物理世界と仮想世界が遍在化。「Accenture Technology Vision 2022」では、メタバース連続体を支える4つのテクノロジートレンドを紹介しています。簡単にご説明いただけますか?
山根1つ目が「Web Me」です。これはつまりWeb3のことで、個人が自身のデータをコントロールしデジタルアセットを所有できる世界が来るという話です。
2つ目が「プログラム可能な世界」。物理世界もプラグラマブルになり、より個人に最適化されていきます。どのような業務・サービス・商品も必ずデジタルツインありきで設計・構築していくという、『デジタルツイン・ドリブン』の発想が、あらゆるビジネスの変革の核(コア)として求められるようになるでしょう。
3つ目が「アンリアル」。AIによる生成技術や五感までを刺激するデジタルデバイスなどの発展によって、リアルとアンリアルの境界が曖昧になっていきます。ここでは、一貫性のあるストーリーや倫理観に基づく「ホンモノ感」の醸成が重要なポイントとなります。
そして4つ目が、これら3つのトレンドを支える技術基盤である「不可能を可能にするコンピューティング」です。量子コンピュータなどの次世代コンピュータに世界の経営幹部が大きな期待を寄せています。
こうしたテクノロジートレンドを踏まえ、企業はどのようなことを準備すれば良いのでしょうか?
山根これまでアクセンチュアは、時代の変化に合わせてエンタープライズ企業をサポートしてきました。今までは、「既存エンタープライズ企業vs既存エンタープライズ企業」や「既存エンタープライズ企業vsデジタルテクノロジー企業」という世界の中で、いかに生き残るかという話でした。しかし、これからは「既存エンタープライズ企業vs個人」になりかねないのです。
なぜなら、デジタルアセットが物理アセットと同じように価値を持つ時代になるからです。デジタルアセットを個人が作り、個人が評価し、個人に還元されるという世界が来ます。このとき、「エンタープライズ企業vs個人」となってはいけないと思うのです。
ではどうするのかというと、ビッグデータやデジタル基盤の提供、法律のサポートなどといった、エンタープライズ企業だからこそできることで、個人をエンパワーしていくという考え方にシフトしていく必要があります(図2)。そこをアクセンチュアはサポートしたいですし、価値があることだと考えています。
図2:個人をエンパワーすることが企業に求められる
市川Web3の側面から言うと、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)という新しい組織形態に注目しています。DAOによって発行されたガバナンストークンを持っている個人が、フラットに議論して組織の運営を決めていく。これはこれまで我々が見てきた資本主義では見られなかったアプローチだと思います。
2013年ごろ、アクセンチュアのCSR活動の一環として横浜市の地域課題を可視化して、地域市民が自分ごととして課題解決をしていくプラットフォームを作ったことがあります。我々が独自に作ったものですが、当時の市長の目に止まって、横浜市とアクセンチュアで協定を結ぶまでに至りました。今でも活動は続いていますが、貢献してくれた人にトークンを発行すれば、それこそDAO的ですよね。
今後、重要になってくるのは、こうしたインセンティブメカニズムをいかに作り込んで、コミュニティを設計していくかということだと考えています。これとメタバースをつなげていけば、可能性はまた大きく広がりますよね。
山根いやが応でも、すべてをコントロールしたいと考えるような企業は、支持されなくなってくるでしょう。典型的なのは、先日発表された、あるAIによるペアプログラミングサービスの事例です。ソースコードを学習したAIが最適なコードを提案してくれるサービスですが、オープンソースコミュニティからは、自身のコードの権利を侵害されたとして大きな反感を買っています。これからは、そのデジタルアセットは誰のものか、という議論はますます加速していくことになるでしょう。