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ガバナンスを確保しながらイノベーションを起こすNTTグループの挑戦

ガバナンスを確保しながらイノベーションを起こすNTTグループの挑戦

ガバナンスとイノベーションを
いかに両立させるか?

 いち早くDXに取り組んできたNTTグループは、どのように進めれば変革の効果を最大化できるのかということについても、様々な知見を蓄えてきた。

 その一つが、「ガバナンスとイノベーション」を両立させる方法だ。

 グループ全体のデジタル基盤を整備する過程においては、個社ごとに開発するシステムが全体の枠(アーキテクチャ)からはみ出さないように、ガバナンスをしっかり利かせる必要がある。

 だが、「ガバナンスを利かせすぎると、個々のグループ会社が独自のシステムを開発しようとする取り組みにブレーキをかけることになり、イノベーションが生まれにくくなるという矛盾もはらんでいます。NTTグループでは、中期経営戦略に沿ってDXをスタートさせた2018年当初からこの問題に気づき、各社CIOが集まる会議でも解決策が討議されました」と駒沢氏は語る。

 ガバナンスとイノベーションを両立させる有効な解決策として、同グループが導き出したのがデジタルプラットフォームの活用であった。きっかけとなったのは、コロナ禍である。その経緯について、駒沢氏は次のように振り返る。

 「何か有効な策はないかと考えていたところ2020年初めごろから新型コロナウイルス感染症が流行し、当グループでもゼロトラストセキュリティのようにデジタルを活用したリモートワークが恒常化しました。デジタル技術を使えば、働き方を変えても普段通りの業務ができるということを改めて認識し、ガバナンスとイノベーションもデジタルの力があれば両立できるのではないかと考えるに至ったのです」

松尾氏
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
エンタープライズソリューション事業本部
エンタープライズビジネスソリューション部
ソリューションコンサル部門 部門長
松尾 知明
1993年NTT入社。NTTコムウェアにて長年ERPコンサルタント・エンジニアとして多岐にわたる業種・業界へERPパッケージを導入。2018年よりNTTグループにおけるDX推進に参画し、経営の高度化およびバックオフィス系業務の標準化・スリム化を実現。現在はNTTグループへのDX浸透を継続するとともに、持続可能な社会・産業に向けた新規サービスの創出に従事。

 そこでNTTグループは、「自らのDX」のための基盤として新たなデジタルプラットフォームの採用を決定。決裁業務に関しては、複数の選択肢の中から、最も理想的なプラットフォームとしてServiceNowを選定した。

 ServiceNowを選んだ理由について、「グローバルでスタンダードになっているプラットフォームであること。フルクラウドで利用できること。複数のグループ会社のシステムを束ねるのでマルチテナントに対応していることが最低条件でしたが、すべての条件を満たしているデジタルプラットフォームはServiceNowだけでした」と説明するのは、NTTグループのDXを技術面で支えているNTTコムウェア エンタープライズソリューション事業本部 エンタープライズビジネスソリューション部 ソリューションコンサル部門長の松尾知明氏である。

 加えて、駒沢氏は「グループ全体でガバナンスを利かせるとなると、海外のグループ会社もカバーできるグローバルなプラットフォームであることが不可欠ですし、ServiceNowにはモバイルに対応する機能やAIなども組み込まれているので、イノベーションを促すこともできると評価しました」と語る。

「自らのDX」の第一弾として
決裁プロセス変革に挑む

 NTTグループは、「自らのDX」を進めるにあたって、手始めにグループ全体における業務の進め方を徹底的に調べ上げ、問題点の洗い出しを行った。

 調査を基に掲げたDXのテーマは、およそ100項目にも上る。その中から、とくに優先順位の高いものを、デジタルプラットフォームを活用して変革することにした。

 ServiceNowを使って取り組むDXの第一弾として選んだのは、「決裁プロセス」の刷新であった。NTTグループでは、115社あるグループ会社のそれぞれが独自の決裁システムを運用しており、入力や操作方法だけでなく、決裁プロセスも会社ごとに異なっていた。

 「グループ全体で標準化された決裁システムやプロセスに統一すれば、会社異動等で操作方法に迷うことがなくなり、社員の負担も大幅に軽減されるはずです。そこで、今後進めていくEX向上の一環として取り組んでみることにしました」と松尾氏は説明する。

 標準化の大きなポイントとして松尾氏が掲げたのは、承認の簡略化である。グループ各社が個別最適で作り上げた決裁システムは、安全安心を考慮して、承認のワークフローが多段階層になっているものがほとんどだった。

 「承認者の数が多くなるほどコンプライアンスは守られやすくなりますが、承認が完了するまでの時間は長くなってしまいます。そこで、安全安心を確保しつつ、業務のスピードを高めるため、階層を減らすことにしました」(松尾氏)

 もう一つ、松尾氏がどうしても実現したかったのは、決裁システムと財務、調達、請求の各システムとの連携である。

 例えば、調達に関する決裁が下りた場合、社員は次に調達システムで注文を出し、財務システムで支払いをするという作業を行わなければならない。その都度、それぞれのシステムに同じ内容を何度も入力するというのは、社員にとって煩雑であった。

 「決裁システムと他のシステムを連携すれば、シングルインプット(1回の入力)ですべてのシステムに同じ内容を反映させることができます。システムごとの入力内容に差異が生じて手戻りが発生するといったこともなくなるので、社員の負担はかなり軽減されるはずだと考えました」と松尾氏は語る。