近年、自然災害が頻発・激甚化する日本。被災者がいち早く日常生活を取り戻すために保険金の迅速な支払いは不可欠だ。東京海上日動は災害対応の工程に新システムを導入することで省力化を実現。社員は保険加入者対応に専念し、「安心」を届けている。同社損害サービス業務部の佐藤楓華氏は災害現場の最前線に飛び込み、デジタル支援のチームリーダーとして業務システムの構築を先頭で引っ張る。
デジタル化で迅速な保険対応
事務作業の一部をデジタル化したことで、事故受け付けから保険金支払いまでの期間が以前よりも短縮したという
2022年3月。いつもは東京・大手町の本社オフィスにいる佐藤さんの姿は仙台にあった。同月に起きた福島県沖地震で大きな被害が出た地域の対応のため、東京海上日動の災害対策チームの第1陣として地震発生2日後に現地入りしていたのだ。
1分、いや1秒でも早く、被災したお客様の元へ――。佐藤さんは宿探しもそこそこに仙台に向かう飛行機に飛び乗っていた。
到着後は拠点となる仙台のビル内に現地対策室を立ち上げ、損害査定のオペレーションの構築や社員の配置を調整した。全国から集まった応援社員は数十人規模。一つのビルには収まりきらず、東北地方の各営業所をサテライトオフィスとして活用した。社員の中には自身も被災している人もいたが、被災者に迅速に保険金を届けるため奔走した。
台風や地震、水害など近年は大規模な自然災害が頻発している。23年も線状降水帯の発生で九州地方や秋田県の広範囲で河川の氾濫や土砂崩れなどが起き、甚大な被害をもたらした。
自然災害で家屋等が水没したり損傷を受けたりしたときに頼りになるのが損害保険だ。保険金を迅速に受け取ることで生活再建に向けた大きな一歩になる。
佐藤さんは、損害サービス業務部で災害対応における内部事務の自動化の開発に従事。事故受け付けから保険金支払いまでのフローに潜む課題を洗い出し、必要に応じてAI(人工知能)を駆使するなどデジタル化することで省力化を実現した。社員は保険金支払いの判断や電話での顧客対応等どうしても人手が必要な業務に専念できるようになり、保険金支払いを短縮化するなど万全な災害対応の構築を目指す。
原点は「困っている人の役に」
システムを構築する上で常に意識しているのは「お客様目線」
15年にエリアコースとして入社した佐藤さんは損害サービス業務を希望し、関西損害サービス第一部に配属された。普段は大阪のオフィスで財産保険や賠償責任保険の事故対応を担当。いざ大規模災害が起きれば誰よりも早く現場に入り、災害対策チームの一員として経験を積んできた。
佐藤さんが損保の仕事を志した原点は大学1年生のときに起きた東日本大震災だ。テレビの画面越しから東北の被災地の窮状を見て「将来は何らかの形で事故や災害で困っている人たちの役に立ちたい」。そう思い立った。
やがて3年生になり就職活動を始める中で、損保会社に就職した大学の先輩から保険の重要性や仕事のやりがいを聞き、損保業界への就職を決めた。
感謝の声聞き、初心に返る
チームのメンバーからは「リーダーとして各自の意見を尊重しつつチームの答えを導いてくれる存在」と人望が厚い
今でも印象に残っているのは自然災害が集中した18年だ。6月半ばに大阪北部地震が発生。大阪にいた当時入社4年目の佐藤さんは、動いている電車やバスを乗り継いで災害対策室に向かった。
その対応のめどが立ちそうなころ、今度は台風7号によって西日本を中心に大規模な豪雨被害が起き、佐藤さんは自身の拠点である大阪の対策室で対応に当たった。
それからひと月たち、ようやく西日本豪雨の対応が収まりつつあった8月に台風21号が日本列島に上陸。今度は近畿地方が甚大な風水害に見舞われた。幸い佐藤さんの自宅はベランダのトタンが飛ばされた程度で済み、すぐに災害対策室に入った。
目の回るような忙しさの5カ月で、ひと息つく間もなかった。だが「被災された人に迅速に安心と安全をお届けするという目標に向かって社内で一体感を得られたことは貴重な経験だった」と振り返る。
「保険に入っていて本当に助かった。ありがとう」。災害現場で被災した保険加入者から感謝の声をかけられたときは「こういう困っている人のために我々は頑張らなければいけないんだ」と初心に立ち返った。
JOBリクに応募、幅広い経験積む
趣味はストリートダンスと旅行。昨年のクリスマスは英国で過ごした
18年の災害対応を経て自身のスキル不足を痛感するとともに、社内には災害対応を多く経験している先輩社員が多数いることも知った。こうしたスペシャリストに少しでも近づくには、全店の施策をつかさどる東京の損害サービス業務部で幅広い経験を積み、専門性を高めたいと考えるようになった。
そうした矢先、同社の社員キャリア形成を支援するJOBリクエスト制度(JOBリク)を知った。JOBリクは主体的にキャリアビジョンを描く社員に、挑戦する機会を提供する社内制度だ。募集職種の中に損害サービス業務部があるのが目に留まり「やってみよう」と手を挙げ、21年に異動が決まった。
損害サービス業務部で磨かれたのは当事者意識。何か問題が起きても「自分自身が解決し、必ずやり遂げる」という強い気持ちで業務に当たる同僚の姿を目の当たりにし、「いずれ現場に戻ったときは自分の頭で考え、動けるようになりたい」と話す。
デジタル支援チームを牽引してきた佐藤さん。将来目指すのは、やはり災害対応のスペシャリストだ。「これまでの災害対応での反省点や学んだことを忘れずにインプットし、現場でも生かせるようにしたい」と力を込める。
保険に入っていて助かった――。災害現場で顧客からかけられた言葉を胸に、佐藤さんは保険加入者の「安心」のために奔走する。
PROFILE
佐藤 楓華(さとう・ふうか)
2015年関西損害サービス第一部火災新種損害サービス第一課に入社。21年JOBリクエストを活用し損害サービス業務部業務グループ(現火新グループ)に異動。24年4月から関西損害サービス第二部火災新種損害サービス課。
