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集中力はこうすれば高められる! 生産性・品質・創造性アップへの挑戦 音、香りなど、制御アプローチのあの手この手 集中力はこうすれば高められる! 生産性・品質・創造性アップへの挑戦 音、香りなど、制御アプローチのあの手この手

2026.01.23

人は集中力を高めることで、生産性や品質、創造性の向上、問題解決能力の強化、ストレス軽減、学習・知識定着の促進など、多岐にわたって脳のパフォーマンスを最大化し、目標達成や自己成長を加速させることができる。具体的にはタスクの効率化やミスの減少、深い思考や新しいアイデアの創出につながり、マインドフルネス効果で精神的な安定も得られると言われている。そういった効果を狙って集中力を高めるための方法を模索する企業がある。本稿では、それぞれの企業が挑むアプローチを紹介しよう。

集中力とは特定の対象に意識を向け、それを維持する能力で、勉強や仕事、スポーツなどの際にその力を発揮できれば、外部の刺激や雑念を遮断しパフォーマンスを高めやすい。クルマの運転のように安全に関わるような作業でも集中力は欠かせない。ただ一般に、集中力を発揮し続けられる時間は短く(約15分ごとの波)、持続・向上させるには、いったん休憩する、行動を切り替えて気分転換するなど、何らかの対策が必要になる。意図的に集中力を高められれば、いろいろな場面で生産性や安全性の向上を図れる。実はそうした対策として、人体に何らかの刺激や成分を与えることで集中力を高められないかと考え、興味深い研究に取り組んでいる企業がある。

三菱鉛筆が実証、
川のせせらぎ音で集中力を呼び戻す

自分の好きな音楽を聞きながら仕事をすると、効率が上がった気がする。それは集中力を高めるというよりも、モチベーションを上げることによる効果の方が大きい。とはいえ、実際に特定の音を聞くことが、集中力を高める効果につながることがある。

三菱鉛筆は、芝浦工業大学及びストーリアと共同で、学習中に特定の音による聴覚刺激で集中力が向上する可能性について実証実験を実施した。それによって、集中力が落ちてくるタイミングに「川のせせらぎ」の音を流すことで、集中力を表す脳波が上昇することを確認している。

実験では、EEG信号*1を取得するヘッドバンドを装着した実験協力者に対し、情報処理能力を測定するPASATテスト*2を前後半それぞれ2分の計4分間行った。前半では通常の環境下で2分間PASATテストを行い、休憩を入れずに行った後半では、3つの環境光(赤、青、緑)と3つの背景音(ホワイトノイズ、川のせせらぎ、クラシック音楽)がある状況で2分間PASATテストを行った。

(図1)3つの環境光と背景音を使った、刺激前後のテストの正答率の比較(三菱鉛筆のプレスリリースより引用)

この時の脳波とPASATテストの正答率を前後半で比較し、各視聴覚刺激によって集中力がどのように変化するかを調査した結果、川のせせらぎを背景音として流すことで、正答率が向上する傾向がみられたという(図1)。

*1 EEG(Electro Encephalo Graphy)信号:頭皮上の脳の自発的な生物学的電位を増幅して、記録することによって得られる信号パターン。
*2 PASAT(Paced Auditory Serial Additions Task Clinical Assessment for Attention):一定のリズムで読み上げられる1桁の数を聞き、前後の数を加算した数を順次回答するテスト。

(図1)3つの環境光と背景音を使った、刺激前後のテストの正答率の比較(三菱鉛筆のプレスリリースより引用)

心地よい「雑音」は
知的生産性の向上に効果

集中力は、作業をする環境からも大きな影響を受ける。例えば騒音が鳴っているような場所では集中しにくい。反対に何も音がしない状況でも、静けさが気になって集中できないことがある。つまり、適度なノイズがあった方が集中できると考えられる。

鹿島建設とACALLは共同で、「そと部屋」を用いた実証実験を行った。そと部屋は鹿島建設が開発したサービスで、室内の光や音、風、香りなどを制御し、屋外環境の「心地よさ」や「開放感」をオフィス内に再現する。実際には、自然とのつながりを意図して緑を提供する「バイオフィリックデザイン」や、空からの光を室内に模擬する天井装置「スカイアピアー」、屋外の音風景を快適に室内に取り込む音場制御装置「サウンドエアコン」を融合させることで、屋外環境を実現する(写真1)。

実験は外部のワーカーが実際に働くことで実施され、そと部屋で活動した際の生理面(自律神経活動の測定)、心理面(リラックス、ストレスなどに関するアンケート)、知的生産性(単純作業、創造的作業のパフォーマンス)を定量的に評価し、ウェルネスに及ぼす影響を測定。結果として、そと部屋のほうがワーカーの集中力と知的生産性が大幅に向上したという。

