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N e w F u t u r e

Vol.19 生成AIの登場から1年。
見えてきた真のメリット
Copilot for Microsoft 365が
生成AIの起爆剤になる

2022年11月にChatGPTが公開されてから約1年後に当たる2023年11月、マイクロソフトは「Copilot for Microsoft 365」の提供を開始した。生成AIをTeamsやOutlookで使えるようになり、人とAIの関係は新たな時代に入った。ビジネスとAIの関係を知り尽くした2人の専門家が語る、生成AIとの正しい向き合い方とは。

生成AIをビジネスに導入する企業が
急増している理由

 2023年の社会、ビジネス界はまさに、生成AIの話題一色でした。生成AIが私たちの仕事にもたらすインパクトと、企業が抱く期待や課題についてどう見ていますか。

岡嵜生成AIの登場はインターネット、スマートフォンに匹敵する大きなインパクトといわれますが、まさにその通りだと思います。2022年11月末に登場したChatGPTは、全世界でユーザーが1億人に達するまで、わずか2カ月しかかかっていません。現在世界中で使われている有名なSNSでも1億人まで4年以上かかっていることを考えると、この普及スピードは驚異的です。

図1 図1

図1:ChatGPTが世界で
1億人ユーザーに達するまでの時間

 マイクロソフトが提供する生成AIソリューションの利用者も、提供開始からわずか10カ月で1万8000社に達し、そのうち日本企業は560社を超えています。いずれも、記録的な勢いで利用が拡大している状況です。

 生成AIが爆発的にユーザーを獲得している最大の理由は「分かりやすさ」だと思います。通常の会話のようにチャットすることで、非常に満足度の高い答えが返ってくるのです。性能も高く、すでにMBAのテストや司法試験に受かるレベルと評価されています。分かりやすく高性能なツールであり、ビジネスでうまく利用すれば様々な業務を改善できるのではないかと期待が高まっています。

 また生成AIは、新しいテクノロジーに対して比較的保守的な金融機関、政府などの公共分野が非常に高い関心を示しており、実際に導入していることも特徴的です。これも、生成AIが提供する価値がいかに分かりやすいかの表れと言えるでしょう。

岡嵜 禎 氏

岡嵜 禎 日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務
クラウド & AI ソリューション事業本部長
NTTデータ、日本オラクルなどでシステム開発、ITアーキテクトを歴任。2015年アマゾン データ サービス ジャパン(現アマゾン ウェブ サービス ジャパン)入社。2019年同社執行役員 技術統括本部長に就任。2022年日本マイクロソフト入社。執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長に就任。2023年7月より現職。

保科生成AIは特定目的に特化したAIとは異なり、一般的なビジネスシーンでも高い効果が期待できる汎用性の高い技術だと捉えています。アクセンチュアの調査では、業界平均で約40%の仕事が、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)によって自動化されたり、強化されるという結果が出ています。

 ビジネスユーザーにとって親和性が高く、一斉に利用が始まった一方で、使う人によって活用の仕方に大きな開きがあることが見えてきました。自分の仕事を高度化するイメージを持てている人と、まだどう使うのかが分からない人との間で、パフォーマンスの差が明確になってきているのです。生成AIを使いこなすために、本来目指すべき仕事のゴールを意識した上で、現状の仕事のプロセスを分解し、組み立て直す能力が今まで以上に問われる時代になりました。

保科学世 氏

保科学世 アクセンチュア株式会社
執行役員 データ&AIグループ日本統括
AIセンター長
アクセンチュアにてAI、アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を集結した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。『生成AI時代の「超」仕事術大全』をはじめ、AI、データサイエンスに関する著書、監修書多数。理学博士。

岡嵜生成AIは個人だけでなく、組織に対するインパクトも大きいと思います。これまでDXの成果が発揮できなかった組織でも、生成AIはユーザーメリットをクリアに描きやすいツールであるため、多くの企業が「あったらいいな」ではなく「これが欲しい」とはっきり言えるツールだからです。

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「企業が蓄えたデータ」+
「生成AI」でビジネスの価値を高める

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 マイクロソフトは、いち早く自社のソフトウェアに生成AIを採り入れています。いよいよ、ビジネスユーザーの標準ツールとも言えるMicrosoft 365に生成AIが搭載されました。これはどのような機能を提供しているのでしょうか。

岡嵜マイクロソフトは生成AIについて、大きく2つの方向性で取り組んでいます。1つは、当社のクラウド基盤サービスであるMicrosoft Azure向けの「Azure OpenAI Service」で、企業のビジネスプロセスや業務アプリケーションを開発する際、生成AIを組み込むことができます。

 もう1つのアプローチが、アプリケーションやサービスへの生成AIの導入です。当社は、提供しているクラウドアプリケーションの全てに生成AIの機能を付加することを発表しました。

 その1つが「Copilot for Microsoft 365」です。Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teamsなど広くビジネスでご利用いただいているMicrosoft 365で、生成AIの機能をお使いいただけます。具体的には、ドキュメントやスライドを自動生成したり、Teamsで行った会議内容を要約させる、次のアクションアイテムを洗い出すなど、ビジネスユーザーにとって分かりやすい機能が追加されます。

