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ますます高まる
ロジカル思考の重要性

マキシマイザーの設立は2016年だが、それまでに富沢氏はさまざまなキャリアを歩んできた。新卒で三洋電機(現パナソニック)に入社し、ドイツのフランクフルトで拠点長を務めた。帰国後はコンサルファームの経営共創基盤と部品メーカーのマブチモーターにて勤務。そして、独立前はプレセナ・ストラテジック・パートナーズにて人材育成に従事してきた。ロジカル思考研修はプレセナ時代から一貫して関わってきた専門領域である。

日本でロジカル思考が叫ばれ始めたのは2000年前後のことだ。そこから一気に体系化が進み、「MECE(ミーシー)」「ロジックツリー」「グルーピング」「ピラミッドストラクチャー」などのフレームワークが普及した。しかし理論としては理解できるものの、実際のビジネスシーンに適用することが容易ではないとの課題があった。

マキシマイザー株式会社
代表取締役
富沢 裕司 氏

こうしたジレンマを克服するため、自身の豊富な経験から導き出したのが、合目的、構造化、論拠、網羅の4つの要素だと富沢氏は説明する。

「合目的は内容が目的に合っていること、構造化は全体の構造が明確であること、論拠は答えの理由が適切であること、網羅は情報に漏れや重複がないことを指します。この要素は2025年2月21日発売の書籍『仕事ができる人は4つのことだけを考える』でも紹介していますが、ロジカル思考は情報を扱う仕事では必ず求められる能力であり、とりわけAI時代の情報分析には不可欠です。なぜなら、AIに対して目的を構造的に問いかけ、出てきた答えを論拠や網羅によって確認する必要があるからです。ロジカル思考を身につければ適切な判断が可能になり、AIを優秀なサポートツールとして使いこなせるようになります。逆に言えば、ロジカル思考が無ければAIを仕事で有効に活用できません」(富沢氏)

さらにロジカル思考は、日本独特の組織課題の改善にも役立つ。日本では組織の上に行くほど論理よりも情緒的な判断が重視される傾向があり、とくに係長、課長の中間管理職から上の層では“言われたから黙ってやる”という姿勢が強い。ところが現場は合理的に考える人材が多く、それらのギャップが業務に及ぼす影響は少なくない。これを改善するためにロジカル思考が機能すると富沢氏は語る。

「欧米ではまったく逆で、上層部にロジカル思考が徹底しているために判断がブレません。空気を読む情緒的な思考を良しとする日本がこの20年で国際競争力が低下したことを鑑みても、ロジカル思考を高める研修の重要性はますます高まっています」(富沢氏)

100人規模の組織なら
年間8000万円のムダを回避

マキシマイザーの研修は一例として1回につき平均4時間、最低限2回のセットで実施する。時間や回数を増減させることも可能である。大きな特徴は、実践を重視する点だ。1回目の研修では合目的、構造化、論拠、網羅の4つの要素をインプットし、そこで得た学びを仕事の現場で実践する。2回目には実践した結果を持ち寄り、アドバイスを受けながらさらなるブラッシュアップを図る仕組みとしている。

「我々が実践に力を入れるのは、業務とつながらないロジカル思考研修が一般に多いからです。研修後のアンケートで『理解度や満足度』のスコアが高くても、何となくわかった気分になるだけで実務に活かすことはできません。学習塾であれば実力を試すテストがあり、理解度を判断するのが普通です。企業内の研修では、その関門がないのが大きな問題だと捉えています。もちろん、研修の内容についてペーパーテストをするべきだと言いたいわけではありません。学習内容を職場実践して、それをチェックすることが大切なのです。ロジカル思考の利点は、業務上で活用できる部分が非常に多いことです。電話1本かけるにしても目的は何か、構造的に考えたらどうか、網羅的に考えたらどうかとさまざまな場面に適用できます。ロジカル思考は実践して練習しない限り身につきません。日常的な機会があるのに活用しないのは逆にもったいないと考えています」(富沢氏)

マキシマイザー株式会社
執行役員
山本 哲郎 氏

マキシマイザー 執行役員の山本哲郎氏は「1回目の研修で学んだことを業務の中で実践し、場合によっては上司からコメントもいただくので濃密な内容ですが、2回目で意見交換をすると皆さんかなり真剣に取り組んでいることがわかります。じっくりと振り返ることによって『この方法は使える』と実感される参加者が多く、2回目の研修ではみなさんの表情が前向きになっているような気がします」と述べる。

マキシマイザー株式会社
執行役員
山本 哲郎 氏

具体的にはメールやレポートを構造化したり、メールのタイトルで中身がわかるようにしたり、相手の言ったことの意図を確認したりなど、実践の内容はさほど難しいものではない。だが、「4つの要素でシンプルに説明できるアプローチが習慣化できれば、効果はガラリと変わってきます」と富沢氏は指摘する。

