
セールスフォース・ジャパン
2024/2/29
金融業界でDXが叫ばれて久しいですが、スピード感をもって取り組みを進められている企業は多くありません。何が金融機関のDX推進の課題になっているのでしょうか。

白浜 要因としてまず挙げられるのは、肥大化した基幹系システムです。長年にわたり改修が繰り返されてきた勘定系システムでは、ドキュメント整備が遅れており、システム全体がブラックボックス化しているケースも珍しくありません。そのため、システムを刷新したくても、コストや時間がかかりすぎて断念せざるを得ないといった状況が存在しています。
橋詰 システムやデータのサイロ化も進行しています。例えば、契約上の正規の顧客データは勘定系にあるのですが、それ以外にもマーケティングシステムやCRMに同じ顧客のデータが存在したり、データ自体の鮮度や更新頻度、網羅度がまちまちだったりしています。データの利活用はDXの核となる取り組みの1つですが、この状態では、思うように推進できないでしょう。

白浜 長年構築・運用してきたシステムが、技術的資産から技術的負債に変わっている状態も見受けられます。ビジネスにスピードが求められる時代、この負債が足を引っ張る要因になっているのです。
この状況はどうすれば打開できるのでしょうか。
橋詰 現行の業務はその上で動いているので簡単に捨てるわけにはいきません。また先ほど白浜が話した通り、複雑化・肥大化したシステムに手を入れようとすると膨大なコストや時間、手間がかかります。重要なのは、「既にあるものをいかしつつ、どうやって使いやすい状態にもっていくか」という視点です。この方向性で、システムのグランドデザインを考え直す時期が来ています。
電通総研は、このような課題を抱える企業の課題解決に取り組んでいます。2024年1月には旧・電通国際情報サービス(ISID)から社名を変更し、新たな一歩も踏み出しました。あらためて、強みを教えてください。
白浜 社名変更に際しては、グループ企業であるアイティアイディコンサルティングとISIDビジネスコンサルティングを統合するとともに、電通本体にあった総研機能も移管しました。目的は、上流のコンサルティングサービスを一層強化し、社会や企業の変革をリードする存在になることです。
「HUMANOLOGY for the future - 人とテクノロジーで、その先をつくる。」という企業ビジョンのもと、既存の延長線上ではなく、社会への情報発信力、事業やサービスの構想力・デザイン力、ビジネスプロデュース力などを備えた存在を目指していきます。
長年培ってきたSIerとしての強みに加えて、より広い領域をカバーしていくのですね。
白浜 その通りです。現在は、顧客接点を拡大するとともに、その顧客接点で得た情報を活用して顧客理解を深めることが、あらゆる業種・業界のお客様にとって重要になっています。これは銀行をはじめとする金融機関でも同様です。ビジネスパートナーである当社には、事業開発の視点、マーケティング戦略の視点、システム戦略の視点からDXを支援するとともに、その後の定着化、拡大まで伴走できる存在であることが強く求められています。この期待に応えることが、重要なミッションです。
橋詰 コーポレートブランドの再構築に先立ち、2021年8月にはお客様の「顧客接点のDX化」を支援する部隊も統合しました。それが、私たちが所属するデジタルエンゲージメントセンターです。

