――これまでのご経歴を教えてください。
トヨタ自動車で長く情報システム部門を経験し、その後、KDDIで法人向け事業の統括事業責任者を担当しました。KDDIでは、企業向けの端末販売やネットワーク提供からスタートし、関連領域であるクラウドやセキュリティー、データセンター、IoT(Internet of Things)、DXなどのビジネスも経験しました。DXに取り組む以前は、顧客企業の窓口が情報システム部門や総務部門であることがほとんどでした。しかし、DXのサービスを始めてからはビジネス部門と直接お取り引きする機会が多くありました。
――リッケイとはどのように出会ったのでしょうか。
KDDIに所属していた際、取り引きを希望して連絡してもらったのが最初ですね。そこからオフショア開発などでの連携がスタートしました。ビジネスに一緒に取り組んで、トゥン会長をはじめとしたリッケイには大きな可能性を感じていました。若い組織ながら前向きでエネルギーがあり、「日本企業のためにもっと力になりたい」という志が強い会社だと感じていました。
――名誉会長に就任することになった経緯を教えてください。
私は2025年6月末にKDDIを退任しました。そこからフリーの立場でビジネスのアドバイザーを始めたところ、トゥン会長から連絡がありました。ビジネスについての助言を求められたり、人を紹介してくれといった依頼はあるかなと想像していたのですが、「手伝ってくれ、名誉会長になってくれ」ということだったので驚きました。
2025年10月にハノイで開催された「RIKKEI GLOBAL SUMMIT」に参加したことも大きかったですね。現在のリッケイがどんな企業かをより深く理解することができました。リッケイはオフショア開発企業としてだけでなく、より幅広い分野で日本企業をご支援する会社に進化しつつあるのです。そしてリッケイは、従業員だけでなく経営陣もとても若い会社です。高い将来性があると感じたので、私も彼らと一緒に働き、刺激を受けたいとも思いました。
従来からリッケイと関わる中で、技術力の確かさ、実行スピードの速さ、日本市場に根付こうとする姿勢といったものは感じてきました。お声がけをいただいて改めてトゥン会長の思いを聞いたことや、ベトナムでリッケイの進化を目の当たりにしたことなどから、リッケイに名誉会長として関わることを決めました。

株式会社リッケイ
名誉会長
森 敬一 氏
顧客基盤の拡大や技術戦略立案を
サポートしたい
――名誉会長は、どういった役割を担う役職なのですか。
役割は大きく3つあります。1つ目は、もっと日本企業の役に立てるよう、顧客基盤を開拓するためのサポートです。2つ目は、今後どういった技術をお客様に提供していくかという技術戦略を立案する際のサポートです。私はKDDIでITやデジタル技術を提供する側の立場を経験し、トヨタの情報システム部門でそれらを利用する立場も経験しました。そういった経験から、技術戦略の立案に役立つアドバイスをすることを求められています。3つ目は、日本で求められる水準に達するよう会社のガバナンスを強化したり、ブランドを確立したりすることです。トゥン会長の言う「日本に根付いた会社にする」ということを実現するためのサポートです。
――1つ目の顧客基盤の拡大、というのは自動車をはじめとした製造業の顧客紹介を期待されているのですか。
そういうわけではありません。私が知っている企業だけでなく、様々な業界とつながることを求められています。製造業以外にも、リッケイが強みを持つ小売・金融・物流・不動産業界、そしてその他の幅広い業界の企業とも積極的にビジネスをしたいと考えています。
実行力×日本理解で
選ばれるパートナーに
――ベトナムにはどういった印象をお持ちですか。
前職時代を含め何度かベトナムに行きました。若い人が多く、何事にも熱心に取り組む国民性だと感じています。私は30代の頃に米国でトヨタとGM(ゼネラルモーターズ)の合弁会社に勤めていました。情報システム部門を担当していて、50〜60人のメンバーがいた中に、ベトナム人も複数人いました。彼らはみな真面目で、アグレッシブでした。ITも英語も熱心に勉強するし、そういったスキルを手に入れて成長したいという強い希望に満ちていた印象です。
