
セールスフォース・ジャパン
2023/7/25
遅れが叫ばれる日本のDXですが、あらためて、状況をどのように見ていますか。
根岸 残念ながら日本全体で見れば遅れていることは事実です。ただ、メーカーや通信事業者など、製品や産業の構造変化に直面している分野では変革への意識が高まっています。例えば自動車業界は、ディーラー経由で製品を販売する従来モデルに安住するのではなく、顧客とダイレクトに接点を持とうとしています。
大山 特に日本の製造業には「いいものを作れば売れる」という成功体験があるため、それが邪魔をしている印象があります。勘や経験だけに頼らず、市場や顧客のデータを集めて、それをビジネスにフィードバックする。このような視点を獲得することがDXの第一歩ではないでしょうか。


確かに、製造業に限らずあらゆる産業で、顧客やサプライチェーンなどに関するデータをいかに価値に転換するかが問われています。
淺井 「データは新しい石油」といわれる時代、重要なのはデータを流通させるためのパイプラインです。日本企業は事業部ごとの縦割り型でITシステムを構築してきましたが、それだと複数の事業部のデータが必要になった場合に、複雑なパイプラインを設計しなくてはなりません。それが業務改革やDXを遅らせる要因の1つになっています。ビジネスのアジリティを担保するために、データを流通させるための全社的なアーキテクチャを事業部門も入って検討することが重要だと思います。
宮越 その通りですね。私も、DXの取り組みを事業部ごとに推進しているケースを多く見てきました。事業環境や事業計画が異なるのと、またスピードが重視されるため、部門ごとに推進するのは合理的な面も多くあると考えています。一方で、顧客から見て部門間の整合が取れていないと、ユーザーインタフェースの複雑化を招き顧客体験の低下を招いたり、データが流通せずに事業間のシナジーを停滞させるなど、機会損失につながる場合があります。
淺井 大企業では、平均1000前後のアプリケーションが稼働しているといわれますが、アプリケーション同士が連携しているのはその内の1/3程度で、残りはサイロ化しています。もちろん連携の重要性に気付いている人はいますが、現状の仕組みのままでは連携コストがかかり過ぎるため、多くのプロジェクトを断念せざるを得ない状況もあるようです。


それらの課題を解決し、DXを加速するにはどうすればよいのでしょうか。
根岸 前提として、複雑化した重厚長大なレガシーシステムを脱却することは必須です。その際の方法としては、IT資産を自社で持たず、クラウドなどの外部サービスを利用することも有力な選択肢になるでしょう。また、システム内製化の体制を強化して、ビジネスのアジリティー(俊敏性)を高める方法もあります。両者をうまく組み合わせることが大切です。
淺井 また、新たなシステムや組織体制については、組み換え・再構成が可能な状態にすることが肝心です。これはガートナーが提唱した「コンポーザブル」というコンセプトです。具体的には、ITシステムや企業の強みとなるビジネス機能を細かく部品化し、柔軟に組み換えたり、他社の部品とつなげたりします。そうすることで、変化するビジネス環境の中でも常に最適な状態を維持することができます(図)。

宮越 我々も、コンポーザブル化によるバリューチェーンの迅速な組み換えは、これからの時代に不可欠なコンセプトだと位置付けています。例えば外食産業では、コロナ禍において実店舗が営業できない期間に、外部サービスと連携して宅配事業をスタートできたかそうでなかったかは、収益に大きな差を生む要因になりました。事業環境の変化は予測が難しいため、環境変化に可能な限り即応できるようにするために、事業機能を徐々にコンポーザブルにしていくことが求められると考えています。
中村 セールスフォースは、コンポーザブルのコンセプトを軸にした新しいシステムの形として、「API主導の接続性」を提唱しています。API(Application Programming Interface)とは、ソフトウエアやデータを互いに接続できるようにするインタフェース仕様のこと。最新の技術では、プログラムは小さくつくり、APIを接着剤や糊のように活用していつでもプログラム同士をつないだり、切り離したりできる「疎結合」な状態にすることで、市場ニーズや環境の変化に迅速に対応できるようになってきています。
これらの強みを生かして、デロイト トーマツ コンサルティングとセールスフォースは、企業・組織のDXを共に支援しています。支援内容を教えてください。
宮越 まず、事業環境や事業活動の現状、お客様が目指す方向性などを精査して、DX戦略の策定をサポートします。昨今の潮流として、新規ビジネスを実現する場合は、外部企業とエコシステムを構築して推進するケースも多いため、アライアンス戦略のアドバイザリーも実施しています。さらに、当社では事業計画を実現するクラウドプラットフォームの構築からオペレーションまでを長期的な視点でご支援します。
淺井 当社はコンポーザブルなシステムを実現する統合型プラットフォームを提供します。このプラットフォーム上で、ビジネスロジックを持ったアプリケーションの部品をAPI化し、このAPI同士を連携することでお客様が実現したい仕組みを構築します。一度つくった部品は再利用が可能なので、複数部署での二重開発や二重運用といったムダも削減できます。これにより、ビジネスのアジリティとスピードを大きく向上します。
宮越 単にシステムをつなぐだけでなく、ビジネスのエコシステムを形成する。この思想に基づいている点がセールスフォースの特長であり、強みですね。
中村 ありがとうございます。また、もう1つ強調しておきたいのは、当社は単にソリューションを提供するだけでなく、お客様の事業の成長をサポートしている、ということです。“コンポーザブル”や“システムの部品化”といったアプローチは新しいもののため、IT部門といえど精通された方は多くありません。この領域のプロフェッショナルとして、事業成長や収益への貢献度などの効果を定性・定量の両面で分析しながら、その実現に向けて伴走しています。
実際の事例はありますか。
淺井 米ウエスタンユニオン銀行におけるデジタルバンキングサービス立ち上げを、当社とデロイト トーマツ コンサルティングで支援しました。サービスを実現する事業機能をコンポーネント(部品)と捉え、自社で実現する部分と他社で実現する部分をAPIで接続することで、通常は数年かかるところをわずか1年弱でサービスを開始しています。また、その後のグローバル展開も、迅速かつスムーズに進めています。国内でも、ある企業様向けに、その企業の既存サービスに他社のサービスをAPIで接続して組み合わせて、顧客への提供価値を向上させるプロジェクトを2社でご支援しています。
このような事例が、今後は国内でもどんどん増えていきそうですね。今後の展望を教えてください。
大山 企業は「多種多様な機能のかたまり」といえます。その機能を分解し、体系的に整理することで、新たな挑戦の可能性や、外部連携の幅が広がっていくでしょう。日本企業が明るい未来を切り開けるよう、お客様に伴走しながら5年、10年後を見据えたコンサルティングサービスを提供していきたいと思います。
中村 DXは「1回やって終わり」のイベントではありません。テクノロジーが進化する限り、企業はこの進化を企業価値向上のために活用し続けていくことが不可欠となってきています。我々セールスフォースは、そんなお客様の成長の“イネーブラー(具体者)”となるべく、これからも技術とサービスを磨き続けていきます。
淺井 幅広い産業について深い知見を持ち、スキルフルなエンジニアの厚みを持つデロイト トーマツ コンサルティングのようなパートナーは、当社にとって欠かせない存在です。ともに手を携えながら、一層強力に、日本企業のDXの取り組みをサポートしていければ幸いです。

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