大和証券のバックオフィス業務を幅広く受託する大和証券ビジネスセンターの上村博美社長は、バブルまっさかりの1986年、大和証券大阪支店に一般職として入社。支店の窓口業務を振り出しに総合職に転じ、執行役員、常務取締役を歴任、重責を担ってきた。現在は、600人を超える社員たちの先頭に立ち、会社の舵取りに奮闘する。
顧客の厳しい意見こそ大切
入社当時、女性の総合職は少なく、一般職から転居を伴う異動がないエリア総合職に職制転向するというのが、多くの女性社員の自然な流れだった。西宮支店長就任後に総合職に転じ、本部部署で部長職、京都支店長時代には執行役員に就任、その後、営業担当の常務取締役まで任された。
男女雇用機会均等法改正を受けた、女性活躍の第1世代に当たるが、20年間同じ支店に勤務するなど、その先陣に立つ気負いはなかった。男性社員など総合職が数年で異動を繰り返す中、同じ顧客と長年取引を続けた。もちろん、バブル崩壊も経験した。顧客の期待に沿えないと悩んだ時期すらあった。しかし、知恵と努力で、それでも付き合っていただける顧客と向き合った。
厳しい意見も素直に受け止め考える
モットーは、顧客から逃げないこと。真摯に向き合い、積極的にアプローチした。顧客の厳しい言葉には納得のいくものが多かった。しっかりと受け止め、様々に考えた。今では、自分の耳には痛いような言葉も素直に受け止めて考えられるようになった。
なかなか関係が築けなかった顧客でも、真摯に向き合い、信用を得られるようになったことで、主要顧客にまでなっていただけた。
主体的に仕事する
休日はゴルフや散歩をして過ごす。特に新型コロナウイルス感染症流行以降は、隅田川沿いの散歩に励む。週末は早起きして、川沿いを10キロ、2時間ほどかけて歩く。読書にもはまっている。図書館に足繁く通う。図書館なら、普段は読まないジャンルの本も気兼ねなく手に取れる。返却期限の2週間で読み終えなければいけないというのも、いいプレッシャーになる。
新たな制度を取り入れ、社員の育成にも励む
大和証券ビジネスセンターは事務が専門の会社。結果が数字に表れる営業とは対照的な職種だ。社員たちには、システムに「使われる」のではなく、自ら事務の効率化ができるようになってほしいと思っている。
そのためには主体的に仕事に取り組むことが必要。そうしないと仕事は面白くないだろう。勉強・教育も大切だ。ミスがなくて当たり前の作業を可視化して、それを共有できるような仕組みを作った。個人の仕事ぶりの可視化にも取り組んでいる。事務に関わる資格試験を受けさせ、その点数を可視化し、人事考課の面談に生かすようにもしている。
社員の中にはDX(デジタルトランスフォーメーション)化で自分の仕事がなくなるのではないかという危機感もある。その不安を解消することが、今の自分の責務だと思っている。
仕事は練習できない
最初に支店長を拝命した際、現場の営業から離れたくないとの思いすらあった。悩んだ末に受け入れて以降は、見える世界ががらっと変わった。
京都支店長時代は、それまでのリテール営業一筋から、上場会社など大手法人顧客との付き合いも始まった。何をどうしていいかさっぱり分からない。誰も教えてくれない。そんな中、手探りで前に進んだ。
チャレンジを後押し
仕事は練習できない、そう思った。経験するしかない。どんなに準備をしたところで、なかなか思ったようにはいかない。何より、準備をしてからやろうと思うと遅れてしまう。ならば、やりながら考えよう。結局ずっとそうやってきた。この考え方はとても重要だと思っているし、それでなんとかなると思っている。
自分に言い聞かせているのは「今の自分が一番若い」ということ。何かやろうと思ったら、先延ばしにするのではなく、すぐとりあえずやってみる。後でやろうとしている自分は、今より必ず年を取っている。
何かチャンスや変化が訪れた際には、準備できていないからとちゅうちょするのではなく、まずやってみる。やって失敗したならやめればいい。そもそも失敗しないように努力すれば、必ずできるようになる。チャンスに臆せず、チャレンジしてほしいと後進にも話している。
何事もやってみないと分からない。やらずに、勉強せずに「私は分からないからやらない」と言う人が多いのではないか。分からないのなら勉強すればいい。チャレンジはとても大事。それによって見える世界が大きく変わってくるはずだ。
PROFILE
上村 博美(うえむら・ひろみ)
1986年大和証券入社。2010年京都支店長、11年執行役員、14年常務執行役員、17年常務取締役、20年大和証券ビジネスセンター取締役副社長、21年同代表取締役社長に就任。
