――改めて、Rikkeisoftがどのような会社か教えてください。
2012年4月、私と同様にベトナムから日本の大学に留学した数人の同級生で創業しました。当初は日本企業向けのスマートフォンアプリ開発やWeb開発からスタートしました。
その後、創業当初から仕事を発注してくれていた日本企業の規模が拡大し、それに伴って当社にも大型のシステム開発プロジェクトをご依頼いただけるようになりました。口コミで別の日本企業をご紹介いただける機会も多くあり、事業が拡大するとともに、対応できる業務領域も拡大しました。
2026年4月現在、従業員が2400人おり、本社があるベトナムに加え、日本、米国、韓国、タイに拠点を持つグローバルのITサービス企業に成長しました。ビジネスの内訳は、日本向けが全体の7割、米国向けが2割、残りが他の拠点、といった具合になっています。
お客様は大手が中心で、長年お取引しているところが多いですね。例えばスーパーマーケットチェーンを運営するサミット、イオングループのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)、飲食チェーン大手のすかいらーくホールディングス、三井情報(MKI)、三井E&Sシステム技研、三協立山などがお客様です。
2024年末に住友商事と資本業務提携しました。提携により、それまで以上に日本市場を理解できるようになったと感じていますし、ビジネスの展開も広がっています。住友商事の資本が入っているということで、日本のお客様からの信頼が増しているのも実感しています。

Rikkeisoft
会長
タ・ソン・トゥン 氏
――ビジネスをするうえで、どのようなことを大切にしていますか。
お客様の成功を一番に考え、お客様の立場に立つことですね。我々の仕事がお客様の成長につながれば、将来はさらに多くの発注をいただけるようになりますし、他のお客様もご紹介いただけます。これまでの経験から、しっかりとお客様のことを考えて仕事をすることが何よりも大切だと分かっています。
社員に幸せに働いてもらえる環境づくりも重視しています。より良い環境を整え、個人個人が成長できるようにしたいと常に考えています。
日本への本社移転も計画
――今後の成長計画を教えてください。
これまで、毎年売り上げと利益率を50%成長させるという目標を掲げ、達成してきました。今後も、この目標は維持していきます。
今はAIが重要な時代なので、AIに重点的に投資します。社内業務の生産性向上やエンジニアのトレーニング、開発したプログラムのテストなどにAIを積極的に活用していきます。
2026年2月にAIコンサルティング部門も新設し、AI活用を検討するお客様を上流からご支援する体制を整えました。
2026年4月には、私の母校である立命館大学の大阪いばらきキャンパス(OIC)Co-Creation Hub with Ritsumeikan内に産学共創拠点「Rikkei AI Lab」を開設しました。Rikkei AI Labは、AIをはじめとする先端分野に関する教育・研究・実証、人材育成、社会課題解決型プロジェクトに取り組む場です。立命館大学との連携を通じて、学生や研究者、企業が交わりながら新たな価値を生み出していくことを目指しています。
当社としても、こうした産学共創の取り組みを通じて、将来の技術活用や人材育成、社会実装につながる知見を深めていきたいと考えています。
「旧知の仲のトゥン君と一緒に新しい取り組みができて嬉しい」
Rikkei AI Lab開設記念式典で、立命館大学の仲谷学長が思いを語る
Rikkeisoftの日本法人であるリッケイは2026年4月、立命館大学の大阪いばらきキャンパス(OIC)Co-Creation Hub with Ritsumeikan内に、産学共創拠点「Rikkei AI Lab」を開設した。同拠点は、AIなど先端分野に関する教育・研究・実証、人材育成、社会課題解決型プロジェクトを進めるための取り組みとして位置づけられている。
開設を記念し、4月3日にはOICで式典が開かれた。式典にはトゥン会長、リッケイのファム・クアン・カン副社長兼CACO(Chief AI & Consulting Officer)、立命館大学の仲谷善雄学長、三宅雅人副学長らが参加した。
トゥン会長は「今回母校に戻り、AIについての最先端の取り組みをするRikkei AI Labを開設でき、感動し、誇りに思う」と語った。仲谷学長も「学長になってから、Rikkeisoftと一緒に何かやりたいとずっと考えてきたので、それがかなって嬉しい」と応えた。
トゥン会長が立命館大学の情報理工学部に留学していた当時、仲谷学長は情報理工学部の副学部長を務めていた。仲谷学長の研究室はトゥン会長が所属していた研究室と同じフロアのすぐ近くにあり、二人は頻繁に顔を合わせていたという。そのため仲谷学長はトゥン会長について「今はRikkeisoftという素晴らしい企業の会長を務めるまでに立派になったが、私の中ではいつまで経っても『トゥン君』のままだ」と笑って話した。
当時、立命館大学はベトナムのハノイ工科大学から、トップクラスの成績を収めた学生を毎年10人程度受け入れていた。仲谷学長は「ベトナムからの留学生は皆、大変優秀だったが、トゥン君は特に優秀だった」と振り返った。
トゥン会長はRikkei AI Labの活動について「学生の皆さんや先生方との出会いを積極的に生かし、一緒に成長し、新しい価値を作っていきたい」と展望した。
一方で、いくらAIが進化しても、人が担うべき仕事はまだまだ多いと考えています。例えばコンサルティングやお客様との打ち合わせなどです。日本においてはこういった人材がもっと必要であるため、採用を加速します。ベトナムにおいては、AIを使った生産性アップに注力する考えです。
