デジタル変革をきっかけに組織風土改革に挑む 農林中央金庫が歩むDXへの道のり

部品を組み合わせるだけで
業務用アプリが構築できる

 農林中金が「汎用ワークフロー」構築のために利用したのは、ServiceNowのApp Engineである。これは、業務要件に合わせてノーコード、ローコードで、比較的簡単に業務用アプリケーションが構築できるソリューションだ。

 当チームは、もともとあるいくつかのパーツを組み合わせて主な機能ごとの“モジュール”を作ることから開発作業をスタートさせた。これは、先々の業務のデジタル化を見据えたものである。

 「場当たり的に開発していては開発にも時間を要し、全体最適も取りづらいものとなります。“モジュール”を再利用して組み合わせて、様々な業務アプリケーションが簡単かつスピーディに構築できる、共通化されているので運用もしやすい、そんな仕組みにしたいと考えました。時代の変化に合わせて、必要なアプリを柔軟に開発していけるようにするための下地を整えたわけです」と半場氏は説明する。

 「汎用ワークフロー」は比較的大がかりなアプリケーションなので、組み合わせる“モジュール”も相当な数に上った。

 「結果的に“モジュール”構築の作業量もかなり膨大になりました。しかし、苦労のかいあって“モジュール”のライブラリは非常に充実したので、今後の業務アプリの開発はかなり楽になると思います。ビジネス部門の課題を抽出し、あるべき姿を議論し、“モジュール“を組み合わせながら機動的かつスピード感を持ってアプリをリリースできるようになるのではないでしょうか」と柏原氏は語る。

 ちなみに農林中金は、App Engineを使った「汎用ワークフロー」の構築に先立って、稟議申請・承認プロセスの抜本的な見直しを行っている。

 「以前の『汎用ワークフロー』は何度も同じような作業をさせられたり、たらい回しにされたりといったことも多く職員は非常にフラストレーションを募らせていたので、ワークフローの刷新と同時にプロセスを見直すことにしました。複雑なプロセスはなるべく簡素化し、複数部署の承認を要する稟議書は、時間短縮のため承認プロセスが同時並行で進むようにするなど、可能な限り改善を加えました。ワークフローだけでなく、プロセスそのものから変革したことが、職員に比較的スムーズに受け入れられたポイントだと言えそうです」と半場氏は説明する。

 新しい仕組みを導入する際には、従来の仕組みを使い慣れた現場から少なからず抵抗があるものだが、現場のフラストレーションを軽減する刷新として取り組んだことが、成功につながったようだ。

タスク処理の依頼や
進捗状況の確認もスムーズに

 こうして、農林中金がServiceNowとオンラインストレージ、グループウェアを組み合わせて構築した「汎用ワークフロー」は23年8月、正式に稼働した。

 グループ全体で約6000人に及ぶユーザー(職員)からは、「プロセスが簡素化したので承認までのスピードが速くなった」「申請すると、すぐにチャットで担当者に届くので、時間のない案件の稟議を行う際にありがたい」といった声が届いている。

 「職員のフラストレーションを軽減するために」という目的で行った「汎用ワークフロー」の刷新は、一定の評価が得られているようだ。

 また、この「汎用ワークフロー」には、業務上の様々なタスク処理を依頼する「指示発信」というメニューも用意されている。従来は電話やメールで行っていたタスク処理依頼を、ワークフロー上で行えるようにしたものだ。

 「誰が、どのタスク処理にアサインされ、作業がどこまで進捗しているのかといったステータスもひと目で確認できるようにしました。おかげで依頼が簡単になり、作業の抜け漏れもなくなったと好評です」と柏原氏は語る。

 ServiceNowによるワークフローに置き換えたことで、導入コストや運用コストも大幅に低減された。「従来の『汎用ワークフロー』を単純更改した場合の金額と比較すると、導入コストは7割程度で済みました。しかもSaaSなので、ランニングコストは圧倒的に下がっています」と柏原氏は明かす。

 開発期間も、従来の「汎用ワークフロー」の単純更改なら1年半程度を想定していたが、構想から正式稼働までで8カ月と、かなり短縮できた。

 半場氏は、ServiceNowの今後の活用について、「人事関連やファシリティ、パソコンの申請など職員向けのサービスはもちろんですが、日常的に発生し相当な負荷がかかっている定型的な業務をBPRしながらプラットフォームに乗せ換えていくなどどんどん利用範囲を広げていきたい。将来的には、お客様向けサービスなど、事業のための活用が広がることも期待しています」と語る。

 刷新された「汎用ワークフロー」の利便性を体感したことで、職員のデジタルに対する興味と活用意欲は高まっている。デジタル変革をきっかけに、職員の意識や組織風土を変革したいという農林中金の狙いは実を結びつつあるようだ。

 半場氏は、「パーツや“モジュール”を組み合わせるだけであらゆる業務アプリが簡単に作れるServiceNowの利点を生かしながら、全社的な変革を推し進めていきます」と語った。

農林中金が構築した「汎用ワークフロー」のホーム画面

農林中金が構築した「汎用ワークフロー」のホーム画面
自分がどのタスク処理にアサインされ、作業がどこまで進捗しているのかといったステータスのほか、チームのタスクもひと目で確認することができる。