日本企業のAI導入停滞を打破するアクセンチュアは、リインベンションパートナーを標榜するに伴い、自らも「7×3」という考え方に基づく大きな組織変革を実施した。
「『7』というのはCXO、つまりエグゼクティブに対してどのような成果を届けるのかを起点に再編された枠組みで、7つのカテゴリーにはIndustry and Enterprise(CEO、CSO)やファイナンス(CFO)やサイバーセキュリティ(CISO)などが含まれます。業界や部署などの縦割りで分断されていた従来の考え方を一新、CXOと直接対話しながら課題解決するチームを組成し、RDEがエンド・ツー・エンドで動くのが特徴です。
一方の『3』というのは、上記のCXO起点の活動を支えるケイパビリティの集団です。『AI&データ』『インダストリー&プロセス』『テクノロジー』の3つの組織で構成され、当社ではこれを変革の原動力になるという意味付けでリインベンションエンジンと呼んでいます」(保科氏)
保科氏の説明によるとこの「7×3」は、CXO向き合いのパートナー組織とそのエンジンとなるケイパビリティ組織がマトリクス構造になっているという。つまり、各RDEは“2つの背番号”を持って業務に当たっているのだ。
アクセンチュア自身のリインベンションによって
生まれた「7×3」のマトリクス体制
アクセンチュアがこのような自己変革に取り組んだ背景には、本格的なAI時代を迎え、コンサルタントが果たすべき役割も変化していることが挙げられる。本稿でも触れたように、AI領域では、AnthropicやOpenAIといった有力プレーヤーが台頭し、テクノロジーの提供にとどまらず、顧客企業の支援にも関わるようになっている。アクセンチュアにとっては重要なエコシステムパートナーであり、実際のプロジェクトではFDEとしてチームに加わり、共に顧客の変革を推進する協働関係にある。
一方で市場全体を見渡すと、「AIがあればコンサルタントは不要ではないか」という議論も生まれつつある。こうした問いに対して、アクセンチュアの自己変革やRDEはどう答えを示すのか。
「現在起きているのは、コンサルタントの終焉ではなく、役割の再構成なのだと思っています。リサーチや提言までしかできないコンサルタントが静かな淘汰にさらされる一方、AI導入のハードルを突破し、パートナー企業と協力して成果を創出するコンサルタントの価値はむしろ高まっていますし、当社のRDEが目指すところもそこです」(保科氏)
こうした考えの下、アクセンチュアではRDEの育成やトレーニングにも注力している。
「AIが使えるというのはもはやアドバンテージではなく前提です。その上で顧客のあるべき姿を解像度高くイメージし、クライアント企業の経営陣と共有すること、不確実性が高い中でリスクを取りながら前に進めていくことがリインベンションであり、RDEに求められるスキルです。企業のあるべき姿を描く力、経営トップと信頼関係を築く力、リスクを取る判断力、現場で変革をやり切る力、これらはAIでは代替できないので、RDEの社内育成トレーニングやワークショップでもここを意識するよう指導しています」(保科氏)
時代の変化に合わせて組織も変わり続けなければいけないと説く一方で、保科氏は「逆説的ですが、変わり続ける組織であるほど、変えてはいけない核を持つことが重要です」と強調する。
「核とは、何のために組織が存在するのかという存在意義や理念の部分です。AIが業務の多くを担うようになっても、何を目指し、どのような価値を社会に提供するのかを定めるのは人間の役割。だからこそ、大胆に変化し続ける中でもこの部分はブレることなく発信していく必要があります」(保科氏)
アクセンチュアのパーパスの一つである「スチュワードシップ」も、この考え方と重なる。スチュワードシップとは、次世代を見据えて行動し、一人ひとりがオーナーシップを持って、より強い組織と人材を育てていくという考え方だ。変化が速く、先を見通しにくいAI時代だからこそ、目先の効率化にとどまらず、人々の生き方や社会の仕組みをどうより良く進化させるかという視点が欠かせない、と保科氏は語る。
「短期的に数字を良くしたいのなら、AI をコスト削減の道具として使えば一定の効果はすぐに出るでしょう。しかし、継続的にAIで価値を生み続けるには成長投資や組織変革が本質です。核は大切にしながらも、5年後、10年後、例えば私自身が組織を去った後でも柔軟に変わり続けられる組織を残したいというのが私の考えですし、クライアント企業に対してもそういう思いを持ちながらリインベンションに取り組んでいます」(保科氏)
本格的なAI時代を迎え、日本企業が進むべき道は、一過性の業務効率化ではなく、本質的な全社変革。自らも組織変革を起こし、RDEを通してAIでは代替できない役割を担うアクセンチュアの姿からは、従来型のコンサルタントから脱却し、リスクを取りながら変革の伴走者になる強い意志がうかがえる。