












八重洲地下街経由で東京駅直結の大規模複合施設「トフロム八重洲」。「個性がつながり、新しきが生まれる」をコンセプトに、東京発祥の飲食店を中心に個性的な 68※の店舗が集結する。江戸時代には武家屋敷が建ち並び街区も大きかった丸の内側とは異なり、町人・商人・職人が集まった八重洲側は街区が小さくたくさんの路地がまちをにぎわせた。それゆえに様々な文化が混在し、多様性と界隈性が育まれてきた歴史がある。「トフロム八重洲」は、その路地文化を現代的に再構築し、歴史ある老舗から新進気鋭の話題店までが共存する空間として、新たなにぎわいを生み出している。
英語の「TO」と「FROM」を組み合わせた「TOFROM(トフロム)」という名称には、多様な人や時間の流れをつなぎ、日本と世界、東京と地方といった様々な場をつなぐ、都市の交流拠点にしたいという思いが込められているという。
東京の〝歴史〟と〝新しさ〟が共存する空間の中で、ここでしか体験できない「東京ならでは」の味を楽しみながら、伝統と先端の融合が織りなす八重洲エリアの新たな魅力を、ぜひ体感してみてはいかがだろうか?
「八重洲の魅力、それは丸の内とは真逆っていうところでしょうね」と話すのは、江戸時代から続く老舗割烹「嶋村」の加藤一男氏だ。皇居のお膝元であり官庁と大企業が建ち並ぶ丸の内側に対して、徳川家康の時代から商人のまちとして発展してきた八重洲側は、そもそもまちの歴史や成り立ちが違うと加藤氏は言う。
「かつて日本橋魚河岸があった八重洲側は、江戸の食文化を支える台所として発展してきたまちです。当時の魚河岸は1日に千両ものお金が動くほど栄えていたことから、〝日千両(ひせんりょう)〟という言葉があったほどです。そんな活気が今も八重洲のまちには残っています」
一方、戦後まもなく八重洲エリアで創業し、70年以上の歴史を持つ中華料理の老舗「泰興楼」の于延光氏も、「丸の内のこぎれいさとは違う、どこか下町っぽい雰囲気が八重洲の魅力」だと話す。
「僕が店を継いだ28年前は、八重洲には大きなビルもなくて、路地裏に小さな居酒屋や飲食店が集まっていました。東京駅のすぐ前なのにどこか下町の風情が残っていて、料理人が白衣やコックコートのままで普通に歩いていても様になるまちでしたね」(于氏)
しかし、ビジネスパーソンが主要な客だった八重洲には週末になると客足が減るという悩みがあった。そこで、町内会長としてまちづくりにも関わっていた加藤氏は、創業以来のメニューであるうずら椀や蒸し玉子などをコースに仕立てた土曜限定の「幕末会席」を考案。八重洲の新たな名物として提供するなど、率先して地域の活性化に取り組んできた。
「この八重洲一丁目の再開発の話が持ち上がったときも、私が再開発準備組合の理事長としてまとめ役になり、青年部などにも声をかけて進めてきました」(加藤氏)
于氏もまた、八重洲のまちを変えていく必要性を感じていた。
「八重洲のイメージをしっかりつくり上げなければならない、と青年部の仲間ともよく話していました。『トフロム八重洲』に入る『TaiKouRou TOKYO』では、看板メニューであるジャンボ餃子などお客様に愛されてきたメニューは変えることなく、インテリアなどで新たなイメージを打ち出していきたいですね」(于氏)
この12月で80歳になる加藤氏もまた、「やれることはやったつもりです。店は息子と娘に任せますが、これからは代々のお客様だけでなく新しい世代のお客様も大切にしながら、『嶋村』の味を継承していってほしいですね」と話す。装いも新たに「トフロム八重洲」で再スタートを切る2つの老舗は、これからどんな物語を紡いでいくのだろうか。
