Empowerment Report

エンパワーメントレポート

チームプレーが変革の原動力
先駆的なアジャイル型監査導入、
2カ月で

アフラック生命保険
内部監査部長

荒木 理映さん

2022.06.03 掲載

アフラック生命保険が国内企業に先駆けて導入した「アジャイル型監査」。従来の内部監査が完了まで数カ月かかるのと違い、2週間という短いサイクルで監査をアジャイル(機動的)に繰り返す手法で、対象の部署に「早く良い変化を起こす」ことをめざすものとして注目されている。アフラックの試みの立役者は内部監査部長の荒木理映さん。当時まだ同社に移って半年余りだったにもかかわらず、チームプレーの体制を整え、約2カ月という短い期間で大きな方向転換を実現した。

「会社の活動はすべて見る」

「内部監査部門が提言して、会社がバッと変わる瞬間がある」とやりがいを語る

 荒木さんの一日は会議が目白押しだ。進行中の監査についてのレビューに、社長や会長など経営陣とのミーティング。内部監査業務に直接かかわるものだけでなく、「システムリスク」「資産運用リスク」といった重要な経営テーマに関する多くの会議にもオブザーバーとして参加する。部長として様々な領域のディスカッションを聞くことで、「会社の活動はすべて見る」のがモットー。内部監査は「会社の健康診断」になぞらえられるが、社内の動きをこまめに見て回る荒木さんの様子はさながら医師の回診のようだ。

 アフラックは中期経営戦略の一つに「積極的で機動的な業務執行を促進する強固なガバナンスとERM戦略」(ERMは全社的なリスク管理の意味)を掲げ、内部監査にも力を入れている。担当者が数人しかいない会社も珍しくないなか、荒木さんの部下は20人を超え、子会社やグループ会社も一元的に監査する体制を敷いている。

 内部監査は対象部署へのヒアリングから監査の計画・実施、最後の報告まで3~4カ月を要するのが一般的。改善策を講じられるまで時間がかかるうえ、監査部門と対象の部署とのコミュニケーションの機会が少ないことで双方に認識の齟齬(そご)が生まれやすい面もあった。

 これに対しアジャイル型監査は2週間単位で計画から報告を完結させながら進めるため、より早く改善に取り掛かることができる。対話を通じて監査部門と対象の部署とのあいだにチームワークが生まれ、より深い監査につながるメリットがあるといわれる。米国では2000年代から導入が広がっており、アフラックでも米国の持ち株会社が18年にアジャイル型監査に移行した。

 翌19年10月、日本法人もアジャイル型監査の導入に向けてかじを切った。同年4月に同社に移り内部監査部長に着任したばかりの荒木さんの背中を押したのは、米国拠点への出張だった。部内にも、早い環境変化に対応するために監査の在り方を変えなければいけないという声はあった。「変化に対応しない人とは働かない」。出張で、アフラック(米国)の社長の言葉を聞き、「この会社は変化を肯定する会社なんだ」と確信した。帰国後、部のマネジャーを集めた会議で、新年度となる翌年1月からの導入を打ち出した。

コロナ対応での手応え

チームでのディスカッションではホワイトボードを愛用

 残された時間は約2カ月。これまでより大幅に短い期間で監査し報告をまとめるには、計画の立て方から打ち合わせ方法まで様々な部分で業務の進め方を大きく変える必要が出てくる。その労力を引き出すには、アジャイル型監査のメリットを理解してもらう必要もあった。

 急ピッチの準備だったが、「私自身は大変ではなかった」と荒木さんは振り返る。カギを握ったのはチームプレーだ。荒木さんはゴールとなるイメージを伝え、進め方は部下に任せる。2カ月の間に米国拠点の視察や他社のヒアリング、運用体制の設計、内部監査部員全員のトレーニングの実施などを手分けしてこなし、無事に20年1月のスタートにこぎつけた。

 多様なスキルを持ったメンバーを集め、チーム全体として様々なことに対応できるようにするという多様性を重視する考え方は、内部監査の基本なのだという。会社のあらゆるところが対象となる監査の仕事は、様々な能力がある人がいないと回らない。だからこそ「自分はこの人には勝てないと思う部分がある人と働きたい」。そんなポリシーを持つ荒木さん自身も中途入社。新卒入社のメンバーと外部から加わったメンバーの知見を積極的にミックスさせていく過程で、常に多様性のあるチームづくりを進めている同社の風土も奏功した格好だ。

 とはいえアジャイル型監査の導入当初は、なかなか手応えを実感できない面もあった。折しも新型コロナウイルス感染症問題への対応が発生。自社の対応を検証するレポートを求められた。どのくらいの期間でまとめられるかを問われた荒木さんは、「速報のレポートなら2週間で出せます」と宣言した。実際に2週間後に1本目のレポートを完成させ、ようやく「これならできる」と実感がわいてきたという。アジャイル型監査のポテンシャルが見えた瞬間だった。

「善い行動を続けられる」仕組みをつくる

どの提案が一番いいか。どの部と先に協議するのがいいか。チームに的確にイメージを伝えるため、常に頭はフル稼働している

 新卒で入社した会社から一貫して、荒木さんは内部監査一筋に歩んできた。最初の配属は偶然で、大学院で書いた修士論文のテーマも19世紀のドイツ文学の作品だったが、「実は今やっていることは学生時代の研究と大きく外れていないんです」と微笑む。修士論文で研究したテーマは人間の二面性。「人間の本質は悪ではなく、弱いものであり、善い行動をし続けようと思っても環境に負けてしまうことがある」(荒木さん)。そして今の仕事である内部監査は「善くない行動」に手を出さずに済む仕組みをつくることだからだ。

 アフラックに移ったのは内部監査に力を入れている会社の中でプロフェッショナルとして専門性を追求したかったから。海外には専門の資格もあるが、日本はまだ内部監査に対し専門職が担う仕事だという認識は薄い。

 入社後1年足らずで新型コロナウイルス感染症の拡大に見舞われ、在宅勤務が中心となってしまったが、その後、女性管理職が自主的に運営している「Aflac Woman Leadership Training(AWLT)」のワークショップに参加するなどして社内でも着々とネットワークを構築。生の声を聞き取りながらアジャイル型監査のブラッシュアップを続け、社外からも視察や講演依頼が舞い込む。将来は「日本全体の内部監査の向上に寄与していきたい」と意気込んでいる。

PROFILE

荒木 理映(あらき・りえ)
2002年AIU保険(現AIG損害保険)入社。2010年マスミューチュアル生命保険(現ニッセイ・ウェルス生命保険)入社。2015年同社監査部長。2019年4月にアフラック入社、現職。コロナ前は海外旅行と食べ歩きを趣味にしていたが、今は休日にゲームや漫画を手にインドア生活を楽しんでいる。

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