「人」を中心とした戦略人事 生成AIの登場によって人事は変わるのか?
一人ひとりの人材に着目し
個性や多様性を発揮させる
そもそも戦略は、「自社が直面する課題を解決すること」を目的として策定し、遂行されるべきものだ。その上、会社を取り巻く環境や、置かれている状況は千差万別である。
「従来の日本的な人事戦略はどの会社も似たり寄ったりでしたが、自社の課題を解決するには、自社らしい戦略を立てる必要があります。具体的には、課題に直面しつつも、会社ごとの経営哲学や思想、パーパス、ビジョンなどを達成する手段として、自社ならではの『戦略人事』を作り上げるべきなのです」(八木氏)
何を目指し、それを実現するには、何を成し遂げなければならないのか。ということを考えるのが経営戦略の本質だ。経営戦略の一部である「戦略人事」も、この本質を踏まえながら策定する必要がある。
「『人的資本経営』や『ジョブ型』『リスキリング』など、人事にまつわる新しい考え方が次々と登場しています。いずれも意味のある考え方だとは思いますが、流行に惑わされるのではなく、『本質的な課題解決にかなっているかどうか』を自分たちなりに考えながら採り入れていくべきです」と八木氏はアドバイスする。
「戦略人事」を策定し、遂行する上で、抜け落ちてはならないポイントとして八木氏が挙げるのが、「人」起点の発想だ。
「人材を“塊”として捉えるのではなく、一人ひとりに着目し、個性や多様性を発揮させることです。なおかつ、個々人がバラバラに動くのではなく、競い合いながらも一丸となって動くような求心力を持たせること。そのバランスが非常に重要です」(八木氏)
「人」の活躍を促すには、働きやすい環境を整えることも大切だが、それだけでは会社は強くならない。「『働き方改革』だけでなく、どうすれば自らが優位に立ち、会社の成長に貢献できるかを考え、実行させる『勝ち方改革』に取り組んでいくべきでしょう」と八木氏は語った。
自律的なキャリア構築を支援し
誰もが挑戦できる環境をつくる
「人」を起点とし、経営戦略と一体化させた「戦略人事」を遂行している企業の一つがパソナグループだ。
女性の社会進出がまだ進んでいなかった1976年、主婦や働く女性を応援する総合人材サービスを提供する企業として創業したパソナグループは、「社会の問題点を解決する」ことを企業理念に掲げ、その実現手段として「人を活かす」ことにフォーカスした多彩な事業に取り組んでいる。
執行役員 HR本部 副本部長
細川 明子 氏
「真に豊かな生き方、働き方を実現してもらい、人生設計を描くを通して、社会にとって必要とされる人材を1人でも多く輩出することが私たちの使命です。そのためには、私たち自身もグループ内であらゆる人材が活躍できる場を提供しなければなりません。当グループのHR本部は、『人』を活かす施策として、自律的なキャリア構築を支援し、誰もが挑戦できる環境づくりに取り組んでいます」と語るのは、パソナグループ 執行役員 HR本部 副本部長の細川明子氏だ。
具体的な施策として、同グループのHR本部は、①理念浸透と判断軸醸成、②働き方・生き方の改革、③人材育成、④健康経営と社員支援、⑤タレントマネジメントの5つに取り組んでいる。
このうち理念浸透と判断軸醸成に関しては、年に1度、「Pasona Way Week」という期間を設け、企業行動や各社員の行動を振り返る勉強会、ディスカッションなどを開催している。
「役職員の垣根を越えたオープンな対話の中で、社会に貢献することへの自信や誇り、共通の判断軸を育む場となっています。年齢や性別、国籍が多様な人材たちがブレない理念と判断軸を共有することで、スピーディな意思決定や行動ができるようになります」と、細川氏はその効果について説明する。
働き方・生き方の改革としては、従業員が多様で豊かなライフスタイルを実践できるように、2020年に本部機能を移転した淡路島(兵庫県淡路市)で、オフィス環境や住環境の整備を推進。従業員の子ども向けに無償のインターナショナルスクールや保育園を設置するなど、ソーシャルワークライフバランスの向上に向けた取り組みを行っている。