ITインフラSummit 2025〜複合AIシステム時代の、ITインフラの条件〜

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歴史をたどり俯瞰するAIの現在地
クラウド環境整備もAIが実行する時代に

コンピューター黎明期からの夢であり、現在まで進歩を続けてきたAI。その全容は歴史を振り返ることでより深く理解できるようになるだろう。約70年前の誕生から昨年登場したAIエージェントまで、その歩みを振り返るとともに、最新のAIユースケースとして、クラウド環境整備におけるAI活用についても取り上げる。さらに、アバナードが提供するAIソリューションの提供価値についても具体的に紹介する。

奥田 哲也氏

幾度もの技術革新を経て
進歩し続けてきたAI

2022年に登場したChatGPTによって、一気に注目が集まった生成AI。その進化は止まることなく、最近は「AIエージェント」なども話題になっている。だが、AIは最近登場したばかりのテクノロジーではない。既に約70年にわたる歴史を持つものなのだ。これについて、アバナードの奥田 哲也氏は次のように話す。

「コンピューターが発明された直後の1950年代から、人と同じことができる『人工知能』をつくることが多くの人々の夢になりました。当初は人が手作業でプログラムを書いてつくる試みがなされましたが、これはすぐに行き詰まりました。その後つくられたのが、人間の脳の構造を模倣した『ニューラルネットワーク』です」

それまでのコンピューターとの比較でニューラルネットワークが斬新だったのは、問題と正解の組を大量に与えて「学習」させる点である。当初は小規模な学習しか行えなかったが、その後、様々な手法が開発されて複雑な学習も可能になった。これが現在は「ディープラーニング」と呼ばれている。「最近話題になっている生成AIは、基本的にすべてこの技術を利用したものです」と奥田氏は言う。

ディープラーニングの登場により、大きなテーマの1つとなったのが自動翻訳である。その方法として考案されたのが、言葉の意味を数百次元の「ベクトル(数字)」で置き換えるアプローチだ。単語を一度数字に置き換えることで、別の言語に翻訳できるようになると考えた。

「ここで人々は、『言葉の意味は計算で求められる』ことに気付きます。これを発展させて、質問の文章から回答の文章を計算によって求めようというのが、生成AIの始まりです」(奥田氏)。そこからさらに、質問内容の重要な部分を生成AIに伝える『アテンション』という技術が考案された。そのような技術革新を経て、ChatGPTなどが誕生していったという。

ただし、生成AIの学習には膨大なコストがかかるため、常に最新の情報を学習させ続けることは簡単ではない。そこで考え出されたのが拡張検索生成(RAG)だ。さらに2024年には、単に質問に答えるだけでなく、その先の仕事の段取りなどを自ら考え、実行するAIエージェントも登場(図1)。これがAIの現在地といえるだろう。

図1 注目を集めている「AIエージェント」

図1 注目を集めている「AIエージェント」

人が入力した質問に対して回答するだけではなく、依頼された作業の段取りを自ら考えて様々な手段で実行する

クラウド環境整備を主目的とした
AIエージェントを開発中

アバナード自身もAIエージェントの開発を進めている。それが「ALPHA」だ。主な用途に想定しているのが、クラウドサービスの運用支援。Microsoft Azureやアマゾン ウェブ サービス(AWS)を使う際に必要になるインフラの構築を、人に替わって実行したりする。

「例えば、『クラウドを使い始めたい』ということを、生成AIのプロンプトと同じように入力すれば、具体的な手順や進め方を提案してくれます」と奥田氏は紹介する。必要に応じて、マイクロソフトやAWSとの実際の契約手続きまで実行させることも可能だ。

また、既に立ち上げ済みのクラウド環境に機能を追加したい場合も、ALPHAに相談すれば代行してくれる。「ほかの部署が利用しているインスタンスと同じ機能を実装したい」といった場合には、既存インスタンスの仕様書を事前に与えておくことで、仕様に沿ったアドバイスをもらえるという。

さらに、メンテナンスを任せることも可能だ。例えば、人がわざわざ指示を出さなくても、必要なセキュリティーのアップグレードを行ったり、構成やキャパシティーを最適化してコストダウンを図ったりすることが可能なのだという。「もちろん、勝手に実行してしまうといけない内容は、ALPHAから提案をもらう形にして、承認制にすることもできます」と奥田氏は付け加える。

ところでアバナードは、このようなAIエージェントの開発・提供によって顧客にどのような価値を提供しようとしているのか。狙いは大きく3つあるという。

1つ目は、コストとセキュリティーリスクの低減である。クラウドサービスの利用時に課題になりがちなのが、社内の各部署がそれぞれにサービスを契約してしまい、シャドーIT化して管理しきれなくなることだ。これにより、クラウド利用コストやセキュリティーリスクの増大といった事態が発生している。「組織のクラウド立ち上げの窓口をALPHAに一本化すれば、このような問題を解決できます」と奥田氏は語る。

2つ目は、運用の標準化と自動化対応だ。AIエージェントで運用管理を共通化・自動化できれば、運用保守工数の削減はもちろん、運用ミスの低減や運用最適化を図ることも容易になる。

「そして3つ目は、当社自身のサービスの改善と質の向上です。これまで、社内で開発した製品のデモを行う際には、その都度、検証環境を構築する必要がありました。これをAIエージェントに任せることでスピード感を高められます。新たな製品・サービスをより早くお客様にお届けできるようになり、アバナードのビジネス価値を増大できると考えています」(奥田氏)

生成AIもツールにすぎない。
重要なのは「どう使うか」

アバナードは、Microsoft Azureをはじめとするクラウドインフラ運用に関する豊富な経験と知見を有している。また、高度なAI知識を有する専門家も多く在籍しており、それらの強み・ケイパビリティーがALPHAの開発に生かされているという。

ALPHAは今後、6つのアシストサービスを段階的に提供していく予定だ。具体的には、ここまで紹介したような「運用アシスト」「導入・利用アシスト」が第1段階。その後、「デモ環境利用アシスト」機能を提供したのち、「設計・移行アシスト」「基盤最適化アシスト」「基盤自立運転化アシスト」などの高度な自動化を可能にする機能も順次提供していく計画である。

「最近は『生成AIやAIエージェントによって仕事が奪われるのではないか』と心配されている方もいるようです。しかし、そろばんがコンピューターに置き換わったことで、仕事は減ったでしょうか。生成AIも結局は便利なツールにすぎず、重要なのはそれをどう使うかということなのです」と奥田氏は強調する。

AIを便利に使いこなし、よりよい仕事をしていく。過去の歴史と最新の技術動向を俯瞰して見つめながら、そのための最適な方法を考えることが、私たちに求められている。

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