1人目の講演者は、ダイキン工業 常務執行役員 空調商品開発(アプライド・ソリューション、低温含む)担当 テクノロジー・イノベーションセンター長の米田裕二氏。
ダイキン工業
常務執行役員
空調商品開発(アプライド・ソリューション、低温含む)担当
テクノロジー・イノベーションセンター長
米田 裕二氏
「ダイキンの技術開発におけるDX取り組み、デジタル/AI活用の方向性」と題し、ハードウェアであるエアコンの開発・製造・販売に特化してきたダイキン工業が、デジタルやソフトウェアをいかにものづくりに採り入れようとしているのかについてプレゼンした。
米田氏はまず、「空調しか作ってこなかったダイキンが、DXをすべて自前で行うのには限界がある」と指摘。とはいえ、厳しいグローバル競争を勝ち抜くためには、変化に柔軟に対応する力が必要であり、テクノロジー企業とのコラボレーションなどを通じてデジタル化を進めていると説明した。
ダイキン工業が、バリューチェーンの中でとくにDXに注力しているのが、開発とアフターサービスである。
製品開発では生成AIを活用して資料レビューや図面編集、ソフトウェア開発などの取り組みを始めており、アフターサービスでは、エアコンに搭載したIoTからのデータを基に、故障診断サービスなどを行っている。米田氏は、「バリューチェーンの上流に当たる開発、下流のアフターサービスというスマイルカーブの両端を高度化することで、製品・サービスの競争力を高めていきたい」と語った。
続いて、SUBARU コストイノベーション推進部 執行役員・CCIO(最高コスト改革責任者)の河合功介氏と、ものづくり革新のためのソリューションを提供するキャディ 共同創業者/最高技術責任者CTOの小橋昭文氏が登壇。「非連続でハイスピードな変革への挑戦を語る」と題する特別対談を行った。
SUBARU
コストイノベーション推進部 執行役員・CCIO(最高コスト改革責任者)
河合 功介氏
DXとは、単なるデジタルツールの活用ではなく、変化に対応するため、ものづくりのプロセスや、企業・組織のあり方までも根底から覆す大変革と河合氏は言及。「自動車業界は新興EVメーカーの台頭、カーボンニュートラルへの対応など激しい競争環境の変化にさらされている一方で短期的には変化には気付きにくい。その変化をいかに感じ取り、自分たちの意思で変わろうとするかが重要です」と指摘した。
また、変革を進める上での要点として「過去の成功体験にとらわれずにバイアスを取り除くこと、成否ではなく学びを得たことを評価すること、変革を進めるチームには従来の仕事を並行してやらせないことが重要です」とアドバイスした。
さらにDXを進める上での注意点として、「現場は、今までのやり方を変えることに強い抵抗感があるもの。新しいシステムなどを導入する際には、使ってもらう側と使う側との間で十分なコンセンサスを図ることが重要です」と語った。
一方、キャディの小橋氏は、製造業DXにおける課題の一つとして、データ漏洩防止などセキュリティについて言及した。
小橋氏は、「リスクを完全にゼロにすることはできません。物理の世界と同じように、ITの世界でもビジネスインパクトを鑑みて、どのリスクを最小化していくのかを選択していくことが大事。そして、それをいかにゼロに近付けられるような仕組みを構築することです。幸い、日本の製造業の多くは品質保証のためのISO認証取得などで、仕組みを確立するということをやってきているんです。その経験を生かし、 セキュリティ確保のための意思決定と仕組みを構築することをお勧めします」と語った。
特別対談の後、小橋氏は「テクノロジーで切り拓く 製造業の課題と未来」をテーマに講演を行った。
キャディ
共同創業者/最高技術責任者 CTO
小橋 昭文氏
小橋氏は、中国や米国、ドイツなどの製造業GDPが過去20年間で大きく拡大したのに対し、日本はマイナス6%に縮小していると指摘。トレンドを反転させるには、製造業従事者1人当たりの付加価値額を上げる必要があり、そのための製造業DX推進を提唱した。
具体的なアプローチの一つとして紹介したのが、キャディの製造業AIデータプラットフォーム「CADDi Drawer」を利用した開発・設計・製造に関する膨大な知見の“資産化”だ。
小橋氏は、「日本の製造業には、数十年にわたって蓄積された膨大な知見やノウハウがありますが、それが“資産”として生かされず、同じ作業を何度も繰り返すという非効率の原因となっています。『CADDi Drawer』を使って過去のものづくりに関する文書や図面、写真などのデータを蓄積し、検索性を高めれば、過去の知見がすぐ生かせるようになるので、生産性が向上するはずです」と語った。
さらに小橋氏は、製造業DXを成功させるためのポイントとして、「より多くの成功体験を得るためにトライ&エラーを重ね続けるスピード感、経営者によるトップダウン、経営の意思を現場に伝え変革をドライブさせる推進者の登用」の3つを挙げた。
最後に登壇したのは、東洋紡 執行役員 CDO デジタル戦略総括部長の矢吹哲朗氏である。「企業改革への挑戦 ~東洋紡デジタル部門の取組み~」と題し、同社が推進している製造業DXの途中経過と現時点での成果について発表した。
東洋紡
執行役員 CDO
デジタル戦略総括部長
矢吹 哲朗氏
矢吹氏は2022年にカネカから転職。同じ年に創業140周年を迎え、「持続可能な成長(サステナブル・グロース)」への転換を30年までの目標に掲げた東洋紡のDX推進を統括することになった。
「グループ内にデジタル部門がなかったので、子会社だった情報システム会社を本体に吸収して部門を創設しました。従来はシステムの運用や保守・メンテナンスが主な業務でしたが、大掛かりな組織変更を行い、各事業部門に伴走しながらDXを支援する『事業協創部』を部門内に設けました」と矢吹氏。
スピード感を持って各事業のデジタル変革を実現させるため、まずは支援体制の再構築から始めたのだ。
さらに、DX人材の採用および育成にも力を入れている。
「事業DXプロジェクトを率いるフロントリーダーや、データサイエンティストなど、必要とする役割を明確化し、それに当てはまる人材を計画的に採用・育成できる仕組みを構築しました。成果にこだわったプロジェクト運営によって、全社の成長に貢献していきたい」と矢吹氏。
熱のこもったプレゼンや対談に、会場からは惜しみない拍手が送られ、盛況のうちにイベントは終了した。

