新しい価値を創造するため
あえて内製化にこだわる
東京ガスiネットは20年にServiceNowのITSMとITOMを導入開始。PoC(概念実証)を経て、21年7月から本格的なサービス基盤作りに取りかかった。
デジタル推進2部
インフラサービスグループ
石原 俊平 氏
PoCを行ったのは、部門のエンジニアの中でも若手を中心とするメンバーである。「ServiceNowはクラウドベースのプラットフォーム基盤のため最初はかなり戸惑いました」と振り返るのは、PoCに参加した同社 デジタル推進2部 インフラサービスグループの石原俊平氏である。
同社はServiceNowの導入に当たって、開発から運用に至るまでのすべてを、できる限り内製化することを目指した。若手メンバーを中心としたのは、クラウドの基盤を使ってサービスを開発する知見やノウハウ、経験などを積んでもらうためであった。
その背景には、東京ガスiネットの役割の変化に合わせ、より高度な能力を社員に身に付けてほしいという経営レベルからの思いもあった。
山川氏は、「これまでの東京ガスiネットは、グループ全体のシステムの維持・管理を業務の主体としてきました。もちろん、安心・安全・信頼というグループのブランド価値を支えるためには、そうした“縁の下の力持ち”としての役割をしっかり果たすことが重要ですが、これからは、グループ各社がデジタルの力を使って新しい価値を創造することの支援に軸足を移していきたい。内製化を進めていることには、そうした新しい価値が創造できるケイパビリティを磨いてもらいたいという狙いがあるのです」と説明する。
PoCでServiceNowによるサービス基盤の構築方法を習得したメンバーは、21年7月からの本格的な開発で、手始めにITに関する問い合わせや申請への対応を効率化するための仕組み作りに取りかかった。
「ServiceNowのITSMとITOMを活用すれば、いろいろな仕組みを作れますが、まずは効果が期待できる業務をスコープとし、進めることになりました」と石原氏は説明する。
申請の受付から対処までの時間が
5営業日から10分に
問い合わせに対応する仕組みとしては、ServiceNowのITSMを使って社内ポータルを作成。従来、電話だけで応対していた問い合わせを、ウェブでも受け付けられるようにした。
ポータル上には、よくある問い合わせに対する答えを網羅したFAQを用意。問い合わせをしたいグループ各社の社員は、ポータル上にその内容を入力して回答を待つこともできるし、問い合わせの内容がFAQに含まれているものであれば、その場で解決できる。
「ウェブ受付が利用できるようになったことで、電話による問い合わせの件数はかなり減りました。電話受付担当者の業務負荷は低減しています」と語るのは三和氏である。
FAQに回答がなかったとしても、ウェブで問い合わせをすると、その内容はServiceNowのデジタルワークフローを経由して自動的に解決すべき担当者に届き、レスポンスが得られる。
「若い社員の場合、電話で問い合わせをするという行為自体をためらうことも多いのですが、ウェブなら、気軽に問い合わせができるという効果もあるようです」と三和氏は語る。
一方、ITに関する申請への対応についても、デジタルワークフローによって、申請内容がダイレクトに担当者に届く仕組みを作り上げた。従来は、申請を受け付けた担当者が、内容に応じて処理を担当する社員にタスクを振り分けていたが、それが自動で行われるようになり、申請から対処までの効率が向上した。
「以前であれば、申請を受け付けてから対処するまでに5営業日ほどかかっていたものが、わずか10分で完了したというケースもあります。サービスが著しく改善されたことで、問い合わせや申請を行うグループ各社の社員にも、デジタル化の効果の大きさを強く実感してもらえているようです」(三和氏)
現在のところ、問い合わせや申請への対応をすべてServiceNowで処理できているわけではないが、三和氏は「3カ年計画で徐々に対応できる範囲を広げています。ウェブでの問い合わせ受付を2023年度中には既存の8割程度までカバーできるようにしたい」という目標を掲げている。
今後は、ITOMを、どのように活用するのかを検討していきたいという。
山川氏は、「既存の業務を効率化するだけでなく、ServiceNowを使って革新的なサービスを開発するなど、新しいことにも積極的に取り組んでいきたいと思っています。東京ガスiネットは、『はじめて』をカタチにする会社というスローガンを掲げていますが、その思いを実現するためにも、ServiceNowがもたらす可能性には非常に期待しています」と語った。
