実際、BGSは、ほとんどカスタマイズを加えることなく、業務内容をソリューションの標準機能に合わせるFit to Standardを前提にServiceNowを導入した。サービスデスク業務の改善効果が高まるだけでなく、ソリューションのバージョンアップにも対応しやすいと考えたからだ。
「ServiceNowは半年に1度、大規模なバージョンアップを行いますが、カスタマイズを施しすぎると、バージョンアップに対応するための開発に時間と工数がかかってしまいます。バージョンアップで追加された便利な機能がすぐに使えるようにするには、極力カスタマイズを抑えるのが望ましいのです」
そう語るのは、ServiceNowを使ったシステムの開発を担当するソリューション統括本部 システムサービス部 DevOpsグループの山本那奈氏である。
実は、山本氏は以前SES(ITエンジニア派遣会社)に勤務し、クライアント企業のServiceNow導入プロジェクトに携わったことがある。その企業はServiceNowを大がかりにカスタマイズしたので、バージョンアップのたびに数ヵ月から1年かけて、対応のための追加開発を行わざるを得なかったという。
「Fit to Standardで導入すれば、追加開発は数日から数週間で済みます。貴重な時間をより有益な開発に費やすためにも、カスタマイズはなるべく施さないことが賢明ではないでしょうか」(山本氏)
23年1月にServiceNowを導入したBGSは、手始めにサービスデスク業務を改善するための仕組みを構築。同年9月にリリースした。
この仕組みの大きなポイントは、コネクティビティの高さを生かしてServiceNowと人事マスタを連携させた点である。
サービスデスクの担当者が電話で問い合わせを受けた際に、相手の社員番号を尋ね、その番号を入力すると、人事マスタとCMDBにひもづいたその相手の端末情報がパソコン上に表示されるようになった。
「以前は電話を受けるたびに、所属する部署や店舗名と氏名、使用している端末、ソフトウェアなどを聞いてメモ書きしていたのですが、その手間が一切なくなったことで、業務効率は格段に向上しました」と中井氏は効果を語る。
以前は、月間700~800件の問い合わせ対応が精いっぱいだったが、現在では月間1200件前後までこなせるようになったという。
また、ServiceNowを別のソリューションと連携させることで、通話の内容が自動で文字起こしされる機能も追加した。以前のようにメモを取る作業がなくなり、記録された内容はそのまま週次のレポートとしてまとめられるので、レポート作成に要する時間もゼロになったそうだ。
「以前は、問い合わせ1件の処理に15分程度の時間を掛けていたのですが、ServiceNowの導入によって、1/3の5分程度まで短縮されました。工数とコストが大幅に削減されただけでなく、問い合わせの傾向が可視化できるようになったのも大きな効果です」と語るのは、ソリューション統括本部 システムサービス部でPCキッティンググループとサービスデスクグループのマネジャーを兼務する西村祐一氏である。
「自動作成されるレポートを基に、『どんな問い合わせが来ているのか?』というトレンドをつかみ、すぐさま対応を打てるようになりました。将来的には、各事業会社が新しいシステムを導入する際に、トレンドを見ながら『こんな問い合わせが多く届いているので改善してはどうか?』といったアドバイスができるかもしれません。サービスデスクの業務改善だけでなく、各事業会社のIT活用を支援するためにも役立てていきたいですね」と西村氏は語る。
BGSは、今後もServiceNowを使った業務変革を積極的に推進していく方針だ。
サービスデスク業務の変革については、「問い合わせをしなくてもユーザー自身で問題が解決できるように、ナレッジの公開やチャットボットの導入などを検討していきたい」と西村氏は語る。
一方、「今のところ、ServiceNowはBGSの内部だけで活用していますが、各事業会社からの要請があれば、当社が培った経験を基に導入のアドバイスや支援をしていきたいと思っています」と語るのは大久保氏である。
ServiceNowには、ITSMやITOMのほかにも、効率的で効果的な顧客管理を実現するCustomer Service Management、人事業務の効率化に役立つHR Service Deliveryなど、様々なソリューションがある。
大久保氏は、「小売企業にとって重要な顧客管理や人材の獲得にも効果が期待できるわけです。各事業会社のIT戦略を基盤から支える立場として、お手伝いできることは積極的に対応していきたい。これからもベイシアグループの飛躍的な成長を目指して、我々のやれることに積極的に挑戦していきます」と語った。