Empowerment Report

エンパワーメントレポート

リスペクトの精神を企業カルチャーにして成長を加速

日本メドトロニック
HR(人事) エンプロイー&レイバー リレーションズ
シニアマネジャー

鈴木 よしえさん

2024.01.31 掲載

世界150カ国以上でヘルスケアテクノロジーをリードする医療機器大手のメドトロニック。グローバルな視点からID&E(インクルージョン、ダイバーシティ、エクイティ)などにも積極的に取り組んできた同社では、2023年度より「リスペクト イン ザ ワークプレイス(RIWP: Respect in the Workplace)」という日本法人発の新たな施策を全社向けに本格スタートさせている。ID&Eをさらに促進するため全従業員のマインドセットを目指すこのプロジェクトは、具体的にどのような取り組みなのか。発案者としてこの施策をリードするエンプロイー&レイバー リレーションズ シニアマネジャーの鈴木よしえさんに聞いてみた。

他者へのリスペクトというマインドセット

 メドトロニックでは、現在、すべての従業員がお互いに敬意・尊重・理解をもって接し、認め合うことで、能力を存分に発揮し、会社と共に成長する企業文化づくりを掲げた「リスペクト イン ザ ワークプレイス」(以下、RIWP)に全社で取り組んでいる。

 「RIWPは、私たちメドトロニックのすべての従業員がマインドセットとして常に持ち、会社全体のカルチャーにしていきたいという考えからスタートしました。会社にとって人材はいちばんの財産です。その『人』に焦点をあて、働きやすい環境をつくることでパフォーマンスや才能を最大限に発揮してもらいたい。それによって会社の業務がよりスムーズに進み、それが会社にさらなる向上と発展、イノベーションをもたらし、私たちが患者さんや社会により一層貢献することができるのです」

 他者をリスペクトすることをあらゆるアクションや取り組み、プロジェクトの基盤にしていく。それがRIWPの目指す世界だ。

 同社ではこれまでもID&Eやジェンダーダイバーシティ、従業員エンゲージメント向上など、さまざまな取り組みが行われてきた。しかし、そのベースとなるマインドセットがあることの重要性について、鈴木さんは次のように語る。

 「それぞれのプロジェクトでは、どうしてもそれにかかわる従業員、もしくは興味関心のある従業員が中心となってしまいます。それでは全従業員に『自分ごと』としてなかなか浸透しづらい一面があります。

 そこで個別のプロジェクトではなく、RIWPを従業員の根底に根付かせたいと考えました。すべての従業員のマインドセットが変わることで、現在進行中のさまざまなプロジェクトやアクションもよりよい方向に加速していくはずです」

日本法人独自で取り組むプロジェクト

 そもそものきっかけは、アメリカ本社から、従業員が職場のリスペクトについて学ぶためのトレーニングを実施するようにというリクエストが来たことだった。エンプロイー&レイバー リレーションズのチーム内で、このトレーニングの実施を検討していく中で、1回きりのトレーニングとして実施するだけではなく、「リスペクトを会社的な文化にできないか」と考えたことから、鈴木さんが人事の責任者とID&Eを促進するリーダーに提案。その後、両名のサポートを得て、リーダー全員の賛同が得られたことから、日本法人では独自にRIWPというプロジェクトを立ち上げ、全社的に取り組んでいくことになった。

 「人事内の1チームからの提案であっても、重要なことであれば、それを重視して、会社全体の取り組みとして取り上げ、全力でサポートし、協業してくれる社長や上司やリーダーたちの決断力と行動力はメドトロニックの素晴らしさであり、大きな強みの一つです。アメリカや欧米では、日本とのカルチャーの違いもあり、他者をリスペクトすることがもっと自然なことなのかもしれません。そこで私たち日本法人で、個人の意識をより高めていく施策を行うことで、よりグローバルな感覚に近づき、それを日本でもリーディングカンパニーとして牽引していきたいと思っています」

 RIWPでは、「一人ひとりが、敬意・尊重・理解を持って接し、お互いを認め合い責任を果たすことで、働きやすく、成長・成功できる職場環境とカルチャーを創り出す」と定義。そのために、①礼儀正しく・丁寧に、②公平に、③プロフェッショナルに、という3つを具体的なマインドセットの行動としてあげている。

 こういったRIWPの理念を企業カルチャーとして浸透させることで、「働きやすい職場」「個人の成長と能力の最大限発揮」「会社の発展と成長」「RIWPのリーディングカンパニー」というゴールの達成を目指している。

 「リーダーたちとは、リスペクトとは具体的にどんなことなのか、それは会社にとってなぜ必要なのか、企業カルチャーにしていくには何をすればいいのか、それをどうやってわかりやすく伝えていくかなど、さまざまな観点から議論を深めました。

 現場を統率するリーダーと一致した思いや方向性を持ち、それらの力を集結することで、会社全体に同じ温度感でパワフルに伝わるようにしたいと考えたのです。大事なのは、一人ひとりの意識や認識、言動を変えることであり、そのために『いつでも・どこでも・誰にでも』という3つをポイントにしています」

積極的な情報発信で手応えも

 RIWPの実現のために、①有志のRIWPコアメンバーによる啓発・促進活動、②それぞれの組織による取り組み、③会社/HRからの情報提供やトレーニングなどを含めた会社全体のアクティビティという3つからアプローチよるさまざまなアクションを実行。そのひとつとして行われているのが、毎月、一人のリーダーがRIWPについての考えや自組織の取り組みを分かち合うというものだ。

