3人の子育てや介護に直面しながらも、新幹線通勤、リモート勤務、フルタイムフレックス勤務など、様々な働き方を模索し、家庭と仕事を両立してきたのが、アフラック広島総合支社 副支社長の庭 智弥さんだ。何度も壁にぶつかりながら、「仕事を続けるにはどうしたらいいのか」を考え続けてきた結果が、現在のキャリアにつながったという庭さんに、これまでの仕事の向き合い方、そして女性管理職として後輩に伝えたいメッセージを語ってもらった。
「人生の一部」をあきらめない
庭さんは、アフラックのコアビジネスである「生きるための保険」への共感が入社を後押ししたと語る
25歳で地元であるアフラック旧福山支社に営業サポートとして中途入社した庭さん。アフラックへの入社は、「人と深く関わることで社会に貢献したい」「ライフステージが変わっても働き続けたい」という学生時代からの職業観に加えて、家族のがん闘病を経験したことが大きく影響した。
家族がアフラックの保険に加入していて、がん保険の給付により治療の選択肢が広がった。その実体験は、アフラックのコアビジネスである「生きるための保険」に強く共感するきっかけとなった。さらに、全国規模で取り組む社会貢献活動など、社会への影響力の大きさにも魅力を感じたという。
当初は自宅から近い旧福山支社にて営業サポートとして勤務していたが、支社の統廃合で広島総合支社に異動となり、新幹線通勤がスタートする。1年後、第1子となる長男を出産。通勤時間は新幹線を使って、保育園に立ち寄りドアツードアで1時間半。短時間勤務制度を使いながら「なんとか両立しようと必死だった」と、庭さんは当時の自分を振り返る。
「一人目は初めてのことばかりで、とにかく無我夢中でした。子どもを保育園に預けて新幹線に飛び乗り、オフィスに着いたら、その途端に発熱したのでお迎えにきてください、ということもしょっちゅうでしたね」(庭さん)
目まぐるしい毎日を駆け抜ける庭さんに対して、家族は当初、「そこまで大変な思いをして仕事を続けなくても…」という雰囲気だった。そんな日々の中でも仕事を続けてきたのは、「仕事は自分にとって人生の一部。仕事をあきらめずに続ける方法を見つけよう」という強い想いからだった。
「プライベートでは夫の『奥さん』や、子どもの『お母さん』といった家庭内での立場で呼ばれることも多いと思います。しかし職場では上司や同僚、代理店のみなさんから、『庭さん』と呼ばれ、立場ではなく、私個人に期待してくれたり、頼ったりしてくれる。そこで得られるやりがいは、当時の私にとっては仕事でしか得られないものでした」(庭さん)。時間をかけて家族の理解を得るしかない。仕事でも周囲に応援してもらえるように認めてもらえる結果を出す。そんな決意のもと、「職場でも家庭でも、自分がどうしたら役に立てるかを探していた気がします」と庭さん。
少しずつそんな努力が認められ、家族も働く庭さんを応援してくれる雰囲気に変化。「そうなるまでが正直、いちばんしんどい時期でしたが、周りは努力をちゃんと見てくれていたのだと思います」(庭さん)
営業一人体制のリモート勤務で奮闘
庭さんにとって2回目の転機は、営業サポートから営業への転身だ。次男出産後、「どうしたら働き続けられるか」、育休期間中から上司に相談。庭さん個人にとっても、担当する福山エリアの代理店にとっても、広島総合支社にとっても何がベストなのか──。話し合いを重ねて出てきた答えが、営業への職種変更だった。
営業となることで、広島総合支社へ毎日出勤することはなくし、福山エリア担当として、リモート勤務を行い、直行直帰で働くことも可能に。リモートワークが定着する前の時期であり、支社としても、新しい挑戦的な試みだった。
「子どもが2人目、3人目となったら、毎日の新幹線通勤を続けるのはかなりハードルが高かったと思います。周囲のフォローが必要な場面もふえてしまう。自分ひとりで完結できる業務の多い営業への職種変更で、通勤による時間的な拘束や、突発的な事態への対応などの課題が、一気に解消されました」(庭さん)
営業になることへの不安がなかったわけではない。特に営業サポートでは3人で業務を分担するチーム制だったのが、すべての業務をひとりでこなさなくてはならない。それだけの業務量を本当に自分ひとりだけでこなせるのだろうか、という不安は頭をよぎったという。
以前から子育てと仕事の両立のためにさまざまな創意工夫をしてきた庭さん。スケジュールは仕事も家庭も先回りしてタスク化。仕事内容は上司やグループと共有し、自分にしか分からない業務をなるべく作らずワンチームで業務を進める運用を徹底してきた。営業となってからは、これまで以上に自身のスケジュールや業務の進捗を上司に細かく報告。個人で動く場面が増えても、庭さんの状況を周囲がいつでも把握できるように意識していたという。そして、なにより大切なのは、感謝の気持ちだと庭さんは語る。
「どうしても突発的なことで迷惑をかけてしまうことがある分、感謝の言葉は積極的に伝えるようにしていました。また、福山エリアの業務であれば、担当外でもできるだけ私から引き取るようにしていました。いつもお世話になっている分、自分のできるところで恩返しをしようと考えていました」(庭さん)
