東京大学 総括プロジェクト機構国際建築教育拠点総括寄付講座(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB) 建築・都市DX人材育成プログラム DXフォーラム  レビュー

建築・都市分野のDXに関連する知識習得と課題分析を通じ、DXに寄与する事業などを起業する意欲を持つ人材の育成を目的として実施した東京大学主催によるプログラムの集大成として、2025年3月22日に「DXフォーラム」が開催された。基調講演の後に、受講生によるビジネスアイデアなどのピッチがあり、識者による講評を実施した。

3月22日、東京大学HASEKO-KUMA HALLにてDXフォーラムが開催された。2024年10月26日に始まり7回にわたって開催した「建築・都市DX人材育成プログラム」を締めくくるもの。今年度は第3回目を迎え、より充実した内容となった。講座は具体的に(1)技術セミナー運営 (2)政策コロキアム (3)建築・都市分野のDXフォーラムの3部で構成する。

技術セミナーでは、測量・計測、情報通信、解析、ロボティクス、建築生産、仮想空間、施工管理の7分野で活躍する研究者・専門家が最新の技術を詳しく解説、政策コロキアムでは、デジタル行政、都市行政、住宅・建築行政、不動産・建設行政、各分野の実務担当者が最新の政策動向を講義した。

総括となるDXフォーラムでは、主催者の代表として東京大学の和泉洋人特任教授が登壇、続いてナウキャスト取締役会長で、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進委員会特別委員を務める赤井厚雄氏が「DXと空間マネジメント〜EBPMと建築・都市分野の展望」と題して基調講演を行った。さらに東京大学空間情報科学研究センター・特任准教授の瀬戸寿一氏が「地理空間情報の活用・連携・参加による建築・都市DXの推進へ」のテーマで講演した。

基調講演の後は、7回にわたる技術セミナーと政策コロキアムで得た知見を参考にしながら、社会課題の解決に資する取り組みのプレゼンを行う「受講生ピッチ」が企画され、8人が登壇した。講評者3人とのディスカッションも熱を帯び、人材育成プログラムとして、より前進した結果となった。

主催者挨拶

東京大学特任教授和泉 洋人 氏

Society 5.0の実現に向けて
拡大する建築・都市DX予算

和泉洋人特任教授は建築・都市分野におけるDXの位置付けを整理した。「Society 5.0」の実現に向けて、建築都市のDX予算が、令和7年度当初91.67億円まで伸びていることを紹介。DX化の推進により、建築・都市・不動産の多様なデータと他分野のデータが蓄積・連携・活用できる社会が実現し、新サービスの創出や防災・環境などが期待されると述べ、具体例として3D屋内モデルを活用したシームレスな自動配送や、地下埋設物の可視化、建物データと人流データを組み合わせ、避難計画を高度化するなど、目指す将来像をいくつか挙げた。

また、今回で3年目となった人材育成プログラムだが、2022年度は登壇者が12名、受講者が89名、2023年度はそれぞれ27名、112名であったのに対し、今年度は登壇者こそ22名と少なくなったものの、受講者は140名に増えたと規模が拡大していると解説、中でもピッチ・プレゼンテーションは昨年の2人から8人に増えたと、より受講者が前向きに取り組んでいる現状を説明した。2025年度も人材育成プログラムを実施する方向で検討中という。

和泉洋人特任教授

主催者挨拶に登壇した東京大学の和泉洋人特任教授

基調講演

株式会社ナウキャスト取締役会長
経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進委員会特別委員
経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進委員会
EBPMアドバイザリーボードメンバー 赤井 厚雄 氏

2025年は大きな転換点
EBPMの重要性を強調

基調講演に立った株式会社ナウキャスト取締役会長の赤井厚雄氏は、2025年が日本にとって重要な転換点になることを強調して、政策立案と評価の仕組みが大きく変わることを説明した。

冒頭でデジタル化について、赤井氏はデジタル化を①デジタイゼーション(アナログからデジタルへの変換)、②デジタライゼーション(デジタルによる効率化)、③DX(デジタルによる構造変革)の3段階で説明し、社会経済の構造変化をもたらすことを指摘した。

次にEBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)アドバイザリーボードの活動を通じて、データに基づく政策評価システムの構築と、統計の整備について説明。特にGDP統計の改善や各省庁の統計の見直しについて具体例を挙げて解説した。

一つの例として、我が国の生産年齢人口(15~64歳)の減少は2030年代に加速。国難とも言えるこの成長下押し克服が大きな課題だという。これに対しDXや新技術の社会実装などによりイノベーションを促進して生産性を向上させる必要がある。健康で意欲のある65~74歳の活躍など、生涯活躍社会の実現が重要であるとした。

赤井 厚雄 氏

株式会社ナウキャスト取締役会長
経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進委員会特別委員
経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進委員会
EBPMアドバイザリーボードメンバー
赤井 厚雄 氏

図表

EBPM推進に向けた今後の課題及び進め方

図表

最後に赤井氏は、政府におけるEBPMは民間企業における戦略策定および業務の最適化と同じだと位置付け、新しいことを始めるには、ものごとの全体像を俯瞰する視点が必要だと指摘。戦略の妥当性と手段の妥当性(効果)を計測する政策文化がEBPMであると話をまとめた

基調講演

駒澤大学文学部地理学科・准教授
東京大学空間情報科学研究センター・特任准教授
瀬戸 寿一 氏

重要性を増すCityGML
地理空間情報の標準化に参加を

調講演の2人目は駒澤大学・東京大学CSISの瀬戸寿一氏。地理情報システム(GIS)の基本概念から説明を始め、GISが単なる可視化ツールではなく、「メディア」としての地図になることを強調した。具体的には、情報の関連性の把握、情報の統合と分析、データの作成と更新などである。例えば、「位置」をキーに様々な異なる情報を統合したり、複数の情報を重ね合わせて分析して、課題の解を導き出せるとしている。

一方で2022年から高校で地理が必修化され、GISが教育カリキュラムに組み込まれたことについて言及し、これにより将来的なGIS人材の育成基盤が整備されつつあることを説明した。約50年ぶりに高校で必須化された「地理総合」では「グローバル」「防災」と並んでGISが柱となっている。

さらに、まちづくりDXの重要性をテーマに話を進める。そこで登場したキーワードが「デジタルツイン」。インターネットに接続した機器などを活用して、現実空間の情報を取得し、サイバー空間内に現実空間の環境を再現することを意味する。デジタルモデル、デジタルシャドー、デジタルツインという3段階の発展過程を説明し、現在の世界的なプロジェクトが8段階中5段階目まで到達していることを解説した。

瀬戸 寿一 氏

駒澤大学文学部地理学科・准教授
東京大学空間情報科学研究センター・特任准教授
瀬戸 寿一 氏

図表

加えて、CityGMLフォーマットの重要性について言及した。建築物や土地利用、交通といった単位でモジュール化された仕様を必要に応じて取り込んで利用できる拡張可能なフォーマットのこと。世界400以上の都市で、採用されていると紹介した。国際的な地理空間情報の標準化議論に、積極的な参加をすることが大切であると強調した。

会場

GISを活用する人材育成の重要性が強調された

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