Empowerment Report

エンパワーメントレポート

誰もが組織の主役に
障がいのある社員の個性を生かす

アフラック・ハートフル・サービス株式会社
事業推進部事業企画課 課長代理

石川 麻衣さん

2024.07.16 掲載

アフラック生命保険(以下、アフラック生命)の特例子会社として障がい者を雇用し、アフラックグループ企業に保険事務サポートなどの事業を展開しているアフラック・ハートフル・サービス株式会社(以下、AHS)。アフラック生命からAHSにジョブ・ポスティング(社内公募制度)で出向している事業推進部事業企画課 課長代理の石川麻衣さんに、女性の活躍推進だけでなく、国籍や年齢、障がいの有無にかかわらず多様な人財が輝けるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の意義が増す中、障がいのある社員と共に働く石川さんが実感する「D&Iの実現」について話を聞いた。

職場にデジタル化の波 「アート」開拓で雇用生む

 アフラック生命の特例子会社として、障がい者雇用を促進しているAHSでは「個性の尊重」「多様性の活用」「無限の可能性の追求」を企業理念に掲げ、社員一人ひとりの能力を結集し、社会に貢献することを目指している。159名の従業員のうち、「社員」と呼ばれる障がい者手帳所持社員・小児がん経験者(手帳有無に関わらず)メンバーが121名、「スタッフ社員」と呼ばれる支援員・事務員38名が在籍する。

 AHSの事業推進部事業企画課に所属する石川麻衣さんは、主にチームメンバーの業務調整を担当している。「アフラック生命のグループ企業から寄せられる業務依頼を、それぞれの社員の特性にうまくマッチングさせることが主な業務です」と石川さんは言う。

メンバーの特性に合わせた業務を割り振るよう心がけています

 AHSが展開する事業には、保険事務サポート業務、パソコン業務、アート業務、オフィスコンシェルジュ業務などがある。「社員それぞれに得意なこと、不得意なことがあるので、適性を見極め、丁寧なマッチングをすることが大切」だと石川さん。業務の6割を占める保険事務サポート業務では、お客様への案内書類を封入する、スタンプを押印するなど「紙」を扱うことが得意な社員に。パソコン作業が得意な社員には、保険金支払関連のデータ処理のサポート業務を振り分けるなど配慮する。工程が多い業務は細かく分割するなど、福祉分野の専門資格を持つスタッフと協力しながら、業務の調整を行っているという。

 「ただし、今は紙を使った業務はどんどんデジタル化されているので、それに代わる新たな事業の開拓が喫緊の課題となっています。そこで近年力を入れているのが、アート業務やオフィスコンシェルジュ業務です」(石川さん)

 アート業務は2019年にスタート。今では、アフラック生命の入社式の看板や、グループ企業の社員が使うネックストラップへのイラスト・デザインのほか、代理店のサービスショップに設置されているミラー型IoT機器「アフラックミラー*」にもAHS社員のアート作品が採用されている。

*第三者企業が製造・提供するデバイス

 AHSには、アフラックグループを対象にした「D&I Champion Award」で大賞を受賞した取り組みもある。アフラック生命の総務部と協働で行っている「壁紙アート」だ。

 「現在、アフラック生命では全国でオフィス環境最適化を進めています。そこで各支社のオフィスに、その土地を象徴する絵を壁紙アートとして取り入れるというものです。例えば、青森なら『ねぶた』、鹿児島なら『桜島』と、社員自らが題材を決めて絵を描いてもらい、その中からいいものを採用しています」(石川さん)

青森支社のミーティングスペースの壁に施したアート

 オフィスコンシェルジュ業務では、皆が気持ち良く利用できるよう、会議室のクリーンアップや、休憩スペースの清拭などの環境整備を行っている。

 「業務中に、アフラック生命の社員から『いつもありがとう』などと声をかけてもらうことが多く、自然なコミュニケーションを通じて『感謝される喜び』を直接感じることが、AHS社員のモチベーションにもつながっています。会議室のクリーンアップを開始して以降、それまでと比べて利用者のマナーが向上したことも、思わぬ効果でした」(石川さん)

