生成AI(人工知能)のビジネス実装が具体化する中、次の大きな潮流として語られるのが「エンタープライズAI」である。すなわち、普通の企業が自社ビジネスで最も重要なプロセスにAI技術を適用することで、より大きな生産性の向上を実現し、企業にとって真の競争力強化が可能となる。その実現に向け、自社内における取り組みから始めたデル・テクノロジーズは、そこで蓄えた知見やノウハウを「Dell AI Factory with NVIDIA」というソリューションにまとめて顧客に還元する。
カスタマーゼロを起点に
AI導入時のポイントを確立
デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部
AIプラットフォーム ソリューションズ本部
シニアシステムエンジニア
AI Specialist / CTO Ambassador
増月 孝信 氏
デル・テクノクロジーズの増月孝信氏によると、AI市場には従来型のAI市場、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)トレーニング市場、そしてエンタープライズAI市場という大きく3つの領域がある。ここ数年で盛り上がりを見せているのは、生成AIが象徴するLLMトレーニング市場である。さらに最近はLLMモデルや技術の精度が向上したことを背景に、「組織内の主要プロセスにAIを活用してビジネス課題の解決を図る『エンタープライズAI』市場に、大手企業が積極的に取り組み始めている」(増月氏)と指摘する。
デル・テクノロジーズは、自らが最初の顧客となる「カスタマーゼロ」と位置付けてAIの導入を進めてきた。顧客が直面するであろう問題に率先して取り組み、そこで得られた成果を再現可能なプロセスやモデルとして定義し顧客に提供する。
増月氏によると、AI戦略には大きく2つの部分があるという。「1つ目は何をしなければいけないかを特定するWhatで、2つ目はそれをどう実行するかを決定するHowです。1つ目はAIを採用する前の段階に自社の強みを経営陣からのトップダウンで判断し、2つ目はそれをどのようにAIで実現するかというアプローチ方法をボトムアップで絞っていきます」(増月氏)。そして、数多くのAIユースケースを検証したところ、課題解決に必要なコア機能は、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)ベースのチャットボット、コンテンツ生成、コード生成、データ管理、データ分析の大きく5つに集約できると分析できた。
続く重要なポイントとして「アクセス可能な最新のデータ基盤を確保すること」と強調した。「ビジネスを定義する“秘伝のタレ”ともいえる、社内で専有する機密情報にアクセスできなければ、AIを差別化要因として機能させることはできません。また、以前はこれらのプラットフォームを自力で構築するしか方法がありませんでしたが、既製のオプションが堅牢になり簡単に入手できるようになったことで、構築・購入・構成のいずれかで確立可能になってきました」(増月氏)。
AIユースケースの導入を全方位で支援する
「Dell AI Factory with NVIDIA」
社内外で様々なAIツールを実装してきたデル・テクノロジーズでは、その過程でいくつかの気づきや学びがあったと増月氏は語る。「テクノロジーだけでなく、ビジネスとのバランスも踏まえてプロジェクトを評価する必要があります。明確なROI(Return on Investment:投資収益率)指標を使い、リソースに優先順位をつけるプロセスも確立させています。プロジェクトは様々でも、基本的なパターンは変わりません。パターンを絞り込み、必要なコア機能は何かを把握するのが重要なポイントになります」。
加えて、テクノロジーの進化に対応できるように、2年などの一定周期でプラットフォームを刷新するという教訓も得た。エンタープライズAIのプロジェクトが批判の対象になった際のために、支援できるエコシステムパートナーの必要性も実感している。
そうした自社の取り組みを、あらゆる規模の組織のAIイノベーションを加速させる独自手法として落とし込んだのが「Dell AI Factory with NVIDIA」である。顧客におけるAIの導入をワンストップでサポートしているのが特徴だ。
Dell AI Factory with NVIDIAでは、導入企業におけるユースケースの定義や、その実現に向けたデータアセスメントに加え、実装するためのインフラストラクチャと、デル・テクノロジーズが持つパートナー網によってデリバリーする仕組みも備えている。「Dell AI Factory with NVIDIAは全プロセスを通じてサイバーセキュリティとレジリエンス、エネルギー効率を念頭に置いたサステナビリティーを実現するよう設計されています」(増月氏)。
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データサイエンティストを支援する
基盤をワンストップで提供
Dell AI Factory with NVIDIAにおいて、優先度の高いユースケースを決めた後に、問題となるのがデータの扱いである。AI導入を成功させるための原動力となるデータだが、組織で最も貴重なデータはオンプレミス、クラウド、エッジに分散しているケースが多く、一元化には多大なコストと労力がかかる。
そこでデル・テクノロジーズが提供するのがデータプラットフォーム「Dell Data Lakehouse」である。データレイクの拡張性やコスト効率と、データウエアハウス(DWH)のパフォーマンスや制御を組み合わせたもので、データソースや場所に関係なくデータを照会できるようになる。データアクセスの民主化という考えで、業界初のエンドツーエンドのエンタープライズAIソリューションを実現している。「データサイエンティストたちが、より効率的かつ合理的なプロセスでデータ分析ツールを使用できるようになります」(増月氏)。
また、Dell AI Factory with NVIDIAに関しては、NVIDIAとのパートナーシップを結び、積極的な連携を進めている。3月半ばに米国で開催したNVIDIA GTCでは「Dell Data Lakehouse」と「NVIDIA AI Data Platform」との連携が発表され、構造化/非構造化データへのセルフサービスアクセスによって、エージェントAIやその他のAIアプリを安全に導入できるデータマネジメント統合ソリューション「Dell AI Data Platform with NVIDIA」が発表された。Dell AI Factory with NVIDIAの各領域におけるエージェントAI機能のツールキット導入もアナウンスしており、今後も様々な領域でのサービス展開が期待される。
「Dell AI Factory with NVIDIAは、カスタマーゼロから始まり、論理的かつ効率的なAI導入を可能にする手法になります。自社での実践に基づいて、入口から出口までワンストップで対応できるのが大きな特徴です。ソリューション展開をできるだけシンプルにするため、テンプレート化した『Tシャツモデル』もあります。規模や予算に合わせて選択できるため、導入ハードルを下げられます」(増月氏)。
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デル・テクノロジーズでは顧客のAI導入を成功させるため、ビジネスとテクノロジーのニーズを調整できるように調整するプロフェッショナルサービスを用意している。ファシリテーターによる半日間のワークショップも無料で開催しており、企業の現状から理想像に向けた段階的なロードマップの策定も支援している。
ユースケース実現の戦略、必要なデータの準備、運用可能なプラットフォームの実現、運用の改善や拡張、といった生成AIのあらゆる段階を支援する広範なポートフォリオで構成するDell AI Factory with NVIDIAは、ビジネス現場に大きなインパクトを与えそうだ。

