グローバル企業の目が、日本の危機を見通す。「日本の物流市場は構造的に安定している一方で、成長余地は限定的です。抜本的な変革がなければ、飛躍的な発展は見込みにくいでしょう」。世界最大級の海運会社として知られるA.P.モラー・マースクで北東アジア地区CEOの西山徹氏はそう語る。
西山氏は、日本の物流課題をアジア諸国との比較を通じて明快に指摘する。「日本ではドライバー不足が益々深刻化し『物流の2030年問題』と指摘されています。しかしアジアの他の国では、トラックの手配が困難という状況は見られません」
国土交通省の試算によれば、2030年度までに有効な対策を講じなければ、生産年齢人口の減少を背景に、必要な輸送力の約34%が失われる可能性がある※。これが「物流の2030年問題」。物流網に乗るべき貨物の3割以上が、物理的に届けられなくなる事態を意味する。
※出所:国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」
現在のマースクは、海運に加え、空路・陸路・倉庫・通関など多岐にわたる事業領域を展開する統合物流企業へと進化している。健全なサプライチェーンや高い顧客満足度の実現を目指す同社にとって、陸上輸送は重要なプロダクトの一つであり、「物流の2030年問題」はその根幹を揺るがすリスクとなっている。
政府は物流関連2法を改正し、荷主や運送事業者に新たな法的義務を課す。「荷主や運送事業者から、運送委託を断られる恐れは依然として残ります。これを改善しない限り、持続可能な物流サービスの提供は困難です」と西山氏は警鐘を鳴らす。
こうした課題に対する有効な打ち手として、西山氏が注目するのがTMS(Transportation Management System、輸配送管理システム)だ。トラックの配車や移動データをクラウド上で管理することで、輸送状況の可視化と業務の効率化を実現する。
「物流業界はマージンが薄く、属人的な業務が多いのが現状です。TMSの導入により、人為的なミスの削減だけでなく、コンプライアンスを重視した業務支援が可能となり、物流事業者にとって大きな価値を生み出します」(西山氏)
統合物流企業として進化を遂げたマースクにとってTMSは最適なツールといえる。同社の場合、TMSの活躍の場の一つは、船から下ろしたコンテナを内陸の拠点まで運ぶドレージ輸送にある。「物流の2030年問題」を乗り越えるために、可視化システムをどう活用するか――。