 今後は実施対象のオフィススペースを拡大するなど、さらなる展開を計画している。

各種ノベルティにもAHSのアート作品を採用

「みんな同じ」 幼少期から身近な多様性

 そもそも石川さんがジョブ・ポスティングで障がい者雇用を担うAHSへの出向に手を挙げたのは、幼い頃からの経験が大きく影響している。4世代が同居する実家では年老いた曽祖父と暮らし、通っていたそろばん教室の先生は脚が不自由だった。仲よしの幼馴染は、聴覚障がいのある両親の間に生まれた耳の聴こえる「コーダ」。さらに大学生になると、福祉施設や盲学校で実習を行ったり、移民の多い国であるカナダへワーキングホリデーで滞在し、さまざまな性別・国籍の人々との交流を楽しんだりしてきたという。

 「昔から、私の身近にはいろいろな個性を持つ人たちが自然と存在し、社会の一員として、それぞれの役割を果たしていました。D&Iという言葉そのものは新しくても、私がこれまで経験してきたこととそれほど違わないと感じています。それに、今自分が多数派でも、いつ自分が少数派になるかわかりません。そういう意味では、みんな同じなんだという感覚が、自分の中には強くありますね」(石川さん)

 大学卒業後、アフラックに新卒で入社した石川さんは、営業職として地元宮城県にある仙台第一支社(当時)に配属。取引先の代理店とのコミュニケーションを深めながら、仕事にやりがいを感じる日々を過ごす。それ以降もコールセンター業務や、コールセンターの新規拠点の立ち上げ、社会公共活動推進室での社会貢献活動、既契約者への提案を行う業務など、2回の産育休を経ながらさまざまな職種を経験し、スキルや仕事の幅を広げてきた。

 そんな石川さんが、障がい者雇用に関心を持つようになったのには、いくつかのターニングポイントがある。そのひとつが、2019年から3年間在籍した社会公共活動推進室での経験だ。ここでは、がんについての啓発活動やゴールドリボン(小児がん啓発支援)運動の広報活動、自宅から離れた病院で小児がんなどの難病の治療を受ける子どもとその家族が宿泊できる施設「アフラックペアレンツハウス」の運営支援などを行っていた。

 「熱心に啓発活動に取り組む団体の方々と間近で接することで、『社会貢献』への大きな学びや刺激をもらいました。同時に調布市で働くAHS社員の姿を垣間見たり、実際に一緒に活動をすることがあって親近感を感じるようになっていきました」(石川さん)

 2021年には、アフラック生命のグループ企業内でD&I活動を行う任意グループ「ダイバーシティカウンシル」に参画。その活動の一環として、AHSについての勉強会を実施した。「同じアフラック生命のグループ企業でありながら、AHSがどういう会社なのかを私たち自身も知らないことに気づき、AHSから社長と部長を招いて勉強会を開いてもらいました」(石川さん)。その勉強会をもとに、グループ企業向けのイベントとして「障がいへの理解」に関する研修をAHSと共同で開催した。このイベントは好評を博し、その後も定期的に実施されている。

 「このときに感銘をうけたのは、個性を生かし合いながら、チームで業務に取り組むというAHSの働き方です。自分もそういった活動に関わりたいと考えていたときに、偶然、ジョブ・ポスティングでAHSへの出向について募集があり、思い切って応募することにしました」(石川さん)

 これまでも自分のやりたい職種に就くために異動の希望を出したことはあったが、グループ企業に応募する「ジョブ・ポスティング」にチャレンジしたのはこれが初めてだった。「迷う気持ちがなかったといえば嘘になりますが、自分がやりたい仕事の募集が今度いつあるかわかりません。このタイミングを逃したくない、という気持ちのほうが強かったですね」(石川さん)

