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ガバナンスを確保しながらイノベーションを起こすNTTグループの挑戦

ガバナンスを確保しながらイノベーションを起こすNTTグループの挑戦

財務、調達、請求の各システムと
決裁システムを連携

 NTTグループは2020年からServiceNowを導入。まずはトライアルとして、持株会社である日本電信電話の決裁システムをServiceNowのプラットフォームを使ったシステムに入れ替えた。構築の方法を学び、効果を確かめてからグループ全体に展開するというステップを踏んだのである。グループ全体で115社、17万人が使用するシステムとなるため、当然、慎重に導入プロジェクトを進める必要がある。

 効果が確認できたところで、2021年4月にグループ全体の決裁システムを入れ替えるプロジェクトが始動。丸2年の構築期間を経て、2023年4月に本稼働させた。

 一般に10万人規模のユーザーが使用する大掛かりなシステムを構築するには、かなりの年数を要するものだが、わずか2年で完成させることができたのは、ServiceNowがノーコード・ローコード開発に対応している点が大きかったようだ。

 松尾氏は、「スピーディに開発できるので、本稼働の数カ月前には習熟訓練環境を完成させ、いったんユーザーに触ってもらいました。改善点の指摘を仰ぐとともに、なるべく早く使い方に慣れてもらうことが目的です。また、フルクラウドで提供されるServiceNowと、前述の恒常化されたリモートワーク環境の組み合わせによって、数か月という短期間に数万規模のユーザーへの習熟訓練が実現できました」と松尾氏は語る。

 また、本稼働から3カ月ほどは、システムにいくつかの小さな障害が発生したが、その都度アジャイルに修正を加え、完成度を上げることができたという。これもServiceNowのプラットフォームならではのメリットだと言えるだろう。

 同グループは、ServiceNowのプラットフォームを使った決裁システムの刷新に先駆けて、会社のエンジンとなる財務、調達、請求の各システムを一新。その上で、3システムと決裁システムを連携させるという一体型のリプレイスメントを実施した。

 これによって、決裁システムで入力した内容は、そのまま財務、調達、請求の各システムにも反映されるようになり、松尾氏が目指していた「シングルインプット」を実現。また、すべての決裁プロセスが3段階の承認で完結するようになったことで、決裁に関わる業務効率と処理速度は格段に向上した。

 さらに、ServiceNowのプラットフォームを使うことで、従来はパソコンだけでしか処理できなかった決裁の承認がスマートフォンやタブレット端末からでも可能になった。

 「場所を選ばず、いつでも参照・承認ができるようになったことも、業務効率の改善に大きく寄与していると思います」と松尾氏は語る。

ServiceNowで構築した決裁システム

ServiceNowで構築した決裁システム
NTTグループの決裁システムのホーム画面。表示される項目はユーザーごとにカスタマイズすることができる

EX、CXの高度化に向けて
さらなる挑戦を続ける

 「シングルインプット」の実現に、承認プロセスの簡素化、スマートフォンやタブレット端末でも処理ができる仕組みの構築と、NTTグループとしての決裁プロセスの刷新は、社員にいくつものメリットをもたらした。

 これらの“合わせ技”によって、同グループは決裁プロセスの業務量を3割削減させるという目標を掲げている。松尾氏は、「まだ本稼働して間もないので定量的な効果は測定していませんが、目標に近い数値は達成できるのではないかと期待しています」と語る。

 また、従来は各グループ会社が独自に開発・運用していた決裁システムをグループ全体で一本化することで、開発・運用コストを5割削減させるという目標も掲げている。

 定量的な効果だけでなく、使い勝手の向上によって社員の満足度が高まるという定性的な効果も見込んでいるようだ。

 例えば、ServiceNowのプラットフォームを使ったシステムは、シンプルで直感的なUI/UXを備えられるのも大きな特徴である。NTTグループは、その特徴を生かして決裁システムの操作画面を極力シンプルにし、社員ごとの必要に応じて表示されるボタンなどをカスタマイズできるようにした。

 駒沢氏は、「以前の操作画面は、あらゆるボタンが表示されて見た目にも煩雑だったのですが、新しい画面はデザインが非常にすっきりしました。必要なボタンが見つけやすくなったので、その点でも作業効率は著しく改善するのではないでしょうか」と評価する。

 この他NTTグループでは、ServiceNowの運用状況や導入効果などがダッシュボード上で確認できる「ServiceNow Impact」というソリューションの中から、クラウド上で動いているリソースの状況を可視化・共有できる「Instance Observer」も導入している。

 駒沢氏は「Instance Observer」の導入利用について、「オンプレミスならリソースの状況は自分たちで把握できますが、フルクラウドで運用すると、どうしてもブラックボックス化しがちです。その点、『Instance Observer』があれば、パフォーマンスや速度低下の原因がどこにあるのか、といった情報を我々もユーザーもリアルタイムに共有できる点がありがたいと思いました。実際、非常に役立っています」と語る。

 一方、松尾氏は「『Instance Observer』と同じようなサービスを用意しているプラットフォームは他になく、今後、利用拡大していく上で、ServiceNowのアドバンテージの一つではないでしょうか」と語る。

 NTTグループは、この決裁プロセスの刷新を“入り口”とし、今後、さらなるEXの向上、そしてその先のCX向上へ変革を進めていく方針だ。

 駒沢氏は、「2023年5月に発表した新中期経営計画『New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN』では、EXとCXの高度化を取り組みの柱に掲げました。その実現に向け、ServiceNowをはじめとするプラットフォームを活用しながら変革に挑み続けます」と抱負を語った。