グローバルオペレーションをデジタルの力で標準化・効率化

世界共通の
業務体制を目指す
三菱UFJ銀行

年間3000時間の業務削減が目標
「使いやすい」との評価も

導入プロジェクトは23年8月にスタート。それからわずか1年足らずの24年4月に、ITSM Proを基盤とするサービスポータルはリリースされた。各拠点からの問い合わせを効率的に処理するプラットフォームということで、「Inquiry Platform」と命名した。

「システムに関する問い合わせの他、各種事務手続きや事務事項に関する問い合わせができるようにしました。これまでメールのやり取りなどで費やしていた時間を、グローバル全体で年間3000時間削減することを目指しています」と語るのは、開発に携わったD&Dチームの一員で、国際事務企画部 調査役の芝沼聡子氏だ。

芝沼氏
三菱UFJ銀行
国際事務企画部
企画グループ 調査役
芝沼 聡子
2012年に三菱UFJ銀行入行。国内法人営業を経て、15年から国際事務企画部で海外事務の手続き/事務リスク管理に従事。24年4月よりデジタルを活用した本邦・海外業務の効率化の企画・推進を担当。

ITSM Proを基盤としたことで、問い合わせや対応の履歴がナレッジとして蓄積されるようになったことも、処理時間の削減に貢献しているようだ。蓄積されたナレッジを元にまとめられたFAQを見れば、各拠点の担当者が問い合わせをする前に自己解決できるようになるからである。

「想定通り、問い合わせとその処理に要する時間は大幅に減っており、一定の手応えを感じています。ITSM Proで作ったポータルは、UIもかなり洗練されているので、海外のスタッフたちからも『使いやすい』と好評です。ツールを一つに絞り、情報を集約することもユーザビリティの向上につながっていると感じています」(芝沼氏)

国際事務企画部は、このポータルをさらに発展させて、システムや事務手続きに関する問い合わせ以外にも活用していくことを目指している。

「従来はメールにスプレッドシートを添付して行っていた各拠点からの事務計数系の報告なども、ポータルで行っています。ポータル内に取り込むことでデータベース化ができ、プラットフォームとして一つのシステムで完結できています。今後はさらに、国際事務企画部と各拠点という縦のコミュニケーションだけでなく、拠点間の横のコミュニケーションにも活用してもらえるようなポータルにしていきたいですね」と芝沼氏は語る。

例えば、ある海外拠点が行っているRPAやAIなど、それぞれで行っているデジタル化の取り組みなどをServiceNowに集約してもらい、他の拠点の参考にしてもらうといった活用法だ。

単純な問い合わせポータルの枠を超えたいということで、国際事務企画部は25年2月、プラットフォームの名称を「Inquiry Platform」から「Global Operations Portal(通称GO PORT)」に変更した。

「『Port』(船着き場)という言葉通り、様々な情報をこのポータルを通じて世界に発信したいという思いを込めています。情報を集約し、ナレッジを蓄積することにより、グローバル全体の業務レベルやサービス品質が底上げされることを期待しています」と大西氏は語る。

「Global Operations Port」のホーム画面
「Global Operations Portal」のホーム画面。検索窓に問い合わせ内容を入力すると、FAQや問い合わせフォームなどに遷移する仕組みだ。海外拠点のスタッフが使えるように英語で構成されている

「市民開発」で新たな機能を追加
生成AI機能「Now Assist」の活用準備も進める

問い合わせ以外の機能をプラットフォームに追加するため、D&Dチームは新たな開発を継続的に行っている。大がかりな開発はビジネスパートナーに委託している。一方で難易度が低い開発要件においては行員自らが開発を手掛ける「市民開発」も盛んに行われているという。

「25年1月に、新たな機能を追加しましたが、追加した機能のうち3~4割は市民開発によるものです。ServiceNowは、ローコード・ノーコード開発に対応しているので、コーディングの知識がない行員でも、思い通りの機能を自分たちで開発できるのも大きなメリットですね」と大西氏は語る。

社内公募でD&Dチームの一員となった宮脇氏は、「一部の開発では、パーツをドラッグ&ドロップすることで要件を実装できるため、比較的簡単にできました。もともとデジタルとは縁遠いキャリアだったのですが、そんな私でも開発できることにServiceNowの良さを実感しています」と語る。「事務のデジタル変革に直接携わってみたい」と公募に手を挙げた宮脇氏だが、その思いを形にできることに手応えを感じているようだ。

D&Dチームは今後、ITSM Pro Plusで利用できる生成AI機能「Now Assist」も積極的に活用し、「GO PORT」の機能を充実させていきたいと考えている。

ITSMの上級エディションであるPro Plusには、ServiceNowの生成AIアシスタントである「Now Assist」も搭載され、より高度でスピーディな処理が実現できるのも特徴だ。

現在は、問い合わせの内容を「Now Assist」に要約させ、ナレッジとして蓄積する機能を実現するためのPoC(概念実証)を実施中だ。

「他の生成AIを使った要約と比較検討したところ、『Now Assist』による要約のレベルは同等以上で、実務に耐えうる可能性が高いことが分かりました。同程度のレベルであれば、あらかじめITSM Pro Plusに組み込まれ、シームレスに機能する『Now Assist』も使い勝手が良いものと想像しています。『Now Assist』を使えば、他にもいろいろな機能が追加できるはずですので、今後じっくり研究していきたいですね」と大西氏は語る。

最後に溝口氏は、「『GO PORT』で国際事務企画部と海外各拠点間のコミュニケーションがより密になり、強靱な“One Global Operations”を実現できるようにするのが、我々の究極のゴールです。D&Dチームがその要となり、今後もその目標に向かってServiceNowを活用しながら三方よしのデジタル変革を推し進めていきます」と語った。

デジタル&データ(D&D)チームスタッフ
デジタル&データ(D&D)チームのスタッフが勢ぞろい。多様な人材で構成するため、一部のスタッフは部内公募で採用した