Empowerment Report

エンパワーメントレポート

多様性あふれる「ラボ」が
生み出すイノベーション

アフラック生命保険
デジタルイノベーション推進部長

建部 友美さん

2022.07.19 掲載

デジタル技術を活用したイノベーションに全社で取り組むアフラック生命保険。コアビジネスである保険にとどまらず、「生きる」ことを広く支える新たなサービスを創り出す――。それを駆動するのは、同社が東京・南青山に開設した「アフラック・イノベーション・ラボ」だ。建部友美さんが部長として率いるデジタルイノベーション推進部は、ここを拠点に様々な専門性とキャリアを持った人材が集まり、これまでにない発想や働き方を生み出そうとしている。

カフェ風のオフィス空間

部下にチャンスと舞台をどれだけ用意できるか、それがチームの成果としてどう表れているか。「部下の成長を感じることがやりがい」と語る

 タマゴのヒビのように見えるのは、アルファベットの「A」「I」「L」。「アフラック・イノベーション・ラボ」の頭文字の入った黄色いタマゴがあしらわれた扉を開けると、広々したカフェ風の空間が広がる。テーブルにノートパソコンが並び、ホワイトボード代わりのガラスのパーテーションにカラフルなポストイットが貼り付けられている風景は、さながらスタートアップ企業の雰囲気だ。

 「ラボ」をオフィスとする建部さんのデジタルイノベーション推進部は、文字通りアフラックのデジタルイノベーションの全体戦略を担う。UX(ユーザーエクスペリエンス、ユーザー体験)を中心に考えるデザイン思考を取り入れ、人工知能(AI)によるデータ分析をふまえて意思決定する。社内の様々な部署や社外の協業先と連携し、短いサイクルで改善や検証を繰り返すアジャイル(機動的)の手法でプロジェクトを走らせる。

 例えば保険金・給付金の支払いを担う保険金関連部署のメンバーと組んだチーム。契約者が保険金・給付金を請求したいと思い立ってからたどる行動を「カスタマージャーニー」と呼ぶ図にまとめ、どこで不満や困りごとが発生するかを可視化。「最初に電話を受けたときにどう対応するか」「契約者が参照するウェブページはどう改善したらよいか」といった具体的な施策につなげていった。

 「保険というものは平時には忘れられている。病気など何かあったときに思い出される存在で、保険会社はお客様との接点が少ない」と建部さん。約1500万人に上る契約者のビッグデータを分析して接点をいかに増やし、カスタマージャーニーを向上させるか。「保険を身近な存在として認識してもらい、より安心できる生活を実現する」と力を込める。

所属メンバーのうち7割がキャリア採用

「ラボ」のあちこちで、パッとアイデアを書きながら議論できる工夫が凝らされている

 デジタルイノベーション推進部ができたのは2018年。当初は部員4人の小所帯だった。カスタマージャーニーを描き、どんなところに手を打つべきかを洗い出して、社長が議長を務める会議で「こういうことをしたいんだ」と訴えた。「自分の提案したものが結果に結びつき、部としての存在意義が高まり、信頼され、メンバーが増え、できることが広がっていく。好循環が生まれていくのが面白かった」と建部さんは当時を振り返る。

 その後、アフラックでは新型コロナウイルス感染症の影響による価値観や生活様式の変化をふまえ、デジタルトランスフォーメーション戦略である「DX@Aflac」が策定された。その戦略を推進する人材育成や文化の醸成に向け、デジタルイノベーション推進部では他部署の一般社員を対象とする「データアンバサダー」という教育プログラムも担当する。受講生は6カ月の研修を受けてそれぞれの部署に戻り、「データドリブン(データに基づく)文化」を全社に広げていく狙いだ。

 一方でデジタルイノベーション推進部の人材については「まだまだ採用を続けている最中」(建部さん)という。「データサイエンティスト」「エクスペリエンスデザイナー」といった専門人材を擁し、所属する30人のうちキャリア採用の割合が7割に達する。建部さんは部長として、多様な背景を持ったメンバーをどのようにまとめ、成果を出すかに腐心する。

 まずは、今年から週に1回程度、「ラボ」に対面で集まる曜日を決め、お互いを知る機会を設けるようにした。次にKGI(重要目標達成指標)の設定だ。UXの改善やデータ分析の「成果」は見えにくく、仕事の評価にも難しさがあった。各課の特徴やミッションをきちんと整理して指標を定め、部としての成長や個々のモチベーションにつなげることをめざす。

「これからもっと働き方も自由に」

「ラボ」の中央にはカフェカウンターが設けられている

 建部さん自身も、ウェブ関連のシステムエンジニア(SE)を経て2006年にアフラックに入社した経歴を持つ。2015年にはダイバーシティ推進部に異動。「在宅勤務を全社員が年1回は実施する」というプロジェクトを担当した。今でこそ在宅勤務は当たり前の働き方になったが、当時はまだ浸透していなかったのも事実。全国の営業支社長や未取得者の上司にあたる管理職などに毎日ひたすら電話をかけ取得を促し続け、見事に目標を達成した。

 このときにいろいろな部署の声を聞いた経験は、コミュニケーションの重要性を理解する機会となり、現在の部長としての仕事に生きているという。さらに建部さんの「原点」をたどると、大学院時代にもさかのぼる。研究室の教授はジェンダー研究の第一人者で、「今思うと、ここで学んだことがダイバーシティ推進部での仕事に役立った」。また、専門は16世紀のスペイン美術で、絵を読み解く「図像解釈学」を研究した。「当時は字を読めない人が絵を見て理解するという側面があった。ウェブのデザインでも、説明書なしに直感的にわかるUI(ユーザーインターフェース)が大事なんだとよくわかる」。

 その後、就職してSEとなり、さらにアフラックに転職し、「キャリアに統一感がないんです」と笑う建部さん。けれどその多様性こそが強みとなり、リーダーとしての今につながっているようだ。「これからもっと自由に働き方も変わればいい」。建部さんの挑戦は現在進行形で続いていく。

PROFILE

建部 友美(たてべ・ゆみ)
ウェブ制作会社を経て2006年にアフラックに入社、システム部門で主にウェブ開発を担当。2016年ダイバーシティ推進部。2018年デジタルイノベーション推進部に異動し、課長としてUI、UXを推進。2022年1月から現職。数年前に当時の部長に勧められて以来、週末はゴルフでリフレッシュする。

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