Salesforceの各種クラウド製品を活用し、顧客接点DXソリューションを提供する活動を行っています。中でも、先進的なAPI連携の仕組みであるMuleSoftのAPIプラットフォームは、金融機関の顧客接点のDX化に大きな威力を発揮するものだと考えています。ここ1年ほどはSalesforceとMuleSoft展開に関する協業体制を積極的に強化してきました。
MuleSoftのAPIプラットフォームの特長を教えてください。
中村 MuleSoft が提供する「Anypoint Platform」は、システムやデータ連携を行うAPIの設計、開発・テスト、運用・管理などを一気通貫で行える機能を備えたプラットフォームです。また、一度開発したAPIは再利用可能な仕様になっているため、よく似たほかの用途に対し、あらためて新しくAPIを開発する必要がなく、生産性の向上が期待できます。セキュリティー性能にも優れており、開発時に自動生成されるコードはISO 27001、SOC 2、PCI DSS、GDPRなどの各種規制に準拠しています。
橋詰 加えて、私はアーキテクチャーの思想となっている「API-led Connectivity(API主導の接続性)」が、Anypoint Platformの非常に優れた点の1つだと感じています。
具体的には、APIをエクスペリエンス層/プロセス層/システム層の3階層でとらえ、それぞれに管理します(図)。例えば、顧客接点と連携するためのAPIはエクスペリエンス層、基幹系システムなどのデータソースとの連携を行うAPIはシステム層、これらをつなぐビジネスプロセスを提供するAPIはプロセス層に配置し、それらを互いに組み合わせて利用する、といった具合です。
「API-led Connectivity」を評価する理由について、もう少し詳しく教えてください。
橋詰 例えば、APIで基幹系システムからデータを取り出しやすくしても、そのデータを活用するプログラム自体が肥大化してしまえば、メンテナンスや再利用が難しくなります。これを回避するには、役割を明確にしたシンプルなAPIを作成し、組み合わせて使うことが効果的です。機能を小さく分けておき、APIに役割を表す名称を付けておけば、ほかの用途への再利用も促進できるはずです。
白浜 これらの特長は、金融機関のシステムのグランドデザインを見直す上でも大きなメリットをもたらします。既存のシステム資産をいかして組み替えられるので、ビッグバン型の全面改修に挑まなくてもサイロ化を解消できるからです。個々のシステムを疎結合な状態にしておけば、ビジネス環境が変化した際も、組み合わせ方を自在に変えて対応できます。それによりビジネススピードを高めることが可能です。
中村 ありがとうございます。まず、APIの世界にマイクロサービスの思想を持ち込んだのは当社だと自負しています。このアプローチにより、プログラムは小さな単位で作成・管理され、必要な時に組み合わせ不要になったらすぐ取り外せる、おもちゃのブロックのようなスタイルのAPI活用を実現します。
また当社は「DX=ビジネスの迅速化」と位置付けています。システムをいつでも着脱可能な状態にすることで、つながらないことやつなぐ・剥がすための作業といったビジネススピードの遅延要因を排除できます。これにより、金融機関の顧客接点のDX化をご支援したいと考えています。
最近は、API活用の自動化を促進する「MuleSoft Automation」の提供も開始しました(図2)。これには、反復タスクをロボットで自動化する「MuleSoft RPA」、現場担当者などのビジネスユーザーが自ら画面操作だけでAPIを組み合わせられる「MuleSoft Composer」が含まれており、より幅広い業務の効率化に貢献できるようになっています。
橋詰 RPAがAPI基盤に統合されると、やれることが大きく広がります。例えば、現在も多くの銀行が「AI-OCRなどによるペーパーレス化」を重要テーマに掲げています。RPAでこれを自動化しつつ、API連携で次の業務プロセスにつなげるといったことが可能になるのではないでしょうか。
白浜 実際、金融機関の業務には、繰り返し行われる定型業務が多数存在しています。それらを自動化できれば、大幅な業務効率化が図れるはずです。我々がAnypoint Platformをご提案する上でも、重要な訴求ポイントになると感じます。
中村 電通グループのブランドは、お客様にとって大きな安心感につながります。そのようなパートナーと協業体制でビジネスに当たれるのは、当社としても非常に心強いです。また、当社の製品はその名の通りプラットフォームなので、一部の部門だけに導入しても十分な価値を発揮できません。金融業界のお客様と伴走し、プラットフォームの価値を最大化するストーリーを描く上でも、金融業界に強みを持つ電通総研の力を引き続きお借りできればと思います。
白浜 こちらこそよろしくお願いします。今後もSalesforceとのパートナーシップのもと、様々な場面を通じて、金融機関の顧客接点のDX化を強力にご支援していきます。
