Empowerment Report

エンパワーメントレポート

お客様に最高の店舗体験を提供しつつ 店長の柔軟な働き方を推進

日本マクドナルド 直営本部 サポート店長チーム

牧園 奈苗さん

日本マクドナルド ハンバーガー大学カリキュラムデザインマネージャー

牧園 義寛さん

2024.03.01 掲載 *所属は取材時のもの

外食産業・飲食業界がとりわけ危機感を募らせるのが、人材確保と育成の問題だ。従業員が無理せず働けなければ職場定着はままならない。そして期待値の高い日本の顧客を満足させるために、従業員の意欲やスキル向上を促し、質の高い接遇やサービスを提供できなければならない。こうした課題を、国内の外食産業大手の日本マクドナルドは働き方の革新で突破しようとしている。店長が「店にいなくてもお客様に満足なサービスを提供できる体制」と同時に、店長のウェルビーイングと成長を実現するワークスタイルの浸透を推進している。

 ハンバーガー・レストラン・チェーン店の最大手「マクドナルド」の店舗は、日本で47都道府県すべてにあり、約3000店で約20万人が働く。そのスタッフは10代の学生から90代のシニア層まで極めて幅広い。誰もが生き生きと成長を実感しながら働ける環境づくりは、1971年に日本マクドナルドが創業した当時からの重要なテーマでもあった。

 特に昨今、店舗で働く社員が成長をしながら長く働くことは非常に重要だ。彼らがプライベートを充実させつつ持続的に社内でキャリアを積み上げていくための「働き方改革」は、待ったなしだ。

家で「仕事の話はしない」がルール

 「かつては女性クルー(スタッフ)だけでなく、女性正社員であっても、結婚したら家庭に専念する風潮はあったと思います。そんな中で、私たちは夫婦ともにマクドナルドの店長として働いてきましたし、結婚後もそのまま働き続けるのが当たり前だと考えていました。会社も時代に合わせて様々な制度を作っていて、周りの理解やサポート体制もしっかりしているので、ここまでやってこられたのだと思います」

 そう話すのは、日本マクドナルドの「サポート店長」(後述)として活躍する牧園奈苗さんだ。同じ会社の先輩であり、現在は教育メソッド開発などを担当する同社のハンバーガー大学でマネージャー兼デザイナーとして活躍する牧園義寛さんと2012年に結婚し、現在は夫婦で店舗や店舗の人材教育といった最前線の現場をけん引し、後進を育てている立場だ。

 夫として義寛さんは、ふたりで働き続けていくためのルールとして「『仕事の話を家には持ち込まない』とふたりで決めています。でも店長経験者として仕事柄でしょうか、子供たちの育児や学校でのことなどで何か課題や問題が持ち上がると、『どうするか、こうしよう』という話スピーディーに決めています。家族のことは、ちゃんと時間を使って話していると思います」と話す。

世界共通の働き方に感動

 奈苗さんは高校生の頃に出身地である広島県のマクドナルド店でアルバイトとして働いた経験があった。その後、学生時代に航空チケットだけを持って、アジアから欧州、アフリカ、北米・南米を周って日本に帰国する世界一周旅行を経験したという。

 「その旅で、どんな国にもマクドナルドの『M』のマークがあって、どこでも同じ水準のものをリーズナブルな値段で安心して食べられることに改めて驚いたんですね。エジプトを訪れた時にお店の人に『日本のマクドナルドで働いたことがあるよ』と言ったら、ハンバーガーを作ってみてと招かれて、実際に同じように作れました。『これはすごいことだな』と興味を持ったのがきっかけで、日本マクドナルドへの就職を決意しました」(奈苗さん)

 入社して地元・広島県の店舗で働いている時に、福岡県から広島へ店長としてやってきた義寛さんと出会った。奈苗さんは店長補佐。「夫はその時、10人の若手アルバイトにビーフパティのパティの焼き方などを教えていたのですが、それぞれができていること、できていないことをすぐに把握してロジカルに教えていました。『教え方が上手な店長だな』というのが第一印象でした」と、奈苗さんは出会いを振り返る。

 義寛さんはその後、店長からエリアマネージャーに昇格。担当のエリアで店長向けワークショップをした際に、参加者の中に興味深い考えを持つ、社員を見つけた。奈苗さんだった。「自分の店だけでなく大局的な視点から仕事のあり方を考えて発言しているなんてすごいなぁと驚きました」

 ふたりは結婚から2カ月後に山口県の担当へと異動になった。その間に、13年には長男が、16年には次男が誕生した。奈苗さんはそれぞれ1年6カ月と1年5カ月の産休・育休をとったものの、育休後に仕事を再開し、17年には店長に昇進を果たした。「地元から母を呼んで育児を手伝ってもらいながら、家庭と仕事をなんとか両立させていました」(奈苗さん)

夫婦の奮闘支えた上司と制度

 転機が訪れたのは2018年だ。エリアマネージャーとして店舗運営のコンサルティングやリードしていた義寛さんが、人材育成とそのシステム開発に取り組む人材教育機関「ハンバーガー大学」という部署へと異動することになった。場所は東京・新宿のオフィスにある。これに伴って、奈苗さんも一緒に関東へと引っ越した。