また、そと部屋設置後の場所で働いた際、設置前と比べると「疲労感」「ストレス」「眠気」が大幅に軽減し、「リフレッシュ」に大幅な増加が見られるなど、4つの項目で高い効果があることも明らかになった。加えて、そと部屋設置によって「開放感を感じる」と答えたワーカーは50%から100%に、「自然を感じる」と答えたワーカーも0%から86%に増加。それらの効果を総合的に勘案し、開放感や自然を感じる場所には、集中力と知的生産性が高まる環境要因があると見ている。

(写真1)鹿島建設が開発した屋外環境を再現する「そと部屋」(出典:ACALLのプレスリリースより引用)

強炭酸水が「覚醒」させ「集中」を促す?
科学的根拠を検証

勉強や仕事などの際、好みの飲料を傍らに置き、飲みながら作業することがある。この飲料にも、集中力が高められるものがある。アサヒグループが検証した。

アサヒグループは、炭酸水を飲むことで「気分がスッキリする」「目が覚める」「気分転換ができる」といった感覚を意識することに注目。そういった効果を科学的に説明するために、脳波解析を用いて炭酸水が感性に与える影響を調べた。

実験では被験者にオフィスで強炭酸水、弱炭酸水、普通の水の3種類を飲んでもらい、飲用前、飲用中、飲用後の脳波を測定。「覚醒度」と「集中度」の数値変化を調べたところ、水を飲んだときよりも強炭酸水を飲んだときのほうが、飲用中に「覚醒度」の数値が高まり、飲用後には「集中度」の数値が高まったという(図2)。

(図2)炭酸水を飲用した際の脳波の解析(出典:アサヒグループのホームページより引用)

集中力アップにつながるコーヒーの香りは?
UCCが実証開始

飲料でいうと、心を落ち着けたい時に必須の飲み物としてコーヒーを思い浮かべる人は多いだろう。コーヒーは飲む人に安らぎと、時に活力を与えるとして、中世には現在のカフェの原型となるコーヒーハウスがイスタンブールに誕生し、政治や経済、金融、報道など、あらゆる知の中心として機能していたという。

そのコーヒーが持つ新たな可能性を、カフェにおける実証実験で明らかにしようとしているのがUCCジャパンだ。トヨタ自動車が静岡県裾野市に作った実証実験のための都市「ウーブン・シティ」で、実証実験を進めている。ウーブン・シティ内の店舗の一部に実証エリアを設け、環境やコーヒーの香り・味わいが人の集中力や作業パフォーマンスにどう影響を与えるかを調べる(写真2)。

(写真2)ウーブン・シティ内の上島珈琲店の一部に設けられた実証エリア(写真提供:UCCジャパン)

実験では、滞在中の参加者の様子をカメラで捉え、AIによる画像解析や参加者自身の気持ちの主観評価などを実施する(図3)。初期段階では、個人が仕事をしたり本を読んだりなどの目的でカフェに来る際に、コーヒーが生産性にどう作用するかをチェックする。次の段階は、複数人のグループでの対話において、例えばコーヒーとそれ以外の飲み物を飲んだ時に、どちらの対話が促進されるかやコミュニケーションへの影響を調べる。

(図3)UCCがウーブン・シティ内で行う実験のイメージ(資料提供:UCCジャパン)

「これまで実験室レベルで調査してきたが、こういったリアルな生活を模した環境では調べていなかった」(UCCジャパン サステナビリティ推進本部の池川優太氏)。同氏は、「将来的には、コーヒーを飲む習慣が個人の健康にどこまで影響するのか、バイタルデータについてもスマートウォッチで検証することを考えている」と説明する。さらに、実験では日常的に感じるさまざまな仮説を、実験環境の中で検証していくという(図4)。

(図4)カフェでの実証実験で検証するさまざまな仮説(資料提供:UCCジャパン)

実験はウーブン・シティがオフィシャルオープンした2025年9月25日の翌日から行っているが、3カ月経過後の進捗として、「今は基礎データを整えているところで、実験スペースで30分から1時間ほど、本を読んだり仕事をしてもらった後にアンケートをとっている。そこにカメラの映像を掛け合わせて、解析の準備をしている」(池川氏)。

具体的な方法としては、まずカフェに来た目的を聞き、実際に集中できたかどうかを聞く。その後、ビジョンAIを使って各人の動きを調べ、集中していた時の動きはどうだったか、集中していなかった時の動きはどうだったかなどといったデータを集めている。「特に、集中して作業がはかどった人の特徴的な動きをデータ化している。2026年以降は集まったデータを元に、どういう動作をする人が集中していたかを明らかにする。その後は、香りが異なるコーヒーを出してみたり、器を変えてみたり、コーヒーの香りを充満させるといったことを行って、集中度合いや動きに変化が出てくるのかなどを実証していく」(池川氏)。

グループでの対話においては、集中の指標も個人の場合と異なるので、「対話が活発になったり、うなずき量が多かったり、最終結論に達した否かなどのデータも組み合わせる。そのために、音声データも収集してテキスト化し解析していく」(池川氏)。

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