「まずは合目的が一丁目一番地であることを理解し、きちんと目的を書いて説明することを学びます。課長、部長クラスが初めて当社の研修を受けた場合、驚くほどロジカル思考の基礎を知らないまま業務を行なっていることに気づきます。これまでの経験と人間関係で業務を乗り越えている印象です」(富沢氏)

仮に4つの要素がないとどうなるか。合目的で言えば、「資料はどれぐらいできているのか」と聞いた際に「いやちょっと今忙しくて」と反射的に答えることが多いが、それでは質問に答えていない。構造化がしっかりしていないと、朝礼などであちこちに話が飛んで要領を得ない。論拠が曖昧だと上司から「本当なの?」と問われても答えられず、網羅ができていないと、改めて確認に費やす作業が生じる。

「些細なやり取りの積み重ねによって、一人あたり1日平均20分のムダが出ることが我々のヒアリングから見えてきました。1年で240日勤務とすれば年間4800分=80時間。1日8時間で換算すると年間10日間がムダになる計算です。しかも10日間で創出していた付加価値があることを考えると、その付加価値を失っているので二重のムダになっている。1人あたりの1時間の付加価値を1万円とすれば、年間1人につき80万円、100人の企業であれば8000万円を失っていることになります。こうした定量効果の仮説をお話しすると、ロジカル思考の大切さをわかっていただけますね」(富沢氏)

人的資本経営とは人材を利益の源泉として認識することから始まるので、ロジカル思考の効果が定量的に認識できることは経営にとっても有益なはずだ。

「人材への投資を効果測定することは、実は難しいことです。給料や賞与がどのように会社の利益へとつながり、投資を回収できるか。この測定が困難であることからも分かります。ですが、社内に一定のムダなやりとりがあることが分かれば、これを削減するための施策において、投資対効果は計算が可能です」(富沢氏)

組織文化の醸成や
グローバル競争力強化にも貢献

山本氏は「ロジカル思考は組織文化の形成にも貢献します」と語り、次のように続ける。

「なぜなら常に目的を考える文化が定着している組織は強いからです。4つの要素が浸透していれば、全員が共通言語で同じ方向を目指すことができます。営業、開発、バックオフィスに共通言語がないと、お互いに噛み合わない現象が起きます。しかし4つの要素で言語化できれば組織の壁を超えて会話ができるので、そこから合理化が進んだり、シナジーが生まれる効果が期待できます」(山本氏)

富沢氏は“強い組織”の例として、かつて研修に関わったトヨタ自動車を挙げた。同社では全社の行動指針を明確に定め、トヨタビジネスプラクティスとして目的の明確化、問題の構造化、目標の設定、原因の検討などを推進している。「そこで感じたのはロジカル思考による共通言語の徹底でした。逆に、徹底しているからこそグローバルで競争力を発揮しているのです」と富沢氏。そのほか、キーエンスやNTTグループ、ソニーグループにも同じ姿勢を感じるという。

「市場で存在感を放っている企業はロジカル思考をベースに考えていて、それが結果に現れています。先に触れたように、日本企業は現場がロジカルで中層部から上が曖昧なのが問題です。ですから中層部から上がロジカル思考になれば、自然とグローバルでの競争力が向上するのではないでしょうか。現場の優秀さは他国に引けを取りませんし、国の制度も充実していて、安心・安全が保たれているのですから、それ以外に日本企業が負ける理由があまり思いつきません。ぜひ早いうちに我々のような実践型の研修でロジカル思考を学び、組織の変革につなげてほしいと思います。また、ロジカル思考はコミュニケーションだけでなく、組織内の問題解決力を向上させるために不可欠なスキルです。ロジカルでない方針、施策では効果が見込めないどころか、無意味なプロジェクトに人員や時間といった貴重な社内リソースを投入することになります。よって、効果的な方針、施策の立案スキルを身につける、ロジカルな問題解決の研修も多数、ご提供しています」(富沢氏)

そして富沢氏は効果の高い研修を企画するために、以下のことを強調している。

「日常の仕事で使わない英単語がでてくる研修では、職場で学習内容を使いづらいです。また、ロジカル思考はスキルですからEラーニングを見るだけで身につく、ということもありません。スキルアップのためには、的確な練習が必要です。作り物のケーススタディをみんなでワイワイ話し合って終わる、こういう研修だと楽しいだけで終わってしまいます。ぜひ、本質的なスキルアップにつながるような研修を、企業の皆さまといっしょに組み立てて実施できると幸甚です」(富沢氏)

マキシマイザー株式会社