 「そのリーダーが考えるリスペクトとはどのようなものか、それを踏まえて各組織がどんなことに取り組んでいるかをテキスト原稿、またはビデオメッセージにまとめてもらい、全社へ配信しています。

 リスペクト自体、幅広い概念ですので、リーダーが考えるリスペクトもそれぞれで、その違いを尊重することも気づきや学びとなっています。ほかの組織での取り組みの共有も従業員に好評で、相乗効果が生まれています」

 2022年度からの準備期間を経て、本格スタートをしてからまだ1年あまりだが、鈴木さんは大きな手応えを感じているという。

 「RIWPプロジェクトの有志によるコアメンバーの思いや熱意は、かなり高いですね。年齢、性別、役職もバラバラですが、非常に積極的に熱心に活動を進めています。また全従業員へのアンケートでも、RIWPへの関心や共感の声が多数寄せられています」

 四半期に1回程度開催する全従業員対象の社内イベント「タウンホール」では、RIWPの活動や進捗についても発表。前回は、コアメンバーが出演したドラマ仕立てのビデオを作成し、リスペクトについて全社員が深く考える企画を実施した。

 「2023年11月に社内で開催した『ID&Eウィーク』でも、RIWPでケーススタディ形式のワークショップを実施しました。現場のリアルなケースをもとに、マネージャークラスが話し合うもので、参加したマネージャーたちからの満足度もとても高い結果となりました」

 ID&ウィークとは、社員全体の意識を広く底上げすることを目指し、さまざまなテーマに沿ったイベントを一週間に集中的に開催するもの。2023年11月はMWN(メドトロニック ウィメンズ ネットワーク)などの社員グループや人事部門が企画した、女性のキャリア、介護と仕事、LGBTQなど、10の異なるテーマに沿った11のイベントが開催された。

リスペクトという世界共通言語

 全従業員が一丸となり、RIWPという新たな企業カルチャーを浸透させようとする中、鈴木さんは「一人ひとりが主役となる」ことを心がけている。

 「例えば、コアメンバーの活動についても、私自身が前に出てプロジェクトを引っ張るよりも、メンバーが声や意見、アイディアをあげ、メンバーが主体で企画、運営、準備をし、私はサポートにまわることで、それぞれの才能や力をうまく発揮してもらいたいと思っています」

 このような日本法人の動きは、アメリカ本社からも注目を集めている。アメリカ本社とAPAC(アジアパシフィック)領域での、人事関連の優秀なアイデアや施策を対象とするアワードで日本法人のRIWPが表彰されるなど、ほかの国にも大きな影響を与えているようだ。

 「どんな国や社会でも、完璧なリスペクトができているわけではありません。できていると思っていても、できていなかったり、改善点があったりするものです。だからこそ、リスペクトという世界共通の言葉を使うことで、健全な社会を目指す動きがもっと広がっていったらいいですね」

 RIWPを手がけたことは、鈴木さん個人にとっても新たなやりがいになっている。

 「人事のリレーションという私の仕事は、問題が起きてからそれを解決するというものが中心です。しかし、今回のRIWPのようにプロアクティブ(先取り)に動くことで、問題自体が起きないような取り組みをしたり、問題が生じる前に解決することができるようになります。個人的に以前からそういうプロアクティブなことに力を入れたいと思っていたので、RIWPの取り組みにはとてもやりがいを感じています」

リスペクトのある豊かな人生を

 鈴木さんは、これまで人の健康にかかわる仕事でキャリアを積んできた。メドトロニックへは、「痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」というミッションと、命や健康にさらに深くかかわり、イノベーションで世の中に貢献していくという信念に強く共感して、2019年に入社。

 「人類がさらに健康で豊かな生活を送ることに貢献できる今の仕事ができることは、本当に幸せなことだと思っています。現在はエンプロイー&レイバー リレーションズというチームで、従業員と会社の関係をさらによく、円滑にして働きやすい職場をつくること、また従業員のパフォーマンスを向上するサポートを中心にした業務を行っています。従業員が問題に直面しても、その状況をチャンスやチャレンジ、改善と向上に変えていくことで、従業員や会社が世の中に貢献するのにもっと役立ちたいと思っています」

 今回、RIWPに深くコミットしたことで、鈴木さん自身も人生における「リスペクト」の重要性を改めて考えたという。

 「お互いの気持ちを尊重し、そのうえで自分として何ができるかを考える──。それは仕事だけでなく、プライベートを含めた人生全般で、とても大切なことです。私自身、プライベートでも夫とリスペクトについて話し合うことも増え、自然に今まで以上に夫婦関係がよくなった気がします」

 人生におけるあらゆる人間関係のベースとなるリスペクト。企業カルチャーとして一人ひとりのマインドセットが変わることは、会社の成長だけでなく、すべての従業員の人生そのものも豊かにしてくれそうだ。

PROFILE

鈴木 よしえ(すずき・よしえ)
1998年に米国大学を卒業後、ヘルスケア関連企業の管理職や通訳・翻訳業を経て、2019年4月日本メドトロニック入社。HR(人事)でエンプロイー&レイバー リレーションズ(Employee & Labor Relations、従業員と労使関係)を担当し、2022年5月からシニアマネジャーに就任し、「リスペクト イン ザ ワークプレイス」ではプロジェクトリーダーとして奮闘。休日は夫とイタリアンや和食などの食べ歩きやゴルフを楽しむ。

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