DXやAIの進展に伴い、監視データは爆発的に増加している。従量課金型の監視サービスを利用する企業にとって、データ量の増加はそのままコスト増につながる構造である。本質的な課題は、利用されていないデータにも課金が発生している点にある。この構造そのものに切り込むのが、Grafana Cloudの「Adaptive Telemetry(アダプティブ・テレメトリー)」である。可視化・監視の先へ、オブザーバビリティ・プラットフォームのGrafana Cloudが導く。可視化・監視を超え、データの利用状況そのものを分析する独自技術により、不要データを抑制する。平均コスト削減率は50%におよぶ。オブザーバビリティ領域に精通するグラファナラボ日本合同会社シニアソリューションズエンジニアの角田勝義氏に、その革新性を聞いた。
国内企業の82%が
運用監視ツールの選定でコストを最重視
一般的な運用監視サービスは従量課金制が主流であり、監視データ量の増加に比例して費用も拡大する。従来のように、オンプレミス環境のみを監視する時代ではない。マルチクラウド、マイクロサービス、コンテナ、IoTなど、DXの進展に伴い監視対象は増加する一方だ。
シニアソリューションズエンジニア
角田 勝義 氏
「問題は、データが爆発的に増加しても、運用監視に役立つ“価値あるデータ”が増えているわけではないということです」と、グラファナラボ日本シニアソリューションズエンジニアの角田勝義氏は指摘し、強調する。「収集された監視データの多くは、使われることのない“価値の低いデータ”です。それに対しても、一般的な従量課金制ではコストが発生します」
DX時代においては、システム停止がビジネスへ与える影響も拡大している。復旧時間短縮や運用負荷軽減を実現するオブザーバビリティ(可観測性)への関心は、グローバルで認知度が高く、国内でも関心が高まってきた。
2025年のGartner® Magic Quadrant™ for Observability Platformsでリーダーに位置付けられたGrafana Labsは、日本におけるオブザーバビリティ動向調査を実施。その結果、回答者の82%がツール選定における最重要な要素としてコストを挙げており、投資対効果の最適化が重要テーマとなっていることが分かった。
Grafana Labsが開発したOSS(オープンソースソフトウエア)のオブザーバビリティ・プラットフォーム「Grafana(グラファナ)」は、メトリクス、ログ、トレース、プロファイルなどの多様なデータソースを一元的に収集・分析し可視化できる。OSS版のGrafanaをエンタープライズ向けに最適化し、フルマネージドで提供するGrafana Cloudの導入も国内外で拡大している。
その中核機能の一つが、平均50%のコスト削減を実現する独自技術「Adaptive Telemetry」である。
不要なデータを除去し
必要なデータのみを取り込む
従量課金モデルにおけるコスト最適化の本質は、不要なデータを減らすことである。この考えを具現化するAdaptive Telemetryは、他社にはない唯一無二の技術である。不要なデータをどのように判別するのか。その仕組みについて角田氏は説明する。
「運用監視のために、CPU使用率やメモリ消費量、レスポンスタイムなど、さまざまなメトリクス情報が集まってきます。不要なデータの基準は、そのデータが使われているかどうか。人手による調査は、現実的ではありません。全運用管理者に聞いて回るわけにはいかないからです。Adaptive Telemetryは、独自の統計モデルを使ってアラート、クエリー(命令)、ダッシュボードなどデータの利用状況を分析し、『未使用(Unused metrics)』『一部使用されている(Partially used metrics)』『よく使用されている(Fully used metrics)』といった分類を行います」
Adaptive Telemetryでは、自動特定された価値の低いデータを集約(アグリゲーション)することで、データ量を削減しコストを抑制する。「例えば、データ保持において47都道府県レベルと、市町村レベルでは桁が変わります。価値の低いデータに関して、都道府県レベルで合計値として集約して保持することでデータ量抑制が図れます。さらに使用状況に応じた推奨事項が提示されるため、円滑な運用に必要な洞察を損なうことなくコストを削減できます」(角田氏)
Adaptive Telemetryでは、直感的なUI(ユーザー・インターフェース)を使用し、最適化を確認し適用できる。どのメトリクスがコストに影響し、どれだけ削減できるかが一目瞭然だ。
2024年にはログ最適化機能を追加した。「ログのパターンを分析し、利用頻度の低いログを間引く(ドロップ)ことで、ストレージコストの削減が図れます。例えば、インフォレベルでメッセージが100件出ていても問い合わせがゼロの場合は99%を間引き、ログ件数だけを記録に残します。また、クエリーレベルでメッセージが18件あり、問い合わせが9件の場合は50%の間引きを推奨します」(角田氏)。2025年に、Adaptive Telemetryはトレース、プロファイルへと対応領域を拡大した。
わずか3年で導入企業数は3900社以上
平均コスト削減率は50%
Adaptive Telemetryにおけるメトリクスは、2023年にリリースしてわずか3年で導入企業数は3900社を超え、平均コスト削減率は最大50%だ。不要なデータの除去はコスト削減につながる。明快な効果が導入企業急増の要因となっている。
他社の追随を許さないAdaptive Telemetryを、Grafana Labsが実現できた理由について、角田氏は言及する。「Grafana Labsは、メトリクスの保存、ログ収集などオブザーバビリティのツールを、OSSですべて開発しており、最適化の仕組みを盛り込みやすいことがアドバンテージになっています。他社製品は、自社開発ではないOSSなどを使っているケースも多く、最適化に向けた技術的課題は大きいと思います」
一般的に従量課金制の運用監視ツールは、データ量削減が収益減となるため、踏み込みにくい側面がある。Adaptive Telemetryは、データ量ではなく、使ったデータに課金する。これまでの運用監視コストのあり方を変える。「Grafana Labsは、価値あるものだけをお客様に届けるという哲学があります」と角田氏は強調する。
Adaptive Telemetryはコスト削減だけでなく、平均解決時間(MTTR)短縮にも貢献する。不要なデータを精査するムダな作業から情報システム部門を解放し、問題解決に注力できる時間を生み出すからだ。Adaptive Telemetry を有するGrafana Cloudは、費用対効果の高いオブザーバビリティ・プラットフォームと言えるだろう。
2026年3月17日に「ObservabilityCON on the Road 2026 Tokyo」が開催される。Grafana Labsが主催するグローバルイベントの日本版だ。Grafana Labs創業者を含むエグゼクティブが来日し、グローバルな視点と日本市場の文脈で次世代オブザーバビリティの展望を示す。Adaptive Telemetryの最新コスト管理機能に関してデモも紹介。Grafanaがグローバルで起こしたオブザーバビリティのパラダイムシフトが日本でも動き出した。


