生命保険会社において、お客様と最前線で向き合う営業所。明治安田生命保険ではその責任者である営業所長への早期選抜登用をめざす新卒採用コース「総合職(全国型)career S」を2012年度に導入した。藤原ちひろさんは同コース採用の二期生として13年に入社。この4月から武蔵野支社府中中央営業所(東京都府中市)で二カ所目となる営業所長に着任した。近年、営業所長への女性の登用が増えている明治安田だが、いまだ約1000あるポストのなかで女性は100人程度にとどまる。女性営業所長のロールモデルの一人として注目される藤原さんに話を聞いた。
明治安田の総合職(全国型)の新卒採用は「career S」のほか、能力・適性に応じた分野でキャリアアップを目指す「career V」、数理業務のプロフェッショナルをめざす「アクチュアリー」、システムプロ人財やデータサイエンティストをめざす「システム・データサイエンティスト」の4コースあり、志望分野に合わせて迅速な能力向上を図るため、入社後の育成プログラムも各コースに合わせて整備してきた。テニス漬けの日々を過ごしたと学生時代を振り返る藤原さんだが、商学部ということもあり、同級生の多くはコンサルティング業界や金融業界を志望。自身も金融機関に目標を定め、就職活動に取り組んだ。
「総合職(全国型)career S」二期生として入社
明確なキャリアパスが入社の決め手に
「最初はcareer Sというコースについてあまり認識していなかったのですが、コースの説明を詳しく聞くうちに、入社後のキャリアアップの道筋をイメージできるようになり、一人ひとりに寄せる期待の大きさも実感しました」。こうした想いが決め手となり、明治安田への就職を決めた。当時、約50人のcareer S採用の同期のなかで女性はわずか6人だったが、学生時代の経験が社会でも通用するだろうかというわくわく感が大きく、不安は全くなかったという。
入社後の5年間は6年目での営業所長登用に向け設定された育成カリキュラムに沿って、さまざまな知識やスキルを習得していった。仕上げ期間となる4、5年目には営業所長代理として営業所長を補佐する役割を担い、営業所長が、いかに営業所の仲間から支えられているのかも認識できたと振り返る。「赴任前には、初日の朝礼で何をしゃべろうかと考えるようになっていた」というほど、育成カリキュラムのなかで自然と“所長になる”ことのマインドを醸成することができた。
この4月から府中中央営業所長に就任。MYリンクコーディネーターと共に業務に励む
営業所の立ち上げ担う
そして6年目となる18年4月、営業所長として赴任したのはつくば支社常総守谷営業所(茨城県守谷市)だった。05年のつくばエクスプレス(TX)の開業以降、人口が急増していた同エリアで新規拠点の立ち上げを担った。辞令を受けた際には、「無理に発展しなくても、現状維持ができればいい」と言われたという。「今振り返ると私にプレッシャーを与えないための配慮だったとわかりますが、当時は期待されていないのかと悔しさを感じ、周囲の想像を超えたいと逆にやる気に火が付きました」
所属する営業職員(MYリンクコーディネーター)は周辺の4つの営業所から5、6人ずつ移籍し、20人規模でスタートしたが、ライバル関係とも言える隣接拠点から集められたこともあり「前向きな気持ちで移ってきた人はほんの数人。大半の人は説得されて渋々来た感じでした」
初日は引っ越しの段ボールの書類を机の引き出しに入れたり、必要なものをホワイトボードに書き出して買い出しに行ったり、という状況のなか、最初の2日間で全員と面談。女性でしかも20代という娘のような年齢の営業所長に驚いていた営業職員も少なくなかったが、「前例のない、特殊なケースという状況が結構好きだった」という持ち前のポジティブさで乗り切り、「数カ月後には、みんなが前向きに活動するように変わっていました」
営業職員の気持ちを変えた要因の一つが「新しい営業所だからこそ、新しいことをやってみよう」という取り組みだった。新しい求人イベントをした際も営業所が一丸となって取り組んでくれたことで、一年目から営業職員の採用が順調に進んだという。採用ができているということは営業所が担当する顧客が増え、地域におけるプレゼンスが高まっているということ。「自分たちの営業所は採用ができる営業所だと思ってもらえるようにしたい」との狙いが達成できたことで、その後の好循環につながった。女性特有の悩みをストレートに話し合えることもプラスに作用したと振り返る。
