「近年は多くの企業が採用しているクラウドですが、ビジネスに多くのメリットをもたらす半面、クラウドならではの運用課題が生まれるケースも少なくありません」。そう指摘するのは、NTTデータ先端技術の中島 洋祐氏だ。
例えば、クラウドでは必要なリソースを必要なときに確保できるが、これは裏を返せばリソース変化にリアルタイムに追随できる運用が必要になるということだ。また、従量課金制のため、リソースの量や使用時間を適切に制御しないと思わぬコスト増を招きかねない。さらに、マルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境では、コンソールをはじめとする運用管理ツールが個別最適化されてしまい、運用がサイロ化しがちという問題もある。
これらを解決する上で有効なのが、サードパーティの運用管理製品を選定して活用することだ。まず選定においては、自社が利用するクラウドサービスで動作がサポートされているかを確認する。カタログ情報をうのみにするのではなく「クラスタ構成が組めるか」「自社の利用状況に即した使い方をした場合、ライセンス費用はどうなるか」など、様々な観点で精査することが肝心だ。「クラウドのメリットを最大限に享受するためには、メリットと同時に、その裏に潜む運用課題も理解し、運用管理製品を選定することが重要です」と中島氏は言う。
NTTデータ先端技術は、このようなニーズに応えるソリューションとして「Hinemos(ヒネモス)」を提案している。
「ハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境を丸ごと管理できる統合運用管理製品です。データを包括的に収集・蓄積して見える化/分析できるほか、高度な自動化機能も備えています」と中島氏は紹介する。具体的には、クラウド専用機能として「リソース自動検出・追随」「プラットフォーム監視」「専用リソース監視」「リソース制御」「クラウド双方向通知」「クラウドログ監視」の6つの機能を搭載しており、慣れ親しんだオンプレミス同様の運用環境を、特別なつくり込み不要で実現できる点が特徴だ。
2025年8月にリリース20年を迎えるHinemosは、大規模システムや基幹系システムも含めた1000以上のシステムで採用されている。アマゾン ウェブ サービス(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)などの主要クラウドサービスに対応している(図1)。
図1 クラウドの統合運用管理を実現するHinemos
クラウドならではの特徴に対応した6つの専用機能を提供。主要パブリッククラウドのほか各種仮想化基盤にも対応した統合運用環境を提供する
それでは、Himemosの代表的な特徴が、クラウド運用の課題に対してどのように有効なのかを見ていこう。
■情報の収集、見える化(監視)
クラウド側にも監視、ログ収集サービスは存在するが、OS上のリソースにデフォルトでは取得できない値が存在するなど、クラウドの標準サービスだけでは運用要件をすべて満たさない場合がある。また、企業ごとの業務カレンダーとの連携やフィルタ条件の集約、異常検知後の通知といった、ユーザーが求める機能もすべて網羅されているとは限らない。
「さらに、プラットフォーム自体の監視についてはサービスがダウンしたら行えなくなってしまいます。このような課題を、Hinemosとクラウド外部からサービス状態を監視する仕組みを連携させることで解決します」(中島氏)
クラウドの標準サービスが取得する情報はそこから収集し、それ以外の必要な情報はHinemosが独自に収集する。標準サービスから通知される各種メトリクスもまとめて管理できるため、全体の監視・運用負荷を低減することが可能だ。
■運用の自動化
先に紹介した通り、柔軟にインスタンスを増減できるのはクラウドの大きなメリットだが、その分、増えたインスタンスに対する監視やジョブ実行を迅速化する必要性が生じる。これを人手でタイムリーに行うことは難しいため、作成されたインスタンスを自動的に検出し、その用途なども自動で識別することが重要になるだろう。
「Hinemosであれば一連の作業を自動化できます。クラウドへの接続情報を登録すると、インスタンスを自動で検出して登録すると共に、そのインスタンスが存在するリージョンやアベイラビリティゾーン単位でのグルーピングも行います。構成変更があった場合は自動で追尾するため、人手による操作は不要です」と中島氏は説明する。
インスタンスにタグを付与することで、用途やOSなどの属性別にグルーピングすることも可能。グループに対して監視やジョブを事前定義できるため、検出から識別、監視・ジョブ開始までの一連のプロセスを容易に自動化できるという。
■リソースの制御
オートスケーリングはクラウドの有用な機能だが、インスタンスの起動や停止といったリソースの制御は負荷だけではなく、業務と連動して行われるケースも多い。その点Hinemosは、インスタンスの起動/停止操作をジョブに組み込めるため、業務と連携したリソース制御を容易に実現できる。
「適切なリソース制御を行うことでコスト削減も図れます。当社がAWSを用いて行った試算では、土日にシステムを停止すれば約30%、起動を営業時間内に限定すれば約50%のコストを削減できるという結果になりました」と中島氏は強調する。
マルチクラウド環境を利用する場合は、クラウド間の双方向連携が必要になるケースもあるだろう。その場合も、Hinemosではあるクラウド上で発生したイベントを受け取り、別のクラウドに渡すことで指定のジョブフローを実行できる。また、Hinemos側からクラウドにメッセージを通知し、指定の処理を起動することも可能だ。クラウド間をつなぐ「ブリッジ(橋)」の役割を果たせることもHinemosの重要な特徴といえる(図2)。
図2 マルチクラウドに対応した双方向連携のイメージ(AWSでの例)
クラウドAで発生したイベントを起点に、クラウドBに処理指示をかけるといったことが可能。クラウド間をつなぐ「ブリッジ(橋)」としてHinemosを活用できる
さらに、運用管理マネージャーを冗長化したい場合も、Hinemosのソフトウエアと仮想サーバー2台だけで可用性構成を実現できる。クラスタリングソフトや共有ディスクなどを別途用意する必要がないため、種々の制約に煩わされることなくシンプルに可用性を高められるという。
「HinemosはCPUのコア数や管理対象に依存しない費用体系を採用しているため、クラウドリソースをスケールアップ/スケールアウトしても費用が増える心配はありません」と中島氏は付け加える。コストを抑えて利用できる点も、ユーザーにとってうれしいポイントといえるだろう。
今後は、Hinemosの統合運用管理機能をクラウド上のマネージドサービスとして提供するクラウドサービス版も提供予定。これにより、さらに利用の柔軟性は高まるだろう。高度なクラウド活用を目指す企業にとって、運用負荷の低減は重要な課題といえる。Hinemosは、そのための手段を提供してくれるソリューションといえそうだ。