 最初は「イオンモール北戸田店」(埼玉県戸田市)で店長となり、後には池袋北口店などでも店長を務めた。「山口県から異動してきて埼玉県に住んだのですが、まず保育園に空きがないとか、地元の教育事情もわからない、親戚や友達もいない、と初めてのことばかりで本当に大変でした」と奈苗さん。特に都心部の店舗では、過去に経験がないような対応が必要だった。

 19年末からは、翌20年に生まれた三男のために産休・育休もとった。「当時の苦労を思うと、妻は大変だったと思います。私も慣れていない土地でしたので、ふたりで奮闘していました」と義寛さん。奈苗さんは「困ったことがあると上司にも相談して、働き方をどう変えていけば仕事も家庭も回るのかを一緒に考えていただき、様々な制度を使ってこなすようにしました」と話す。

 日本マクドナルドも、育児や介護が必要となった店長やスタッフが持続的に働いていけるような制度をスタートさせていた。店長が働く時間をお店の状況に合わせて調整できる「店長フレックス制度」も、その一つだ。「やはり家庭の用事がある時には働く時間を少なくし、夫も対応できる日には長めに働く、といった調整ができるようなりました。非常に柔軟な働き方が可能になったと思います」(奈苗さん)

店長業務を在宅で 家庭との両立にゆとり

 コロナ禍などもあって22年からは店長の在宅勤務制度も活用したという。奈苗さんは「飲食店だと、店長は『必ず現場にいなければならない』という“掟”のようなイメージがあると思います。しかし、店長は予算の管理や店舗運営戦略の立案・策定などのデスクワークも多いんです」と説明する。「やはり1日24時間を年間365日営業している店舗を運営するわけですから、店長のワークライフバランスを向上させるには、メリハリのある働き方ができる方がメリットは大きいですね」

 その際には、店舗で働くマネージャーに権限を委譲することが必要になるという。そのために「お客様の困りごとやご要望にも自信を持って丁寧に対応できるとか、クルーを管理しながら気持ちよく働いてもらうためのリーダーシップなどを、トレーニングしていく必要があります」と、奈苗さんは語る。

 店内飲食やドライブスルーやデリバリー、モバイルオーダーからの注文などお客様の店舗利用形態が多様化し、マクドナルドの店長は今、非常にレベルの高い経営スキルが求められるようになっている。他方で店長であっても家庭を守りつつ、自分の時間を確保しながらウェルビーイングを高めることも、最近では欠かせなくなっている。

店舗間の協働 「サポート店長」が醸成

 日本マクドナルドは23年から、新たに「サポート店長」というユニークな役割も導入した。ある店舗の店長が介護や育休で長期休暇を取る場合、その店長の代わりに勤務するのがサポート店長だ。豊富な経験と、その店の実情に合わせて運営を切り盛りする手腕・仕切るが求められる。奈苗さんは現在、そのサポート店長として東京都内の店舗を担当している。

 奈苗さんは「ある店舗の店長の代理だけでなく、新店をオープンする時の立ち上げのサポートなども行います」と説明する。

 「サポートに入っている店舗で、自分で考えて現場を運営し、様々なトラブルや問題に自分で対処できるリーダーやマネージャーを育てています。目標を立ててもらって、それを達成できる能力やリーダーシップスキルを身につけてもらう。そうして自信をつけたクルーがまた、他のクルーをトレーニングする人材になっていく。それをいろんな店舗で体感できるのは醍醐味ですね」(奈苗さん)

 一方で、自分のワークライフバランスも大きく変わったことを実感している。特に「フレックス制度と在宅勤務制度は時間的にも精神的にも余裕を持つことができて、とてもありがたく良い制度だと思っています。もちろん、体もすごくラクになり、これらを組み合わせて使うことで、柔軟な働き方ができています。学校から帰ってきた子供たちを家で出迎えられる機会もすごく増えて、みんな喜んでいます」と、うれしそうに笑みをみせる。

 義寛さんも「土・日が休みになる私と、土・日は仕事になることが多い妻とで分担しながら子供たちを見ています。やはりフレックス制度や在宅勤務制度で子供たちと接する時間が増えた分、家の中もより楽しく元気になったと思います」と満足げだ。

 夫婦の休みが重なった日は、3人の子供たちをつれて小旅行などにも出かけるという。「長男が歴史に興味を持ち始めて、最近では博物館などに行くこともあります」と義寛さん。奈苗さんは「子供と接する時間が少なかったのでは、と心配したこともありましたが、家族みんなでこれからも楽しい時間を増やしていきたいですね」と笑顔で話す。

 牧園さん夫婦が日本マクドナルドで実現したワークスタイル。ふたりの自己実現はもちろん、子供たちの成長を見届ける上でも大切な家族の絆をもたらしているようだ。

PROFILE

牧園 義寛(まきぞの・よしひろ)
2001年日本マクドナルド株式会社入社。周船寺店に配属された後、佐賀県、広島県、山口県で勤務し、2018年より人材開発機関のハンバーガー大学にて勤務。

牧園 奈苗(まきぞの・ななえ)
2009年東日本マクドナルド株式会社入社。486万能倉店に配属された後、山口県、埼玉県、東京都の店舗に赴任。現在は、2024年1月より東日本地区本部人材開発室に勤務。12年、15年、19年に出産・育児休暇を取得。

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