在任中は、どんな形であれ、何を成し遂げたかが後から語れるようにやり切ることを自らのゴールに定め、業務に従事。守谷市内に転居し、地元に根差した活動にも力を入れた。自治体との関係を深めるため、連携協定の締結に向けた交渉にもいち早く着手したが、一日違いで同社内における「茨城県内初」を逃すという苦い経験もしたという。
明るく前向きな姿勢が、活気ある職場作りにつながる
営業所長経験生かして商品開発
21年に営業所長としての3年間の任期を終え、本社企画部に異動した。アサインされたのは業界初となる循環器病関連の新商品における企画・開発プロジェクト。加入すれば健康増進など様々な付帯サービスが受けられるというコンセプトで、医療機関やスタートアップ企業等、社内外のさまざまな相手を巻き込み、話を進める必要があった。ここで生きたのが営業所長時代の経験だ。「考えても分からないときはまず動いてみるという精神が培われていたことで、すぐに関係先との協力体制を築くことができました」
新商品「循環器病 対策Pro」は25年1月に販売を開始。プロジェクトが一段落したことで、4月に現職となる武蔵野支社 府中中央営業所の営業所長に就任した。「制度面や顧客対応などが目まぐるしく変わるなか、営業最前線を離れていた4年間のブランクを取り戻すには時間が必要だと感じていました。いまもまだ勉強中で、ひとつひとつ学んでいるところですが、営業所のみんなと日々、切磋琢磨しています」
私生活では企画部時代に趣味のテニスを通じて知り合った相手と結婚。新居も購入し、現在は自宅から車で通勤している。「全国転勤で知らない土地に着任することで、新しい発見や地域の方々との出会いがあります。毎日新鮮な気持ちで職務に邁進できることは、この仕事の魅力のひとつでもありますね」
後輩の視線受け止め、道を拓く
就職活動のなかで「career S」という採用コースに出会い、結婚などのライフイベントを経て、営業所長という最前線で活躍する藤原さんが今、心がけていることがある。「営業所長は楽しいよ」と胸を張って言える生活を公私にわたって送ることだ。「career Sには自らを成長させてくれるカリキュラムがあり、さまざまな経験を積み上げられるので、その環境に身を置くことで成長できるんです」。そのcareer S採用の先駆者として「私たちがどう生きているのか、どう生活しているのか。後輩たちには、常に見られていると感じています」。後に続く女性営業所長を増やすことも自らの役割だという想いをエネルギーに変えながら、仕事にも私生活にも全力で取り組んでいる。
仕事を理由に私生活でやりたかったことを諦めようとの考えがよぎっても、「ここで諦めたら、後輩にも悪い影響を与えてしまう」と踏みとどまるという。こうした藤原さんの想いを後押しするように休暇取得や柔軟な働き方の推進など会社の制度面、環境面の整備も充実。企画部時代には予選を含めて平日に開催されたテニスの全国大会にも、東京代表として出場。営業所長着任後も三連休に三日間の休暇を組み合わせて後輩のハワイでの結婚式に出席してきた。
プライベートではテニスの全国大会で見事優勝を飾った
自らの経験を踏まえ、就職活動に臨む学生に伝えたいのは「営業所長として企業経営者や地域の医師会、自治体などと直接話ができることで、通常では得られないような経験を若い年次で積むことができますし、この経験値は今の自分だけでなく社会人として後々の成長をも後押ししてくれると感じています」という自らの仕事の魅力。ジェンダー平等に向けた環境整備が途上の日本社会だが、「だからこそ同じような境遇の同性と出会う機会も多くあります」と後進の女性たちにエールを送る。
PROFILE
藤原 ちひろ(ふじわら・ちひろ)
2013年、明治安田生命保険相互会社に営業所長への早期登用をめざす「総合職(全国型)career S」の採用コースで入社。18年つくば支社常総守谷営業所の営業所長に就任。21年より企画部で商品開発に従事した後、25年4月から現職。