図2

図2:Word原稿をCopilot in Wordで推敲している例

保科アクセンチュアはCopilot for Microsoft 365を先行ユーザーとして使わせていただいてきましたが、ものすごく便利だと感じています。例えば、時間が重なって参加できなかったTeamsでのオンライン会議があっても、後からCopilot for Microsoft 365で内容を聞くと要約して回答してくれるので素早く確認できます。また、海外のメンバーから深夜に英語のメールが来て、それを朝一番で確認するのが日課ですが、長文の場合、読んで内容を把握するのに相当時間を取られてしまいます。Copilot for Microsoft 365を使えば、受信したメールを翻訳して要約までしてくれるので内容の把握が早く、返信文のドラフトも翻訳して自動生成することが可能です。

 Copilot for Microsoft 365の強みは、私たちが普段使っているアプリケーションに生成AIが組み込まれたということ。新しいツールを別途使う必要がなく、いつも通りの仕事の中で自然に生成AIを使えるメリットは非常に大きいと思います。

 さらに、普段の業務で保存しているデータの価値を生成AIによって引き出せるという強みがあります。企業が蓄積したデータから、生成AIの力を使って新しいものを生み出すことで、ビジネスの価値は格段に高まります。

岡嵜Copilot for Microsoft 365のもう1つのメリットは、ExcelとOutlookなど、複数のアプリケーション間で連携ができることです。1つのツールの効果は小さくても、連携させることで生成AIの効果を2倍、3倍に高めることができます。

 この「Copilot=副操縦士」という名前が非常に重要で、あくまで中心は人であり、生成AIは人を助ける役割であることを表しています。当社では、AIと人は対立するものでなく、共存共栄する働き方を模索することにこだわりを持っています。

保科生成AIのメリットは、単に人の作業を自動化するだけではありません。人間の能力を拡張するための道具だという発想で向き合うべきだと考えています。

 アクセンチュアでは、自社開発の生成AI「ブレインバディさん」を仕事のパートナーとして利用を開始しました。例えば、社内会議に参加したブレインバディさんが、メンバーと意見を交わした内容を整理して論点を明確にしたり、顧客の課題解決策のアイディア出しをするなど、人間の能力を拡張し、ビジネス成長へつなげる活用方法を見いだしています。

動画:アクセンチュアが開発した生成AI
「ブレインバディ」活用例

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積極的な生成AIの活用が
新たな価値を創造

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 生成AIが話題となる一方で、AIが出した情報に誤りがあったり、学習データが漏洩するなどの問題が指摘されています。企業は何に注意すればいいでしょうか。

岡嵜AIを有効活用するための課題は、大きく3つあると思います。1つ目は、データの安全な取り扱いや、学習データの公平性、著作権などの問題です。ここは、私たち開発側も安全で安心して活用できる環境を提供することに努めています。2つ目は、AIを活用するためにはデータが必要だということ。自社にどれだけデータの蓄積があるか、それが学習に使える状態にあるかが重要です。

 そして3つ目は、AIに対する知識、スキルの問題です。お客様の中には、保科さんが指摘された通り、まだ生成AIでできることについてイメージが湧かない方も少なくありません。

 生成AIの利用範囲は、事務処理やチャットだけではないのです。例えば、IT部門で従来はプログラムコードを直接書いていたものが、生成AIにうまく質問を投げることで、ほぼ実用的なソースコードを書かせることができます。システム開発の仕事の仕方を大きく変えていくでしょう。

保科岡嵜さんがご指摘されたように、「責任あるAI」の運用は、生成AI時代の今、さらに重要度を増しています。生成AIは一般的な知識に加え、自社のデータを掛け合わせることで、得られる効果が飛躍的に高まります。まずは社内で使ってみて、その特徴を理解することが重要です。

 完璧な人間が存在しないように、生成AIも完璧ではありません。AIエンジンごとに得意な領域も異なります。また、生成AIが出した結果を、そのままうのみにしてはいけません。「最終的に責任を負うのは使う人」ということは、これまでのビジネスツールと同様です。

 「責任」の問題が出てくると、それならAIを使うのは中止しようという意見が必ず出てきます。しかし、そこで安易にブレーキをかけるべきではありません。懸念点は何かを把握し、運用ルールを明確に示しながら、使い続けることで進化させることが大切ですね。

岡嵜まさにその通りで、理解不足からブレーキがかかる事態は避けるべきです。生成AIが登場して1年たち、ガイドラインもだいぶ整備されてきました。正しく理解することで、積極的に活用していってほしいと思います。

 もう1点、生成AIの活用にブレーキをかける要因になりがちなのが、生成AIをコスト削減のツールとしてしか見ないことによる過小評価です。仮に生成AIで20%コストが下がるとしても、それで良かったで終わるのではなく、その先にある人とAIの共存による新しい可能性にも目を向けてほしいと思います。

 完璧な人間はいないという話がありましたが、なぜか人はAIに完璧を求めがちです(笑)。そうではなくて、あくまでAIは人の補佐をする存在だと認識いただければ、生成AIを使い始める敷居はおのずと下がるはずです。

 多くの方のご利用が見込まれるCopilot for Microsoft 365で、生成AI時代ならではの働き方をぜひ体験していただければと思います。

保科新しいことには常にリスクが伴います。生成AIを使うことによるリスクも、確かにあるでしょう。しかし、私はこのツールを使わずに静観しているリスクのほうが、はるかに大きいと思います。メリットと課題を正しく理解して、生成AIの恩恵を最大限活用していきたいですね。

保科氏、岡嵜氏
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【動画】ブレインバディについては
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