JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が公開した「企業IT動向調査報告書2024」によれば、企業のデジタル戦略における優先課題の最上位が「セキュリティ対策・管理の強化」である。急増するランサムウエア攻撃などによる被害拡大を目の当たりにすれば、必然ともいうべき結果だろう。
これに続くのは、「ビジネスに柔軟かつ迅速に対応できるIT基盤の構築」である。昨今のIT基盤は安定稼働を続けることもさることながら、それ以上にビジネス環境の変化に追従できるアジリティが求められるようになった。
この調査結果を受け「2つの課題を解決するカギは、データ保護・利活用に大きな役割を果たすストレージの変革にあります」と語るのはデータダイレクト・ネットワークス・ジャパンの八木下 洋平氏だ。
もともとDAS(Direct Attached Storage)から始まり、NAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)などへと発展してきたストレージは、急速な大容量化と性能向上を遂げてきた。しかしその一方で、多くのストレージがいまだにLUN(論理ユニット番号)やボリュームといった、昔ながらのアーキテクチャーを引きずっているのが実情だ。「そういった古い設計の従来型ストレージが仮想化環境に入り込むことで、運用面に様々な弊害を及ぼしているのです」と八木下氏は指摘する。
この根本原因をとらえた課題解決を見据えて2008年にシリコンバレーで創業し、仮想化環境専用ストレージ製品の開発・販売に乗り出したのが米Tintri by DDN社である。主力製品は「Tintri VMstore」という仮想化環境専用ストレージアプライアンスで、現在その第7世代目となる「T7000シリーズ」を提供している。
それではTintri VMstore は、どのようにこれまでのストレージ管理を変革し、先に挙げた2つの課題を解決するのか。ここからは主な特徴を順に見ていきたい。
1つ目は、「仮想マシンを入れ込むだけの簡単導入」だ。従来型ストレージを導入する際には、高い専門知識をもったエンジニアがシステムの基本設計や複雑なパラメータ設定にあたらなければならなかった。しかしTintri VMstoreではそうした作業が一切不要だ。
「Tintri VMstoreにはそもそもLUNやボリュームといった概念がなく、単一のストレージプールとして提供されます。したがってIPアドレスを割り振るだけで、すぐに仮想化環境のデータストアとして利用できるのです」(八木下氏)
2つ目は、「柔軟性に優れた高速リカバリ処理」である。Tintri VMstoreでは、本番稼働している仮想マシンレベルの複数世代のスナップショットコピーからの高速リストア、更には任意の仮想マシンにデータを即座にコピーすることもできる。
「管理画面上で数回クリックするだけで、TBクラスの大規模なデータであっても瞬時にリカバリが完了します。この機能はランサムウエアなどのマルウエアに感染した際の復旧手段として大きな効果を発揮します」(八木下氏)
3つ目は、「仮想マシン単位の稼働状況の可視化」である。仮想化環境で稼働する複数のアプリケーションを安定稼働させるためには、仮想マシン単位での稼働状況を分かりやすく可視化し、例えばホストの遅延、ネットワークの遅延、ストレージの遅延といった問題が発生した際に、その原因を素早く特定することが重要となる。
ところが従来型ストレージにおけるLUNやボリューム単位の管理では、仮想マシンごとの動きは把握できなかった。例えばある仮想マシンでI/Oの遅延が発生した場合、別の仮想マシンに発生した突発的なI/Oの影響、サーバーやネットワークのリソース枯渇など、様々な原因が考えられるものの、詳しい追跡調査を行う術がなく、仮想マシン自体に起因する問題や、ストレージ以外のインフラ上の問題を把握するまでには至らない。
これに対してTintri VMstoreでは、各仮想マシンやvDisk(仮想ディスク)の情報をTintri OSがもつ独自のファイルシステムで管理している点に大きな違いがある。「仮想マシンごとの稼動状況を常にストレージ側で把握しているため、インフラ全体を可視化できるのです」と八木下氏は説明する(図1)。
図1 仮想マシンレベルでの可視化
Tintri VMstoreでは、各仮想マシンやvDisk(仮想ディスク)の情報を独自のファイルシステムで管理する。仮想マシンごとの稼動状況を常にストレージ側で把握しているため、インフラ全体を可視化できる
もっとも、単に稼働状況を可視化するだけでは意味がない。これを一歩進めるのが、4つ目の特徴となる「自動QoS(品質保証)」だ。これは仮想マシン間の性能競合を排除するもの。特定の仮想マシンがリソースを独占しようとした場合、自動QoSはその状況を把握してサービスレベルを一定範囲内にとどめる。一方、ある特定の仮想マシンがリソースを必要としている場合、インフラ全体に影響を及ぼさない範囲内でほかの仮想マシンのサービスレベルを調整し、パフォーマンスを最適化する。
「企業の仮想化環境は目まぐるしく変わっていきますが、Tintri VMstoreは仮想マシンの稼働状況を把握しながら、限りあるストレージリソースを最大限に活用できるよう動的に配分していきます。これによりビジネス環境の変化にもダイナミックに対応し続けることが可能となります。また、従来は手動で行っていたストレージ設定の変更作業を回避し、仮想化環境の運用工数およびコストを大幅に削減します」と八木下氏は訴求する。
さらにTintri VMstoreには、仮想マシン間でのデータのやり取りを高速化する独自のデータマネジメントの機能も実装されている。端的にいえば、特定の仮想マシンのvDisk上のデータを、複数の仮想マシン同士で共有・活用するソリューションである。
例えば開発者が本番データを求めた場合、従来は仮想マシンごとに個別にデータコピーを行わなければならなかった。仮に3人の開発者の仮想マシンに対してそれぞれ500GBのデータをコピーするとなれば、合計1.5TBのデータ転送が発生することになり、相当なストレージリソースの確保とリードタイムを要してしまう。
これに対してTintri VMstoreでは、物理的なデータコピーは行わない。「仮想マシンのメタデータを任意のスナップショットに切り替えるだけなので、わずか数秒でデータのプロビジョンングが完了します。TB級の大容量データを共有する場合もデータ転送は発生せず、移行に必要なストレージ容量はゼロです」と八木下氏は話す(図2)。
図2 Tintri VMstoreのデータマネジメント
仮想マシンのメタデータを任意のスナップショットに切り替えれば、わずか数秒でデータのプロビジョンングが完了する。TB級の大容量データを共有する場合も物理的なデータ転送は発生しない
そのほかにもTintri VMstoreは、クラウドバックアップやマルチテナント環境の運用管理、ハイパーバイザー連携、Kubernetes対応など豊富な機能を実装しており、急速に変化していくビジネスのニーズに迅速に対応する。
なお、前述したとおり現在はTintri VMstoreの最新モデルとしてT7000シリーズが提供されているが、2Uサイズのコンパクトな筐体でありながら最大7500の仮想マシンをサポートする。さらにインラインの重複排除機能による高い容量効率、コントローラーを含めた全コンポーネントを冗長化した高度な可用性など、エンタープライズの要求に十二分に応えるストレージとなっている。
「Tintri VMstoreは3年後、5年後も導入時と変わらぬ手間いらずの安定運用を提供します」と八木下氏。今後も同社では仮想化環境にまつわる課題を解決し、その高度な柔軟性と拡張性を生かしながら企業のデジタル戦略を下支えしていく考えだ。