
異動の手続きや、結婚・出産による各種手当の申請、経費の精算方法や、会議室の予約方法、パソコンやスマートフォンの貸与や不具合対応など、従業員によるコーポレート部門への問合せは、非常に多岐にわたる。コクヨでも、100以上の問合せ先があり、それぞれ電話やメール、対面で問合せの対応をしていた。
しかし、「100以上もの問合せ先があると、従業員は『この申請に関することはどこに尋ねればいいのか?』といったことがよく分からず、たらい回しになることも珍しくありませんでした。これでは、余分な時間や手間がかかるだけでなく、ストレスもたまってしまいます。従業員に安心して本業の仕事に専念してもらうためにも、何とかしなければならないと考えていました」と、白須氏は問合せを一元化するプラットフォームの立ち上げに至ったきっかけについて振り返る。
調べてみると、申請・手続きなどの社内の問合せ対応に関しては、いろいろと問題があることが分かった。その1つは、問合せ窓口が縦割りになっていたことだ。
コクヨのコーポレート部門には、HR(人事)、理財(経理)、総務、情報システム、法務、広報など複数の部署があるが、問合せ先は部署ごとに分かれており、それぞれの部署内でも問合せの内容ごとに担当者が割り振られていた。
従業員が解決したい問合せの課題単位ではなく、対応する担当者側の都合で問合せ先が分かれており、その結果として、問合せ先が100に上ってしまっていたのである。これでは、どの部署の誰に連絡を取ればいいのかがよく分からないし、担当外のスタッフに問合せをして、たらい回しにされてしまうのも当然である。
また、内容によっては、HRと理財、総務と情報システムといったように、複数の部署をまたいで申請・手続きを行わなければならない場合もある。ところが、「他部署のことはよく分からないので、そちらに問合せてほしい」と回答され、あちこちに連絡を取らざるを得なくなるという面倒があった。
白須氏は、「こうした縦割りの壁をなくし、従業員が目的の問合せ先を探す手間や、1つの申請・手続きのために従業員がいくつもの窓口に問合せをする面倒をなくしたいと思いました」と明かす。その方法として、コーポレート部門へのあらゆる問合せを一元的に受け付け、ワンストップで回答する問合せプラットフォームの構築を考えたのだ。
同じような課題感は、白須氏がユニット長を務める情報システム部だけでなく、他のコーポレート部門も抱えていた。そこでHR、理財、総務のメンバーや働き方タスクフォースメンバーと共に、19年6月に社内問合せを一元化するためのプロジェクトチームが編成されたのである。
コクヨには、全社に関わる大きな課題を解決するときには、異なる部門同士による社内横断的なタスクフォースやプロジェクトが作られ、緊密に連携しながら一気に解決していこうとする文化がある。「各部署や担当者はそれぞれの範囲で課題を解決しようと日々頑張っているものの限界もあり、部門横断の横串しチームによって今までできなかった課題解決ができるのではないかという期待感がありました」と白須氏は説明する。
プロジェクトチームは、コクヨの多様で自律的な働き方を推進する問合せのプラットフォームを「WEBコンシェルジュ」と命名。「WEBコンシェルジュ」を構築するための基盤として、プロジェクトチームはServiceNowのソリューションを採用した。
白須氏は、ServiceNowの選定の理由について、「社内の問合せに対応するために簡単に構築できるソリューションは他にもありましたが、申請・手続きのプロセスまでシンプルにできる機能を備えているものはServiceNow以外にありませんでした。問合せ件数が多くなるのは、そもそも社内の申請・手続きなど、業務プロセスそのものが煩雑で、わかりづらいからです。社内サービスへの満足度を抜本的に向上させるには、最終的にそこまで変えていかなければならないと考え、ServiceNowを選びました」と説明する。
構築にあたってはまず、従業員がセルフで問合せを解決できるようによくある問合せのFAQ(ナレッジ)を準備した。このFAQを常に改善し最新化することで、従業員があちこち探し回ることなく「WEBコンシェルジュ」にあるFAQを検索して自己解決することができる。
また、FAQで自己解決できなかった場合に問合せをフォームで起票できるようにした。「WEBコンシェルジュ」上で問合せ内容を入力してフォームを起票すると、HR、理財、総務、情報システムの窓口担当者が問合せの受付を行い、すぐに回答、または専門の担当者や他部門に取り次ぎを行う。これにより問合せを「WEBコンシェルジュ」に入れれば、必ず回答が来るという仕組みが出来上がった。
従来は、同じHRへの問合せでも、内容によって従業員が担当者まで探し出さなければならなかったが、この仕組みでは、入力された問合せ内容を一次受けのHRの窓口担当者が確認し、それぞれの専門の担当者に取り次ぐという流れになる。
従業員にとっては、窓口が一本化されるので、担当者を探し出す手間や、たらい回しなどによる時間のロスが軽減される。一方で、問合せを受け付ける担当者にとっても、業務負荷を減らせるメリットが大きい。以前は、問合せを直接受けるたびに、業務の手を止めて対応しなければならなかったし、よくある問合せでも何度も同じ回答をしなければならなかった。また問合せによっては、他の担当者への取り次ぎの手間も発生していた。
「WEBコンシェルジュ」によって専門の担当者に取り次がれる問合せの数そのものが減り、担当者の業務負荷が軽減される。問合せ対応品質の向上と、業務負荷の軽減が同時に実現する仕組みを目指したのである。