開き、緊急性を要さないもの、頻度を減らせるもの、他の組織に業務移管できる業務などは、この際、見直してほしいと頼み込んだ。

 「今までやってきたことを変えてほしいと言われると、かなりの抵抗を感じるものです。相手の立場に配慮して、『こうしたらもっとサービス品質や業務効率が上がるのではないですか?』と提案しながら、開発ボリュームを減らしていきました」と岡見氏は明かす。

 結果的に300あった開発対象項目は大幅に減り、開発費を82%も削減することに成功。プロジェクトは黒字化を果たし、国際ローミングサービスの監視業務を「ゼロタッチオペレーション」へ変更するシステムは22年4月に本稼働した。

ゼロタッチオペレーション×ServiceNowのイメージ

「ゼロタッチオペレーション」の概念図。ユーザーからの故障に関する連絡や、監視システムからのアラームを受けると、自動的にインシデントチケットが作成され、試験、故障判定、復旧処理などの業務プロセスが動き出す

故障の連絡から復旧までの時間が
最大で75%も短縮

 国際ローミングサービスを「ゼロタッチオペレーション」にするシステムの仕組みは、ドコモユーザーからの連絡や、監視システムの検知によって故障が確認されると、インシデントチケットが自動作成され、それを基に正常性を確認するための試験や、故障判定、復旧処理が自動的に行われるというものである。

 「従来は、ユーザーからコールセンターのオペレーターに故障の連絡が入ると、オペレーターはそれを電話で遠隔保守担当のスタッフに伝え、保守担当スタッフはシステムを手動で操作して試験や復旧処理などを行っていました。この一連の業務プロセスが、ServiceNowのプラットフォームによって完全に『自動化』されました」と須藤氏は語る。

 人手によってバケツリレーのように処理されていた業務が「自動化」したことで、故障の連絡を受けてから回復するまでの時間は最大75%も短縮した。手順が決まっている業務なら、システムに任せた方がスピーディに処理できるということが実証されたのである。

 また、「『自動化』が実現したことで、国際ローミングサービスの遠隔保守スタッフのうち30%を、新規の成長領域の事業に配置転換できるめども立ちました。導入までにはいろいろ苦労もありましたが、期待通りの効果に満足しています」と須藤氏は語る。

 NTTドコモは今後、遠隔保守業務の「ゼロタッチオペレーション」で得た知見やノウハウを生かし、国内遠隔監視業務への拡大に加えて、他の業務にも展開していくことを検討している。すでにNTTグループ内の14組織とノウハウの移植について合意しており、最終的にはグループ全体に適用拡大を図りより多くの効果を得たい考えだ。

 最後に岡見氏は、「ゼロタッチオペレーション」のプロジェクトに携わった経験を踏まえて、業務変革の進め方に悩む企業に対して次のようなメッセージを送ってくれた。

 「既存の業務を変革するには、『なぜやらなければならないのか?』というビジョンを明確にして、すべての関係者と意識共有することが大切だと感じました。また、他の部署に協力を要請する場合は、相手の意見をしっかりと傾聴した上で、相手の立場に立った提案をすることが重要だと思います」

「ゼロタッチオペレーション」のダッシュボード画面。インシデントの件数や対応状況などがひと目で分かる(上図は検証環境の参考画面)