売り上げ増と人材獲得、さらなるスキル強化などの観点から、日本企業のM&Aもしていきたいと考えています。AIサービス、コンサルティング、独SAPのERP(統合基幹業務システム)導入などのスキルがある、売り上げが数十億円規模の企業の買収を検討していきます。
日本市場にさらにコミットしたいと考えていまして、私は2026年4月から日本に移住します。将来的には本社機能を日本に移すことも考えていまして、ベトナム企業として初めて東証に上場する計画もあります。上場は2029年ごろをめどにできたら、と展望しています。
――日本企業になるかもしれないのですね。
はい。私は母国のベトナムと、留学して成長させてもらった日本の両国に貢献したいという気持ちを強く持っています。
日本は人材が不足していますが、ベトナムは若者が多くいます。日本人が持つ知識や経験と、ベトナム人の若さや真面目さなどを組み合わせれば、世界に通用するサービスができるのではないかと考えています。
第1フェーズとして、日本市場で展開するサービスを開発し、将来は日本の方と一緒に世界に打って出られれば、と思っています。そういったことを見越して、今回の移住や上場、本社機能の移転などを決めました。
オーストラリアやヨーロッパにも進出予定
――日本以外でのビジネスの状況はいかがですか。
米国拠点は2023年に開設し、今では日本に次ぐ売り上げになっています。日本市場とはかなり環境が違うので苦労もしていますが、米国にはとても優秀なチームを送っています。彼らがすごく頑張ってくれており、お客様からも高くご評価いただいているようです。
今は拠点がないオーストラリアやヨーロッパについても、お客様の進出に合わせてビジネスを始めています。ですから、今年か2027年には拠点も作れたらと考えているところです。
――米国のビジネスは、日本とはどのような点が違うのですか?
まず最初のミーティングで力を証明できないと、もう次のミーティングには呼ばれません。例えば、ミーティングでどんどん質問され、それにその場で答えられなかったらもう駄目です。日本だと一度持ち帰って、後日しっかりした答えを出せば評価してもらえますね。
日本企業の場合、信頼関係を一度築いたら長期にわたって発注してくれます。米国でも信頼関係はありますが、もっと良い提案をするベンダーが出てきたらそちらと契約してしまいます。ベンダーの側から、契約するメリットをお客様に提示し続ける必要があるのです。
問題が起きた時の対応も違いますね。日本だと何か問題が起きても、「一緒に乗り越えて解決できれば良い」という具合に考えていただけます。米国だと、トラブルは裁判になってしまいます。
望まれているのは
同じ目線で取り組むパートナー
――日本企業はDXへの関心が高まっています。RikkeisoftにはDX関連でどのような依頼がきていますか。
レガシーシステムから新しいシステムを作り直す、マイグレーションについてのお問い合わせが多いですね。
マイグレーション案件では当社のコンサルタントやDX専門家が、要件定義からご支援します。10人規模から数100人規模の案件まで、幅広くご対応しています。
――日本企業がベトナムのIT企業に発注する理由は、以前であればコストが大きかったと思いますが、DX支援などのプロジェクトでは状況は変わっていますか。
はい、変わっています。オフショア開発のコストメリットは以前に比べればかなり少なくなっています。もちろん日本のIT企業に発注するよりは低価格ですが、以前のようなコストメリットはありません。
日本企業は、一緒にプロジェクトを成功させるためのパートナーを探すようになってきていますね。以前は発注側と受注側の立場をはっきり分けてプロジェクトを進めていましたが、今望まれているのは同じ目線で取り組むパートナーです。
日本企業がパートナーを望んでいるものの、DXやAI活用の案件は多く、日本のIT企業にはそれに対応する人材が足りません。そこで新たなパートナーを探すために、当社をはじめベトナム企業に目が向いているのだと思います。
――今後もハイペースでの成長を続けるうえで、課題はありますか。
お話したように、AI活用による社内の生産性向上と、M&Aによる上流工程の強化が欠かせません。案件自体はたくさんあるので、成長できるかどうかは我々が体制を整えられるかにかかっています。
特に、日本人の雇用は頑張らないといけません。日本企業との上流工程でのコミュニケーションにおいては、業務理解や意思決定のスピードを高めるため、日本人が窓口になる必要があると感じています。
現在、当社における日本人社員の割合は1割程度です。これを上場までに3〜4割に増やしたいと考えています。日本企業ですら採用に苦労している状況なので、ベトナム企業の当社にはさらに高いハードルになりますが、そこをどうにか越えなくてはなりません。
ベトナムでは、人材育成にも力を入れています。リッケイエデュケーションという子会社を作り、ハノイ工科大学と連携して教育プログラムを展開しています。高校卒業者を対象とした長期コースと、社会人を対象にした短期コースがあります。
長期コースの場合、卒業生に大学卒業資格を与えたり、インターンシップをサポートしたりしています。優秀な人は当社で雇うことがありますし、他のIT企業に紹介することもあります。現在2500人が在籍しており、卒業生も合わせると5000人がプログラムを受講しています。
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日本企業のパートナーとして選ばれることを目指すだけでなく、上場や本社移転まで検討し、日本市場へのコミットメントを高めているRikkeisoft。彼らがここまで日本にこだわる背景には、「リッケイ」という社名に込められた、トゥン会長ら創業メンバーの思いがある。次回は創業の経緯や社名に込められた意味、Rikkeisoftが目指す未来に迫る。

