日経ビジネス電子版 Special

従業員満足度の高いコンシェルジュサービスを実現 部門の壁を越えて課題を解決するコクヨのカルチャー

従業員の94%が「便利」だと回答
満足度の高いサービスが実現する

 構築フェーズでは、各部門が緊密に連携しつつ物事を進めるコクヨの持ち味が遺憾なく発揮されている。例えば、「WEBコンシェルジュ」の運用の肝となるのはFAQの整備だが、この点については総務部が培った知見とノウハウが生かされた。

北 氏
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部
総務部
オフィスサービスユニット(品川)
北 利幸
1990年 コクヨ入社。ワークプレイス事業の開発営業部門、総務部門を経て現在はコーポレートスタッフの総務に従事する。WEBコンシェルジュのリリースよりシステム運営を担当。問合せの自己解決とシステム利用の満足度向上にKPIを設定、運用の最適化を推進中。

 「実は『WEBコンシェルジュ』が稼働する1年ほど前から、総務部独自で従業員の問合せに対応するチャットボットを運用していました。『WEBコンシェルジュ』の構築時に各部門でFAQを3カ月ほどかけて整備しましたが、整備のためのマニュアルや最新化し続けるためのノウハウが総務部で出来上がっていたので、『WEBコンシェルジュ』のFAQ作りに役立てることができました」と語るのは、同社 ヒューマン&カルチャー本部 総務部 オフィスサービスユニット(品川)の北 利幸氏である。

 こうして21年3月、「WEBコンシェルジュ」は本稼働した。従業員がFAQを検索して自己解決したり、どこに問合せればいいのか分からなかった問合せも窓口が集約され、回答もスピーディーに得られるようになったことで、従業員の満足度は高まった。

 プロジェクトチームでは、「WEBコンシェルジュ」の導入効果を検証するため、定期的に利用者アンケートを行っているが、「サービスの認知率は本稼働から2年足らずの22年12月時点で97%に達し、『便利に感じている』との回答も94%に上っています。何よりアンケートの回答率が34%と、この種の調査としては非常に高い水準であることが、従業員の問合せへの関心の高さを物語っているのではないでしょうか」と北氏は説明する。

申請・手続きなど業務自体をシンプルにして
「問合せゼロ」を目指す

 FAQを整備して回答が可視化されることにより、よくある質問なら専門の担当者以外でも対応できるようになったことも、満足度の向上につながっているようだ。

阪東氏
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部
HR部
ビジネスライフサポートユニット
阪東 千恵子
空調機器メーカー、不動産管理会社で秘書、人事業務に従事。2007年コクヨビジネスサービス、09年コクヨ入社。入社以来、人事部門にて社会保険、給与計算、退職金、異業種研修を担当。WEBコンシェルジュリリース後は、人事窓口および FAQ運用リーダーとして問合せ削減・標準化を推進。

 「かつては、同じHR部内でも専門の担当者にしか分からないことが多く、その人が不在のときには回答に時間がかかったりしていました。FAQが用意されたおかげで、回答が可視化され、他の人でもかなり対応できるようになりました」と語るのは、人事の問合せ窓口を担当するヒューマン&カルチャー本部 HR部 ビジネスライフサポートユニットの阪東千恵子氏だ。

 HR部では、問合せの窓口担当をユニットの全員が当番制で担当している。「すべてのメンバーが専門以外の問合せも受け付け、可能な範囲でFAQを見ながら回答もするので、全体の知識が底上げされるというメリットがあります。問合せの傾向を把握し、FAQの内容を見直したり、増やしたりすることにより、レスポンスの早さだけでなく、回答の品質向上にもつながっています」と阪東氏は語る。

 レスポンスを早くするための工夫として、「WEBコンシェルジュ」では、窓口担当者同士のグループチャットも設けている。例えば、総務の窓口担当者にパソコンの貸与申請に関する問合せが入った場合、情報システムの窓口担当者に「そちらで対応してもらっていいですか?」とチャットで連絡するといった使い方をしている。

 「どの担当者に取り次げばいいのか分からないときは、『この問合せに答えられる人はいますか?』とチャットで問い掛け、対応できる担当者を探すこともよくあります。問合せで一番大変なところは、誰が担当なのか分からず探し回ることです。こうした運用の工夫を凝らしていることも、『WEBコンシェルジュ』の仕組みがうまく回り、従業員の満足度を高めている要因だと言えます」と白須氏は語る。

 また、WEB年末調整の申請に向けて、FAQを事前に準備し、「WEBコンシェルジュ」の利用広報をしたところ、問合せが減少し、緊急を要する内容かFAQを作成していなかった複雑な問合せがほとんどになったという。社内でイベントにうまく連動して準備することで、大きな効果が得られる事例も出ており、この仕組みも自己解決を高め、従業員満足度を高める一因となっている。

 白須氏は、プロジェクトの今後について「問合せ件数をゼロにすることを目標としています。そのためには『WEBコンシェルジュ』を問合せの基盤から業務プロセス改善や再設計の基盤へと拡大していきたい。例えばFAQの可視化によって、業務の共通化・標準化を検討することができるようになっている。また問合せの元となる申請・手続きそのものを、従業員誰もが迷わず悩まずに行えるように再設計するなど、次のステップは、ServiceNowを使ってその環境を実現することです」と語る。

 すでに、申請・手続きのプロセスをシンプルにする取り組みは動き出している。例えば、転勤・社宅関連の申請は、かつては7つの申請に分かれており、従業員は同じ必要事項を入力しなければならなかったが、ServiceNowを使って従業員の動線視点で集約し、3つの申請に入力すれば済むようになった。こうした成功事例をどんどん増やし、最終的に「問合せゼロ」を実現したいという。

 ServiceNowの活用によって、コクヨの社内サービス改革は着実に前進しそうだ。