リッケイにおいても、ベトナム人の従業員には真面目さや情熱を感じますね。それに加えて彼らはホスピタリティーを持っています。日本企業のお客様から希望が出されると、仮にこれまで自分たちがやってきた方法と違っても、できるだけ顧客の期待に応えようとする人ばかりです。ですから日本企業からすると、とても頼りになるパートナーだと思います。
――地政学リスクの高まりなどから、日本企業がオフショア開発先としてどこを選択するかも従来以上に重要になっています。「パートナー」というお話がありましたが、日本企業とベトナムオフショアの可能性についてどう見ていますか。
ベトナムは一定の人口規模がありますし、若い世代が多く、これから成長する国です。距離が近く、時差もあまりありません。協力していく価値がある国だと思います。日本はこれから、AIやDXなどデジタル技術を使って自国の国力を上げていく必要がありますが、それを自分たちだけで成し遂げられる状況ではありません。協力相手が必要です。
ベトナム人は、日本人と同様にデジタル技術に慣れ親しんだ人が多く、人材が豊富です。彼らは行動力に優れていますし、謙虚で相手を思いやる姿勢もあります。パートナーとしての相性はとても良いですよね。
オフショアに限らず、広い意味でのビジネスパートナーとしてもベトナムは有力な候補になる得る国だと思います。日本は既に優れた生活インフラがあり、マーケットもそこそこ大きいので、日本企業はどうしても国内市場に目がいきがちです。しかしそのせいで、新しいテクノロジーを取り入れるスピードはどうしても遅れてしまっている状況です。
今後も日本企業が成長し続け、テクノロジー面でも海外に遅れないようにするためには、海外のテクノロジー企業との連携が欠かせません。日本企業に役立つことを一生懸命に追求するリッケイは、単なるオフショア開発企業ではなく、企業が採用すべき技術を見極め、より広い領域で支援できるテクノロジーパートナーになり得ると思います。実際に一部のお客様については、そういったご支援も始めています。
このテクノロジーパートナーという話とも関連しますが、リッケイはオフショア開発企業としてだけでなく、より幅広い分野で日本企業をご支援する会社に進化しつつあります。
経営層がテクノロジーに
詳しくなる必要はない
――今後デジタル技術のさらなる活用が必要になる中で、日本企業の経営層はデジタルにどう向き合っていくべきだとお考えですか。
経営層など、次に取り組むビジネスの方向性を考える人たちが、個別のツールやテクノロジーのことまで詳細に理解する必要はないと考えています。しっかりテクノロジーについて勉強し、「次のプロジェクトではこのツールを使え」といった具合に指示するのは、かなりの困難を伴うでしょう。ですから、テクノロジーの理解は現場の若い世代に任せていいと思います。経営層の役割は、現場が新しい取り組みをしていることを認知して適切に評価し、優れた取り組みだと判断した場合には投資によって背中を押すことです。
評価というのは、「デジタルを使って工数がこれだけ減った」といったことを確かめることではありません。私も経験がありますが、こういった数字の算出にはとても時間がかかりますし、本来目指すことではないはずです。
デジタル活用の目標とすべきなのは、「こういう課題を解決したい」「新しいビジネス領域を開きたい」といったことです。そういった目標を経営層が一生懸命に考え、現場がその実現に資する取り組みをテクノロジーを使ってできているか、を見ることが重要だと考えています。この「目標実現のために、現場でテクノロジーを使う」ということについては当社にご支援できることが多くあると思いますので、ぜひお声がけください。
***
冒頭でも書いたように、Rikkeisoftはベトナムでのオフショア開発を中心とした企業から、AIなど最新技術を駆使して顧客企業のDXを支援し、新たな価値を提供するテクノロジー企業へと変貌を遂げている。その実行力と日本市場に根付こうとする意思こそが、森氏が関与を決めた最大の理由だ。「リッケイの次の10年に貢献したい」と森氏は語る。同社が急成長を続ける原動力はどこにあるのか。得意技術やソリューションの特徴は――。次回のタ・ソン・トゥン会長のインタビューで詳細に迫る。