そんな庭さんを営業先である各代理店も温かく応援。当時、子育て中の女性営業社員はまだ珍しい存在だったが、それまで営業サポートとして関係性を築いていたこともあり、不安を口にするどころか素直に営業担当になったことを喜んでもらえたという。
代理店会議では熱のこもった庭さんのプレゼンに誰もが真剣に耳を傾ける
勇気づけてくれた社内の介護コミュニティ
2018年には第3子の長女を出産し、仕事も子育ても順風満帆に進んでいたある日、実父が事故に見舞われ、要介護状態となってしまった。あまりに突然のことに、「仕事をやめざるを得ないかもしれない」という考えが頭をよぎった。動揺する庭さんに、上司が社内にある介護コミュニティの存在を伝えて、「相談してみては?」とアドバイスをしてくれ、定例会に飛び入り参加したという。
「開口いちばん『助けてください』と泣きつく私に、みなさんとても親身に相談にのってくれました。今の生活をできるだけ変えずに長期的に介護を継続できるやり方を見つけることが大切だと教わり、介護、子育て、仕事を両立するという方針を固めることができました」(庭さん)
そして、実父の介護の方針が落ち着いた頃、今度は2つ上の役職にあたる副支社長への登用という本人も驚きの人事が待っていた。「私としては1つ上の次長に登用されるのだろうという心づもりでいたので、内示当日に副支社長と聞かされて大混乱でした」と、庭さんは笑う。
呆然とした驚きから、昇進の喜びを実感できたのは、公示当日、全国にいる仕事仲間や代理店の方々からお祝いのメールや電話が続々と届いたときだった。そして、いつも「働き続けるために」と悩みながら努力し続けてきた庭さんを温かくサポートしてきた上司たちからの「お祝いの会」で、ひときわ感激を噛み締めたという。
庭さんが営業に職種変更した頃から担当代理店として二人三脚で「一緒に成長をしてきた」と語るのは、アフラック募集代理店・有限会社サンシャイン尾道センターの木佐貫教訓(きょうのり)さん・美香さん夫妻だ。教訓さんは、「副支社長就任と聞いて驚きましたが、なるべくしてなったという納得感も強い」と、庭さんの仕事ぶりを評価。一方、美香さんは「子育てと仕事の両立は、きれいごとだけではなかったはず。それでも我々代理店と丁寧に信頼関係を築く仕事ぶりに、同じ女性としていつも応援していました」と語る。
「いつか日経新聞の人事欄に名前が載るくらい出世してほしい」と語る教訓さん
尻込みするより、勇気を持つ
新米副支社長として走り出して半年あまり。「やるしかない」という思いで挑んだ副支社長だが、働き方は福山でのリモート勤務のスタイルを継続している。オンラインや電話でのコミュニケーションを密に取りながら、チーム全体を目標に向けて導いている。部下が連絡を取りやすいように、あえて夕方のスケジュールに余白の時間を設定しておき、ちょっとしたことでも相談しやすい環境を作ったり、対面で話す時間を積極的に確保するようにもしている。
「まだまだ試行錯誤ですが、短期間で部下が大きく成長してくれていることも実感。人を育てる喜びを改めて感じています。将来は、部下全員が私より上の職位になるくらい、『人財を育てられる管理職』になるのが目標です」(庭さん)と、意欲を見せる。
何度もくじけそうになりながら、「働き続けたい」という思いを貫いて、女性管理職となった庭さん。そんな庭さんを支えてきたのは、周囲からの「庭さんと一緒に働きたいから、続けられる方法を一緒に考えよう」という温かい言葉だった。
「しんどいときもありましたが、そうやって求められ、期待してもらっているという喜びが、頑張る原動力でした。ここまで来られたのも、いつも見守ってくれた上司やチームの仲間、代理店の方々、そして家族のおかげだと、感謝の気持ちでいっぱいです」
庭さんのあとに続く女性たちにも、「アサインされた役割に対して、尻込みするのではなく、勇気を持って前向きにチャレンジしてほしい」とエールを送る。「会社や家庭で求められていること、そして自分がどうなりたいのかをしっかり考えてみてください。そこから、どうバランスをとれば、やりたいことが実現できるのか、組織に貢献できるのかが見えてくると思います」(庭さん)
ときには自分だけが空回りしているような徒労感に襲われることもあるかもしれない。しかし、そんなときも、「周囲ときちんと向き合う姿勢を忘れなければ、いずれ歯車が噛み合ってくる」と庭さんは語る。焦らずに視線を先に向けて、計画的に動くこと。それが時間と心に余裕を生み、自らのキャリアプランや新しいチャレンジにも意欲的になれる秘訣だ。仕事も、家庭も自分の人生の一部。どれも手放さずに、自分らしく生きる道を見つけていきたい。
庭さんの活躍に期待を寄せる広島総合支社長の柏さん(左)
PROFILE
庭 智弥(にわ・ともみ)
大学卒業後、地元の自動車学校に入社。2005年にアフラック旧福山支社に営業サポートとして入社。2009年広島総合支社勤務となり新幹線通勤をスタート。2010年に長男、2013年に次男を出産。2014年、次男の育休明けから営業に職種変更し、リモート勤務を開始。2018年に長女を出産し、育休明けからフルタイムフレックス勤務となる。2022年、実父の事故により介護生活がスタート。2024年1月、広島総合支社副支社長に就任し、現在に至る。夫と3人の子どもと5人暮らし。
