アフラック生命保険は女性ライン長(直属の部下を持つ管理職)比率を現在の25.3%から2025年末までに30%に引き上げる目標を掲げる。ダイバーシティの推進によって、多様な人財が活躍できる環境が整備され、組織としてのパフォーマンスを最大化できると考えているからだ。島根支社長(松江市)の堀山祐子さんは首都圏・近畿以外のエリア採用の女性社員として、22年1月に同社初の営業支社長に就いた。東西に長い島根県を駆け回り、生命保険の営業現場に新しい風を吹き込んでいる。
ロールモデルを探して
「応援してくれる上司が心の支えになった」と振り返る
「本当は支社長を目指してみたいんですけど、自信がないんです」。堀山さんは7年前、当時の男性支社長に相談した。男性支社長は前例にとらわれず、堀山さんのキャリア形成を第一に考えてくれた。まず堀山さんの視野を広げるため、支社内の数人のグループのリーダーを任せた。PDCA(計画・実行・評価・改善)というプロセスを踏み、グループ全員の業務スキルを上げ、チームとしての一体感を生み出す。組織内でリーダーとして必要な能力だ。
さらに取引先や提携企業、各種団体など支社長が訪れるべき訪問先について、支社長の代理として参加したという。外部と接点を増やすことで物の見方が変わり、発言したときの説得力が変わってくるためだ。
堀山さんは国内生命保険会社を経て01年にアフラック生命保険に入社した。入社後は営業事務を務め、16年から課長代理として販売代理店を回る担当営業を務めてきた。島根県でのエリア採用のため入社以来異動した経験がない。キャリアに関する研修では、自分の将来を考えるにあたりロールモデル(お手本となる人物)を探すことが近道である、と講師が言う。しかし「身近にいない」。
男性支社長は「(エリア採用社員を支社長に登用する)前例や人事制度がなければつくればいい」と堀山さんを鼓舞した。「自分のキャリアを応援してくれる上司は心の支えになり、自分の意欲が増した」という。
意識を変えた女性メンター
女性メンターとの出会いが堀山さんの意識を大きく変えた
社内メンター制度で出会った女性支社長も堀山さんを押し上げてくれた一人だ。社内研修でキャリアに関する講演を聞き、どうしても直接話をしたいとメンター制度の希望をダイバーシティ推進部に提出した。オンラインのほか、女性支社長が勤務している愛知県で直接会って話し込んだ。支社長としての心構えや意識が大きく高まり、時間があれば手帳に挟み込んだ会社の経営戦略を見るようになった。女性支社長から受けた影響は大きいという。
アフラックでは上司以外の役員、部長がメンターとなり、管理職一歩手前のメンティー社員のキャリア形成や仕事上の悩みなどについて相談に乗っている。直属の上司ではない“斜め上”の役員、部長に相談できるとあって、毎年200人程度の希望者がいる人気の制度だという。
「島根支社を変えたい」
堀山さんが支社長を目指したきっかけは「やりたいことがあるから」。20年からの新型コロナウイルスの感染拡大が保険の販売環境を大きく変えた。消費者が外出を控える中、対面による販売手法だけでは十分でない。販売代理店と一緒にどうするか悩んだ。20~30歳代の若年層は対面ではなく、スマートフォンなど非対面で保険を契約したいと考えている。「お客様のご要望にお応えし、しっかりとお役に立ちたい」と考えた。「島根支社を変えたい」という想いが強くなった。
22年1月。支社長昇格を知った販売代理店は「驚き半分、戸惑い半分だった」(堀山さん)。それまで島根に赴任するのは転勤で異動してくる支社長ばかりだったからだ。提携先を含めた同業他社からは「アフラックはなぜそんなことができるのか?」「どんな人事制度か?」との質問が寄せられた。関心の高さや業界の中での自社の先進性を実感した。
以前に比べコミュニケーションが密になった
島根支社のメンバーは堀山さんを含めて8人。以前に比べコミュニケーションを密にして、それぞれの社員との関わりは深くなった。「以前の私が発する言葉と、この立場で発する言葉の重みが異なる。経験して分かりました」。アフラックがどうしようとしているのか、どこに向かうのか。お客様や販売代理店、社員に対しても分かりやすく伝えるスキルが求められる。
東西に細長い島根県は移動時間がかかるため、週1、2回宿泊を伴う県内出張もある。家族は夫と高2の長男だ。留守中も長男がある程度の家事をこなし、「頑張って」と応援してくれる。
支社長になって変わったことがもう一つある。20代のときに上達しないと諦めたゴルフを復活させたのだ。プレーの誘いが多く、週2回ゴルフスクールに通いレッスンを受けている。「いい息抜きになっています」。2023年に開く「支社コンペ」を楽しみにしている。
PROFILE
堀山 祐子(ほりやま・ゆうこ)
国内生命保険会社を経て、2001年アフラック生命保険入社。16年島根支社課長代理。22年1月から現職。週末は息子のプレーする高校野球を応援する。プロ野球は広島東洋カープのファン。マツダスタジアムに観戦に行き、歓声を上げる。