営業職やコールセンターの運営などさまざまな職種を経て、ジョブ・ポスティングでAHSへ

互いを生かす職場 協働のお手本に

 AHSで障がいのある社員と一緒に働くようになって、約1年半。仕事に慣れるほどに、AHSの企業姿勢に共感が深まっていくと石川さんは感じている。

 「同じ仕事でもそれぞれの特性に合わせて工程を分業することで、お互いを生かし合うようにしています。必要な配慮はしつつも、障がいがあるから『できなくても仕方ない』ではなく、『できることはどんどん頑張ってもらう、新しいことにチャレンジしていく』という会社の姿勢がすばらしいな、と。それはアフラック生命や、ほかのグループ企業の働き方にも生かせるものだと思います」(石川さん)

 当初は、障がいのある同僚への接し方などを心配していたが、実際に働いてみると、「休憩時間には趣味の話でコミュニケーションをとったりと、それほど身構える必要はないんだと思えるようになりました」(石川さん)とも語る。

 社会に貢献し、新しい働き方を追求したいという思いで飛び込んだこの仕事。ペーパレス化による代替業務の増強など、今後取り組むべき課題は多い。その一方で、2026年には法定雇用率が現状の2.5%から2.7%にアップする。より一層、アフラックグループ全体で障がいのある方の活躍に向けた雇用を守っていく施策が求められている。

 「一人ひとりの社員に活躍してもらうためにも、中長期的な視点でAHSのあるべき姿やそれに伴う新事業を構想していきたいというのが、今後の目標です。アフラックグループ内で、AHSの業務やそこで働く社員のことをもっと知ってもらえるよう、広報活動にも力を入れていきたいですね。同じアフラックグループ内でもお互いのことをあまり知らないのが現状なので、その架け橋になっていきたいと思っています」(石川さん)

 例えば、カフェ事業などを展開して、アフラックグループ内外の方々との接点をもっと増やすことはできないかといった、アイデアも膨らんでいるという。

率直な意見を出し合い、新しい企画にもチャレンジしてもらう

固定概念を外し 仕事も家庭も軽やかに

 積極的に自分のやりたい仕事に挑戦し、やりがいを得ている石川さんだが、プライベートでは2人の娘の母親でもある。実は、石川さんの夫は第二子誕生後にハードスケジュールの銀行を退職。現在は在宅勤務の夫を中心に、家事・育児をうまく分担し、仕事と生活を両立している。

 「2016年に次女を出産した頃から、夫が自身のワークライフバランスに疑問を持つようになりました。もっと家庭にコミットしたいとの思いから、当時の銀行では珍しく、長期の男性育休を取得。当時3歳と0歳の娘を連れて、家族全員で2カ月間フィリピンに滞在しました。平日は大人も子どもも語学学校で英語を勉強し、週末は離島をめぐるなど、家族の時間を堪能しました。そのときの体験から、もっと違う生き方もあると夫が感じたようで、最終的には銀行を辞めることになりました」(石川さん)

 長女が生まれたときはほぼワンオペだった石川さんだが、次女の出産、それに続く夫の転職で家庭内での役割のバランスも大きく変化。「家族の時間をみんなで過ごせる今のライフスタイルに満足しています」と笑顔を見せる。

 働き方も家庭も、そして生き方も「こうでなければいけない」という思い込みを外せば、自分自身がもっと自由に、そしてさまざまな事情を持つ他者にも思いやりを持てる──。石川さんの言葉からは、そんな軽やかさの向こうに広がるD&Iの世界が感じられた。

PROFILE

石川 麻衣(いしかわ・まい)
2006年大学卒業後、新卒でアフラックに入社。仙台第一支社(当時)での代理店営業を皮切りに、コールセンターでオペレーターの研修・育成、成長戦略プロジェクトメンバーとしてセールスコンタクトセンター(東京・調布)にてコミュニケーションサービス部の立ち上げ・運営に携わる。その後、社会公共活動推進室、カスタマーリレーション推進部を経て、2023年1月よりアフラック・ハートフル・サービス株式会社に出向。プライベートでは、夫と小学4年生、2年生の娘と4人暮らし。

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