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ニッポンイノベーション ~10年後の産業を考える、ものづくり未来会議~ 大阪 7/19金

世界で戦える力を甦らせるため 日本の製造業が挑むべき変革とは?

国際競争力と活力のある「ものづくり企業」に進化するため、日本の製造業は何に、どう挑むべきか? そのヒントを4人の識者が提示するリアルイベント「ニッポンイノベーション ~10年後の産業を考える、ものづくり未来会議~大阪」(主催:日経ものづくり、協賛:キャディ)が2024年7月19日に開催された。今後10年を見据え、どのような成長戦略を描き、いかにテクノロジーを活用していくべきかなど、イベントで語られた内容の一部を紹介する。

レビューする人間が多いほど新規事業は前に進まなくなる

イベントの最初に登壇したのは、村田製作所 IoT事業推進部 プロジェクトマネージャの津守宏晃氏。

津守 宏晃氏

村田製作所
IoT事業推進部
プロジェクトマネージャ

津守 宏晃

「『IoTデータ新事業』で得た学び 事業アイデア・組織・人材・市場の開拓のポイント」と題し、自らが手掛ける新規事業の立ち上げから事業化までの経験を踏まえて、ものづくり企業が新規事業を成功させるためのヒントを紹介した。

コンデンサをはじめとする電子部品の製造で知られる村田製作所だが、2006年から新規事業の開拓にも積極的に取り組んでいる。津守氏はその“担い手”の一人として、インドネシアで道路の交通量データを提供する「トラフィックカウンタシステム」のプロジェクトを担当した。

「投資コストを抑えるため、通信やIoTなどのインフラではなく、情報取得のためプラットフォームを整備し、データを安く販売するビジネスに特化しています」と津守氏は説明した。

「ものづくりの会社がデータを売るのか?」と、社内から疑問の声も上がったが、現社長など経営陣からの理解を取り付け、雑音を排除してもらいながら事業化を進めていったという。

津守氏は、「社内の意見は一人ひとり異なるので、レビューする人が多いほど新規事業は前に進まなくなります。いかに会社の管理システムから遠ざけ、自由に動ける環境を構築するかが大事です。また、経営陣は一度任せたら口を出さず、担当者が『もう無理だ』と音を上げるまでやらせること。担当者も、とことんやり遂げることが肝心なのです」とアドバイスした。

自社の強みを把握し強くするために集中投資を

「製造DXを実現するHILLTOPが描く“ものづくりの未来”」と題する講演を行ったのは、京都府のアルミ切削加工部品メーカー、HILLTOP 代表取締役社長の山本勇輝氏だ。

山本 勇輝氏

HILLTOP
代表取締役社長

山本 勇輝

早くからものづくり現場のDXを進めてきた同社は、部品ごとに最適な加工技術をプログラミングすれば、それに基づいて切削加工機が自動で加工する生産システムを独自に開発した。

「熟練職人の膨大な切削技術をリスト化しており、その中から部品ごとに最適な技術を当てはめるだけで機械が自動的に加工します。機械は24時間稼働するので、多品種少量の部品を短期間で納入できます」と山本氏。

HILLTOPでは、この生産システムの他、顧客管理などバリューチェーンを形成するシステムのすべてを自前で開発していた。しかし、2023年に方針を大転換。コアコンピタンスである生産システムの開発は自前で行うが、他のシステムについては、SaaSを積極的に採り入れることにした。

「システムの陳腐化を防ぐと同時に、生産システムの開発に投資を集中するのが狙いです」と山本氏は理由を明かした。

山本氏は、日本の製造業が海外メーカーとの競争に勝ち抜いていくためには、「自社の強みをしっかりと把握し、磨き上げていくしかありません」と提言。

「そのためには、強みと関わりのない部分は、外部のツールやパートナーから支援を積極的に受け入れる柔軟性が求められるのではないでしょうか」と語った。

過去の経験を資産化して製造業の付加価値を高める

続いてキャディ 代表取締役の加藤勇志郎氏が登壇。「10年先の未来をつくる いま求められる製造業DXとは?」と題する講演を行った。

加藤 勇志郎氏

キャディ
代表取締役

加藤 勇志郎

加藤氏はまず、日本の製造業GDPが過去20年間で約6%のマイナスとなった事実を紹介。同じ期間に中国の製造業GDPが約10倍、米国とドイツがそれぞれ約1.5倍、約2倍拡大したのと比較し、「各国の人口動態は大きな変化がないのに、日本だけがマイナスになっていることを考えると、一人当たりの付加価値や生産性をいかに上げるかが、日本の製造業を復活させる重要なポイントになると考えられます」と指摘した。

付加価値を向上させる方法として加藤氏が提案したのが、これまでの発展とともに、国内製造業に膨大に蓄積されている経験やノウハウの資産化である。

これを実現する基盤として、キャディが開発したのが、製造業AIデータプラットフォームである「CADDi Drawer」だ。

「CADDi Drawer」は、社内に蓄積されている報告書や実績データ、製造現場でのメモ書きなどの膨大なデータを図面にひも付けて保持することが可能だ。それらをAIの力を使って活用していくことで、眠れるデータを資産価値の高いものへと変える。「データがひも付けて管理されるので、過去に描いた図面や、サプライヤーからの見積書、不良品への対応記録などが瞬時に呼び出せるようになります。業務の効率化だけでなく、設計品質の改善や、調達コストの削減、サプライチェーンの最適化など、付加価値向上につながる様々な効果が得られます」と加藤氏は説明した。

EVシフトとともに変化した世界のものづくり

イベントを締めくくったのは、日産自動車の元副会長で、INCJ(旧 産業革新機構)代表取締役会長の志賀俊之氏である。

志賀 俊之氏

INCJ(旧 産業革新機構)
代表取締役会長

志賀 俊之

「ものづくりが変わる。今、私たちが取り組むべきこと。」と題し、自動車業界をはじめとする日本の製造業の課題と、その打開策について語った。

日本の自動車業界が、EVシフトで欧米や中国に大きく遅れていることはよく知られている。志賀氏は、「しっかり追い付かないと、世界で起こっているものづくりの変化に取り残されてしまいます」と警鐘を鳴らした。

なぜならEVシフトは、単なる動力源の変化にとどまらず、クルマの作り方そのものを大きく変えているからだ。

具体例として志賀氏が挙げたのが、軽量化技術の開発競争である。「約300kgもの重いバッテリーを搭載するEVは、少しでも車体を軽くする必要がある。海外メーカーは、アルミやカーボンなどを使った軽量化でしのぎを削っていますが、残念ながら日本メーカーは追い付けていない。車載ソフトウェアをリモートでアップデートするSoftware Defined Vehicleの領域でも周回遅れです」と述べ、日本メーカーの巻き返しに期待した。

志賀氏は日本の製造業の弱みとして、人材の多様性の乏しさからイノベーションが起こりにくいこと、いまだ自前主義が強くオープンイノベーションが進まないこと、アントレプレナーシップを持つ人材が不足していることなどを指摘。これらの変革によって巻き返しを図ることを期待し、講演を終えた。